マイホームは人生で一番高い買い物。慎重に決めたいと思いつつ、モデルルームに行ったりすると欲しい気持ちが募って検討が不十分になる人も。マイホーム購入に必要な視点をファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんに聞きました。

 

知らないとヤバいかも!家を買うときに「予算以外」で考える3つのこと

購入は「自宅以外の未来」も考えて決めること

最近、マイホームの購入を考えるご夫婦からの相談が増えています。ただ、いまは建築資材や人件費の高騰で、新築のマンションや戸建ての価格は上昇傾向。買いやすいタイミングとは言えません。そのため、判断に迷うご夫婦が多く見られます。

 

先日、相談に来られたお客様はともに公務員のご夫婦でした。地方都市に戸建ての建築を計画し、土地と建物をあわせた価格は約5000万円。地方都市といっても人口が多い地域ではなく、土地も広いわけではなかったので、建築資材や人件費の高騰が住宅価格に転嫁されているのを強く実感しました。

 

高い買い物に感じたものの、ご夫婦は購入に前向きでした。共働きということで自己資金はある程度、蓄えていました。

 

しかし、自己資金を投じて長期の住宅ローンを組むと、生活にゆとりがなくなり、教育費や老後資金を削られるのは明らか。何より、夫婦が定年まで働き続けることが前提になります。この場合、戸建ての入手は公務員であり続けないと成り立たない人生を選択することを指しています。

 

マイホームの購入は単独で検討するものでありません。日々の生活が成り立つかはもちろん、ライフプランにおいて重要度の高い教育費や老後資金を確保できるかなど、セットで考えるのが絶対です。

 

教育費や老後資金を確保できそうなら、購入を迷わず決断できるでしょう。問題は確保するのが難しそうなケースです。教育費や老後資金が削られるのをよしとするか否か。良しとして納得すれば購入、「教育費や老後資金のほうが重要」と考えるなら、見送りの判断をすることになります。

 

そういった見極めなしにマイホーム購入に突き進むと、住んでから苦しい生活になり、教育費や老後資金に悩むことになりかねません。どうにかしたくても住宅ローンに人生をロックされているため、働き続けることも強いられるのです。

お金に困ったら「家を売ればいい」がダメな訳

さらにいえば、買った家を将来的に売るとなった場合、決断してもすぐに買い手は見つかりません。不動産は売りたいときにいつでも売れる資産ではないことを肝に銘じておく必要があります。

 

実際、マイホーム購入後に売却せざるを得ない状況になったご夫婦がいました。ご主人がストレスのかかる部署に配属となり、心の病にかかって休職へ。おそらくローンの返済に行き詰まったのでしょう。売却を決断されましたが、地方都市で立地が良いわけでもないので売れる可能性は低いと思います。

 

教育費や老後資金の確保に不安は残りながらも、マイホーム購入をあきらめられない人もいるのでは?その場合には、選択肢を広く持つことです。

 

相談者でもそうですが、マイホームとなると新築にこだわりがちです。前述したとおり新築はいま高値を維持して万が一の場合のリスクが高まります。ですから、新築ではなく中古にしたらどうか、都市部ではなく地方にしたらどうか、と考えてみてください。

 

中古や地方であれば物件価格は安くなりますし、リモートワークが一般化して地方でもアクセスの良い地域であれば購入圏内の人も増えています。マイホーム購入は近視眼的になりがちなので、広い視野で見ることが大切ですね。

 

いずれせよ、教育費や老後資金とセットでライフプランを練るのを基本に、後悔のないマイホーム選択をしましょう。

 

 

PROFILE 塚越菜々子さん

ファイナンシャルプランナー。10年超の税理士事務所勤務を経て独立。主に共働き世帯の女性を中心に年間200件以上の家計相談を行う。YouTubeでも女性に役立つマネー情報を幅広く発信している。


取材・文/百瀬康司