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子どもの「性」を守るため、親が知っておくべきこと【幼児・小学生編】

仕事

2018.05.22

2019.11.30

学校で性教育をすれば、「寝た子をおこすな」という声が上がって問題になってしまうケースもある一方、ネットには性の情報が氾濫し、性被害も低年齢化しています。

幼児や小学生の子どもたちを性的被害から守るために、大人は何をしたらいいのでしょうか?

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誰にも相談できない、子どもたちの「性被害」

全国で、児童相談所が対応した児童虐待件数は122578件になり、過去最多を更新(平成28年/厚生省調べ)。その内訳として「心理的虐待」が51.5%、「身体的虐待」が26%、「ネグレクト」が21%、「性的虐待」は1.3%。

数字だけを見ると「性的虐待」は最も少ないと思われがちですが、この数字は氷山の一角だからこそ。それだけ表面化しにくいものであることを物語っている。

また、警視庁の調査によると、性犯罪やDVなどの被害にはじめてあった際、4割の人が誰にも相談せず、8割の人が自治体の相談窓口を知らなかったという実態が明らかになった。

誰にも相談していない被害のうち、最も多いのは児童虐待の74.3%で「低年齢だったため相談に思い至らなかった」、性的被害は52.1%で「他人に知られたくなかった」などの理由が多かった。

数十年が経ってから訴えるケースも

いま、幼少期に性被害を受けていた女性が、大人になってから加害者を訴えようとしたときに「時効の壁」にぶち当たり、被害を認められないケースが問題になっている。

ただでさえ人には言いづらい性被害。子どもであるならなおさらだ。しかも子どもの場合、性的虐待と気づかないことも多いうえ、「自分が悪い子だったから被害を受けた」と思って黙り込んでしまいがち。成長してから被害に気づいても、「知られたくない」「忘れたい」と思い、うつ病やPTSDなど心の病を抱えることになる人も多い。

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性的虐待が家庭内であった場合、子どもはさらに訴えにくい。周りが“身内の恥”として、隠してしまうケースも少なくない。子どもには、一生かかっても消えない心の傷が残るというのに…。

誰にも言えず、誰にも相談できないまま大人になり、心の折り合いがつくのが3040代になってからというのはざらなのだ。

しかし、それではすでに時遅し。証拠が少なく、立証も難しいこれらのケースは、訴訟をおこそうとしても、民事、刑事ともに時効を迎えている場合が多い。

10歳で受けた強制わいせつ罪が、17歳で訴えた時に時効のために棄却されるなんて、時効期間が短すぎる! そんな現実を鑑み、時効を伸ばし、被害者が訴えをおこしやすくしようという動きが、いま実現となりつつある。

子どもたちを守るために、大人にできること

性的虐待のほかにも、望まない妊娠、児童ポルノ、JKビジネスなど、さまざまな性被害が低年齢化しているうえ、最近では、女子だけではなく男子も被害にあうという現実もある。

特に、児童ポルノの検挙件数は年々増加傾向にあり、平成29年度は過去最多を更新(警視庁調べ)。東京都内の小中高生のスマホ利用が7割を越える現状で、低年齢児童を被害者とする悪質な事件が後を絶たない。

子どもたちの性被害は、身のまわりに意外とたくさん存在している。親が子どもを守るために、いったい何ができるだろうか?

まずは、幼いうちから安心して性のことを子どもと話せるような環境をととのえること。性教育は、隠しておくもの、恥ずかしいものではなく、自分を守るための大切なもの。小さいうちから自分の体について知り、危険を察知できるようにしておきたい。

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すぐにでも取り組める、具体的な方法を3つあげてみる。

①自分の「体」について、「男女の違い」について教える
子どもと一緒にお風呂に入ったときなどに、手や足やひざなどと同じように、胸や性器について教えること。また、同時に男女の違いについてもふれる。

