「ご注文ありがとうにゃん」と可愛らしい声で配膳する猫型ロボットが、ファミレス店内をお客や店員にぶつかることなく縦横無尽に稼働。猫形ロボ、なんでこんなに賢いの?

 

激レア!居眠り中の猫型ロボットの愛らしい顔

猫型ロボットを扱う専任インストラクターの存在

── 近年、ロボットは多くのサービスシーンで活躍しています。「ガスト」「しゃぶ葉」「バーミヤン」など、すかいらーくグループのファミレスチェーンで見られるのは、猫をモチーフにした配膳ロボット。その導入にはどんな目的があったのでしょうか。ロボット導入責任者の花元浩昭さんに伺います。

 

花元さん:「顧客満足度の向上」と「働きやすい職場環境」が導入の目的でした。対お客様でいえば、お待たせしないなどサービスの品質向上です。対従業員でいえば、作業負担を軽減でき業務の難易度も減らして、新人や外国人労働者などの人材採用や活躍を推進できます。

 

── 2021年8月から1年半余りで全国約2100店舗、3000台の導入完了はかなりハイスピード。これには「ロボット専任インストラクター」の存在が大きかったようですね。

 

花元さん:配膳ロボットを店舗に設置すれば、その日から思いどおりに稼働できるわけではありません。ロボットを業態ごとで有効に稼働させるための環境整備や、現場の従業員への指導も必要です。ロボット専任インストラクターはその役割を担います。私の仕事はロボット導入責任者としてインストラクターを養成することです。

 

── 以前からロボットに関わる業務をしていたのですか?

 

花元さん:もともとはガストのエリアマネジャーとして、現場でオペレーション業務に携わっていました。その後、本部勤務となり、オペレーション開発部署に所属した際にロボットプロジェクトが立ち上がり、導入責任者を任されました。IT部門ではなくオペレーション専門の立場から、未知のロボットの世界に足を踏み入れたわけです。第一関門はロボットの選定と、本格的に店舗展開する前の導入実験でした。

通路幅、段差…ロボット導入における課題の解決

── その内幕、気になります。

 

花元さん:まずはロボットメーカー様の知見と我々の望むことのすり合わせを行いました。何ができて、何ができないかをクリアにするためです。最初の段階では3種類のロボットを選定し、2021年8月に実験で店舗に導入しました。

 

実験店は新宿、渋谷、秋葉原など東京都内のガスト4店舗としゃぶ葉3店舗。都内の店舗のほうがお客様の層が比較的若く、“ロボットを受け入れてくださるのではないか”という思いがあったからです。加えて、店内の広さなど、ロボットの稼働のしやすさも加味しました。

 

── 実験の感触は?

 

花元さん:お客様や従業員の反応は上々ですぐに有効性を認識しました。ただ、課題も見えてきました。

 

── 課題というのは?

 

花元さん:配膳ロボットはタイヤで駆動し、厨房からお客様のもとに料理を運びます。その際、わずかな段差でも衝撃を受け、汁物の料理がこぼれることがありました。

 

また、通路が狭いとホールスタッフとロボットがすれ違うのに苦労します。実験を踏まえて中国メーカーのネコ型配膳ロボット「BellaBot」の採用を決めたのですが、通路幅は最低70センチなければロボットを通行させられないことがわかりました。こういった問題の解決を現場任せにすることはできません。

 

── そこでロボット専任インストラクターが必要になってくるわけですね。

 

花元さん:インストラクターはロボットと現場をつなぐのが任務です。業態に応じて、ガストで展開するならガストで効果的な使い方、しゃぶ葉で展開するならしゃぶ葉で効果的な使い方を提案できなければなりません。ですから候補者を集める際には、各業態の店長経験者以上を条件としました。

インストラクターがエンジニアと現場を橋渡し

── 実際、どのように育成していったのでしょうか?

 

花元さん:ロボットの性能をはじめ、エンジニアに依頼する設定の仕方など、各種マニュアルを覚えてもらうのは大前提です。そのうえで各業態や店舗に適したロボットの活用法を学んでもらいました。

 

具体的には、店内のレイアウトにあわせたロボットの動線や、走行の妨げになった場合のテーブルなどの配置替えといった環境整備です。前述した段差については、特殊な処置を考案してカバーできるようにしました。

 

これらのノウハウを習得したのち、インストラクターがロボットを導入する店舗に出向いて、従業員への使い方の説明や操作トレーニングなどを行う流れになります。

 

ロボット導入責任者の花元浩昭さん(すかいらーくレストランツ営業政策グループ)

── 総勢何名くらい?

 

花元さん:ロボットの本格的な店舗展開のフェーズに入った2021年11月から3名、次に4名と増員していき、月約300台を設置した最盛期に最大17名となりました。

 

── そして昨年12月27日に全国約2100店舗、3000台の導入を完了。インストラクターなしでは、スピードかつ大量導入とロボットの活躍は叶わなかったわけですね。

 

花元さん:私たちが目指すのは“人とロボットの協働”です。今後はインストラクターとともに、協働体制をさらにブラッシュアップさせていきたいと考えています。

 

── 猫ロボの在籍の有無は店舗ごとのホームページで確認できるとのこと。人とロボットの協働を一度見てみてはいかがでしょうか。

 

取材・文/百瀬康司 画像提供/株式会社 すかいらーくホールディングス