妊娠中はできれば安静に過ごしたい

 

産前・産後の母体の事情に詳しい「対馬ルリ子女性ライフクリニック」院長・対馬ルリ子先生に、あらためて妊娠中の母体が抱えるトラブルについて教えてもらいました。

 

「母体の年齢に関わらず、妊娠中は予測できないさまざまなトラブルが起こります。可能性が高いものから並べていくと、貧血、便秘、つわり、湿疹やかゆみなどの皮膚症状、カンジダ膣炎など。

 

また、妊娠中は血糖値が上がりやすくなるため、それまでまったく血糖値が高くなかった人でも妊娠糖尿病(GDM)になる可能性があります。

 

切迫流産、切迫早産のリスクもあります。切迫流産とは、妊娠22週未満に出血や下腹部の張り、痛みがあり、流産のリスクがある状態のこと。切迫早産とは、妊娠22週以降366日未満の赤ちゃんが予定日より早く生まれそうになること。

 

どちらも安静に過ごすのが治療の基本になりますので、働いている人は周囲との調整が必要不可欠になるでしょう」(対馬ルリ子先生)

 

出産までの10カ月にどんな症状が現れるかは、人それぞれでまったく違います。また、1人目と2人目ではつわりの現れ方や妊娠中の症状が違うケースも珍しくありません。

 

1人目の妊娠中はつわりがまったくないまま順調に出産できたのに、2人目の妊娠ではつわりがひどく、切迫早産で長期入院を余儀なくされる…というケースも多々あります。

 

同じ母体でも、胎児ごとにつわりの現れ方は毎回異なりますから。また、そのときどきで母親が置かれている社会的環境や精神的なストレスが影響するケースも見られます」(対馬ルリ子先生)

分娩トラブルは産後の体にも影響

さらに無事に出産までたどりついても、分娩時のトラブルが原因で母体の回復が遅くなることもあります。

 

「貧血、痔、尿もれ、腰痛などは多くの妊婦さんが体験されているのではないでしょうか。会陰裂傷の他にも、膣壁が裂ける膣壁裂傷、頸管裂傷によって出血が多くなるケースもあります。子宮筋腫がある、赤ちゃんが大きい、分娩に時間がかかるなどの人は、弛緩出血が起こることもあります。

 

また、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病などの合併症にかかった妊婦さんは、人によっては産後も慎重に回復させていかないと、将来再発する恐れがあり、ずっとその病気に対する注意が必要です」(対馬ルリ子先生)

 

産後すぐに仕事に復帰する人もいますが、産褥という母体の回復にかかる時間は68週間です。なかには産後も継続して病気と向き合うことになる人もいます。

 

さらに、産後はホルモンが急激に低下しますし、授乳によってホルモンは低く抑えられるため、産後うつなどの気分障害が起こり、それが育児放棄や虐待、自殺などにつながる人もいるので要注意です。