わが家は三世代完全同居、80代の義父母から10代の息子と娘まで6人が一緒に暮らしています。ひとつ屋根の下、毎日一緒にいれば感性も語彙も、お互いに影響を受けあうのは当然で…?

 

反抗期の娘、義父母のダジャレが大好き

わが家の娘は現在、中学2年生。思春期真っただ中、絶賛反抗期中で、親や祖父母にはいわゆる「塩対応」が基本。何か言っても「は?」「別にそういうわけじゃないし」と、冷ややかな反応が返ってくることがほとんどです。世代の離れた義父母は、とくに娘への対応に手を焼いています。

 

しかしそんな娘、意外にも笑いのツボが浅く、家族のちょっとしたダジャレなどで顔を真っ赤にして笑い転げていることがよくあります。それだけならいいのですが、その笑いのセンスが、明らかに同世代とはちょっと違うというか…オブラートに包まずに言えば「古い」のです。

 

例えば、義父母のよく言うちょっとしたダジャレ、

 

「カッターで手を切っちゃった、いたカッター、カッターだけに」(義父)

「美味かった、ベコ負けた(馬勝った、牛負けた)」(義母)

 

というようなひと言。私や息子は「あはは…」と乾いた笑いを返すのが精一杯なのですが、娘は本気で面白がって笑ってくれるのです。そうして、孫娘にウケたことにご満悦な義父母は、昭和センスのダジャレを繰り返し使います。

 

どんどんうんざりしていく私たちを尻目に、毎回楽しそうに笑う娘…。なんて祖父母孝行な孫でしょうか(普段はものすごい反抗期なのに)。

義父母の影響?長寿お笑い番組も大好き

さらに、普段からあまりテレビ番組を観ない娘がたまに観るお笑いといえば「笑点」。義父母が楽しみにしていて、ほぼ毎週観ているので居間にいる娘も自然と観るようになっているのです。しかも、かなり楽しんでいる様子で…。

 

いや、笑点は私も大好きですが、しかし今時の女子中学生が、木久翁さんのラーメンネタで大笑いできるのも果たしてどうなの?と思ってしまうのです。

 

こんな調子で、同年代のお友達との会話は弾むんだろうか…?もっと「M-1」とか、最近のお笑いを家族で観るようにしたほうがいいんだろうか…?そんな心配をしつつ、楽しそうに笑いあう祖父母と孫娘の姿を見ると、まあいいか…とつい、なごんでしまう毎日です。

「この大河ドラマ、エモいわ」

影響を受けるのは決して孫側ばかりではありません。一緒に暮らしているからには、もちろん祖父母の側も若い世代の影響をもろに受けています。

 

ある日、大河ドラマを観ていた義母がポツリとひと言、「これがエモい…っていうのね」と漏らすので、思わず飲んでいた麦茶を噴き出しそうになりました。

 

「たしかに…伏線回収からのこの展開はエモいですね…若者言葉、使いこなしてますね」

 

そう言うと嬉しそうに目をほそめる義母。ほかにも、

 

「息子くんがおこづかいで買ったエナドリで冷蔵庫がいっぱいなんだけど」(エナドリ?)

「娘ちゃんが暇さえあればずっとスマホゲーをしてるわよ」(スマホゲー?)

 

などなど…。

 

やはり思春期の孫と一緒に暮らしていると、80代の高齢者側も、自然と若者らしい語彙を学んでいるようなのです。

 

先日好きなバンドのライブに参加し帰宅した私に、義母がかけたひと言は、「楽しかった?推しに会ってきた?」でした。

 

推し!!

 

80代の義母から発せられるにはあまりに新鮮な語感です。

 

「推しと握手してきたの?サインもらえた?」

「そういう会ではなかったんですが、推しはめちゃくちゃ尊かったですね…」

 

そんな会話を交わす嫁姑のことを、子どもたちから「なんか無理して若者言葉使ってるな」と言いたげな冷ややかな目で見られていた気がするのは気のせいでしょうか。

 

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