家庭というチームでリスクヘッジをしていく

──「自分がやらずに放置しておけば、いずれ相手がやっておいてくれるだろう」というようなことですね?

 

中川さん:

その通りです。職場に置き換えてみると普段は家事や育児をしない人も想像しやすいんじゃないでしょうか。職場のチームのメンバーがいつも自分の善意に乗っかってきて具体的な行動を起こしてくれないとすると「なんであの人はやってくれないの…」「自分ばかりやらされている気がする…」と、あまりいい気分はしないはずです。

 

これは家事や育児についても同じこと。チームとしてリスクヘッジをしていくことを考えることが大切です。

 

──職場と家庭というフィールドの違いはあっても、レジリエンスを高めていく考え方が同じなのですね。強固なレジリエンス体制を築く上で絶対に外せないことはありますか?

 

中川さん:

話し合いを土台にして、ルールを決めることです。仕事も家事・育児も、首を絞め合うようなルールではなく、助け合うためのルールを作り、実行していくことですね。このルール化の仕組みが習慣化されれば、助け合いや関わり合いの風土ができあがる。すると危機や困難な状況に直面しても対応できるため、仕事も家庭もうまく回るようになります。

 

これまでの経済では「効率」が重要視されていました。効率をあげることで競争力が上がるとされているので、レジリエンスを重視すると効率が下がり競争力も下がると捉えられがちです。しかし、実際には組織事故の防止や対策に積極的であるほど、組織としての目標達成や経済的パワーマンスも高まっているとする結果がたびたび報告されてきました。レジリエンスと競争力は長期的には両立可能なのです。

 

… 無駄を省いた効率的な働き方が新しい働き方として注目されてきましたが、コロナ禍をきっかけに働き方はさらにその先へと変化を続けています。その一つのキーワードである「レジリエンス」は、中長期的な働き方改革を考えていく上で、外せない考え方になりそうです。

 

取材・文/百瀬康司