夫婦で買い物にでかけるイメージ

家事のやり方が違うのは、育った環境でしかたがないもの。でも、どこかですり合わせないと、揉めたり言い争いが絶えない家庭に。家事ジャーナリストの山田亮さんによれば、「ある質問をすればお互いの家事ハードルは一気に下がるはず」とか。その質問とは?

家事が苦手なパートナーの原因はどこにある?

── どうして夫婦間で家事のやり方に違いが生まれるのでしょうか?

 

山田さん:

お互い育った環境が違う、というのが主な理由ですね。特に食事への影響は目立つと思います。例えば、薄味の家庭で育った方は味つけが薄めになりやすいと思います。実家で大量の料理が並ぶ家庭だったら、結婚後も一食の量が多くなるでしょう。

 

あとは、兄弟姉妹がいる家庭で育ち、大皿に載ったおかずを早い者勝ちで食べるような食卓だったのか。一人ずつ別のお皿におかずが載せられ、各自で食べるような環境だったのか。こういった違いが必要な食器の数や、洗い物の量の違いにつながります。

 

── 例えば主に家事を行う側が、家事の頻度が少ない側に、家事参加してもらうコツを教えてください。

 

山田さん:

主な解決策は2つあると思います。ひとつは、その人の思考・行動タイプを考慮すること。これまで家事に関する講演や家事コンサルティングで関わってきた人たちを見ると、家事を行う際に「物事のプロセス全体を知っていた方が行動しやすいタイプ」と「一部分しか知らない方が行動しやすいタイプ」の2種類に大きく分かれていました。

 

例えば私は前者で、妻は後者です。私は家事のプロセスをすべて知っていた方が動きやすい。妻は「掃除機かけて」「洗濯機回して」というように、簡潔なお願いで動けます。こういったお互いの違いを理解しておくと、家事をやってもらう時に役立つでしょう。

 

そして普段は家事をやらない側にも、主に家事を担う側のタイプを理解してもらうと、相互理解が進んで夫婦仲が良好になると思います。

 

もし相手のタイプがわからないなら、どっちのタイプなのか質問してみるといいでしょう。相手に直接聞いてみることで、お互いの家事のハードルは一気に下がるはずです。

ホームセンターや大型スーパーに「家事参加のチャンス」が!?

── パートナーに家事参加してもらう、もうひとつのコツも教えていただけますか?

 

山田さん:

もうひとつのコツは、家事をする“きっかけ作り”です。例えば、日々の家事をあまりやらなくても、キャンプでは張りきってその場を仕切る「非日常のイベント」が得意な方もいます。本人は家事参加したくないわけではなく、きっかけがつかめないだけかもしれません。

 

そんなパートナーに日々の家事を共有するには、“形から入る”のがおすすめです。

 

例えば「草刈りはやりたくない」と話すパートナーと一緒にホームセンターに行く。ズラリと並ぶ最新の草刈り機。思わず購入して、帰ったら進んで草刈りをしていた、なんてこともあります。

 

「料理はムリそう…」と話すパートナーを引き連れて大型スーパーに行くと、食材の横に便利な調理グッズが並んでいますよね。「これ便利かもしれない!」と思わず手に取って購入したら最後、キッチンに立っているのはそのパートナーだったりして。

 

休日になったら、一緒に買い物などに行く機会を増やして、何か家事につながるきっかけに触れるのはおすすめです。

 

正直なところ、こうしたきっかけ作りは面倒です。でもこの苦労が報われる可能性は大いにあると思います。余裕のあるタイミングだけでいいので、チャレンジしてみて下さい。

洗濯物は、ハンガーにかけたまま派?きっちり折り畳む派?

── 夫婦の家事の認識ズレで、よく聞く例はどんなものがありますか?

 

山田さん:

本当にたくさんありますよ。例えば、洗濯物の畳み方。タオルをきっちり折る方もいれば、「ハンガーにかけたままでいいでしょ」という方もいます。

 

洗濯物の干し方でも違いがありますよね。ハンガーにかけてそのまま干す方から、ハンガーにかけた上でせんたくばさみをつけて干す方、干すものの並び方やバランスは本当に人それぞれです。

 

「あなた、ゴミ捨てして」と言われて、ただ目の前のゴミ箱のゴミを持っていくだけの方は要注意。実はパートナーは「各部屋のゴミ箱からゴミを集め、それを大きなゴミ袋に入れる。各部屋のゴミ箱には新しい袋をセットしてからゴミ捨てに行く」のが、常識だと思っているかもしれません。

 

── そうしたエピソードは本当にキリがないですよね。そのなかでも共通する特徴はありますか?

 

山田さん:

まずは、掃除や洗濯、料理などのようにこまごました工程が多く、人によって違うやり方が存在する“手が介在する家事”、それから“実施する頻度の高い家事”はズレが生じやすいと思います。それなら、最新家電に頼れば家事ズレはなくなるのでしょうか?答えはNOです。

 

例えば洗剤を自動投入するドラム式洗濯機を導入しても、「初期設定のままでいいじゃないか」「この設定だとうちが使う柔軟剤では量が少ないのよ」という夫婦ケンカが勃発。家事ズレは永遠になくならないので、そのつど確認するのが大切です。

 

PROFILE 山田亮さん

家事ジャーナリスト・山田亮さん
家事ジャーナリスト、社会福祉士、佛教大学非常勤講師。1967年香川県生まれ。楽器メーカー営業や百貨店業務などを経験しながら社会福祉を勉強し、通信制大学、大学院を修了。当時大学助手だった妻と結婚し主夫に。長年の家事経験から家事ジャーナリストとして情報提供や家事指導を行う。

監修/山田亮 取材・構成/金指 歩