②「プライベートゾーン」について教える
「プライベートゾーン」とは、水着を着用したときに隠れる場所のこと。この部分の大切さをきちんと教えること。
「他人に見せたりさわらせてはいけない、自分の場所である」ことをしっかりと話し、プライベートゾーンを見たりさわりたがったりする人がいたら「逃げる」「まわりの大人に相談する」ことを伝えておくこと。
ただし、プライベートゾーンが痛かったり異変があるときは、親やお医者さんが見ることもあると伝えておく。

③絵本を読み聞かせて学ぶ
子どもに「誕生」や「性差」を伝える絵本を読み聞かせる。例えば、「ぼくどこからきたの?」(河出書房新社)、「おんなのこって なあに? おとこのこって なあに?」(福音館書店)などをおすすめしたい。

「自分を大切にする」ことを学ぶプログラムとは

この他にも、「自分を大切にすること」を学ぶプログラムを受けさせることも有効だと思う。
2つの例をご紹介したい。

ひとつは「CAP(Child Assault Prevention)」

アメリカで開発されたこのプログラムは、子どもが、いじめ、虐待、性暴力など、さまざまな暴力から自分の心と体を守るためのもの。子ども自らが基本的人権について学び、自分自身が生まれながらにして大切な存在であることを知るためのプログラムだ。

危険な状況を「いや」という感覚で察知したり、自分を守るための行動の選択肢があることも学ぶ。38歳の子どもたち向けには、人形劇やロールプレイを通して、わかりやすく伝える工夫も。地域のCAPグループが、保育園や幼稚園、小学校などに出向いて教えたり、行政主催の講演会やワークショップがある。
●「NPO法人CAPセンター・JAPAN」ホームページhttp://cap-j.net/

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もうひとつは「誕生学」

こちらは「誕生」を通して、子どもに自分自身の産まれてくる力を伝え、再確認することで、自尊感情を育むことを目的にしたプログラム。

幼稚園や小学校低学年までは「みんなおへそあるよね?」といった導入からはじまり、「自分がお腹の中でしてきたすごい力」について伝える。小学校高学年からは、変わってゆく体と心について、また自分をきちんと守るための知識も。誕生学アドバイザーが、全国の小中学校などへ出向く出前授業を中心に活動している。


●「公益社団法人 誕生学協会」ホームページhttp://tanjo.org/

ちなみに筆者は誕生学アドバイザーに依頼し、地域の子どもたちを集めて「誕生学セミナー」を開催したことがある。出産シーンを映像で見たり、人形を使って誕生の仕組みを教えてもらっていたが、小学生男子たちはまじめに話を聞いており、未就学の女児たちもこわがることもなく、目を輝かせて聞いていた。

そしてもしも、子どもが被害に遭ってしまったら…

親としては想像したくもないことだが、万が一子どもが被害にあってしまったときのことを考えたい。

まず大人がすべきことは、あくまで冷静に受け止め、これ以上子どもを傷つけないように配慮すること。大人が取り乱したり、「うそでしょ!」「なんで言わなかったの?」などと責めたり、いやなことを何度も問いただすことがないようにすること。

最近では、性被害の聞き取りをする際、子どもの負担をできる限り少なくしつつ、正確な情報をつかむため、「司法面接」という手法が取り入れられている。専門的な訓練を受けた面接士が、いつ、どこで何をしたか、事実を特定できるように、60分程度で1回だけ話を聞く。

性被害を受けた子どもの言うことは、変化をするかもしれない。何を聞いても答えないかもしれない。語らない、語れない子どもがいて、語っていない部分に深刻な被害がある可能性があることも、大人は知っておいたほうがいい。

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相談窓口についても知っておきたい。

児童相談所や子ども家庭支援センターに通告や相談ができるし、性被害に特化した「性暴力被害ワンストップ支援センター」もある。児童相談所全国共通ダイヤル「189(イチハヤク)」に、電話することもひとつの方法だ。

ちなみに児童福祉法により、虐待を受けたと思われる児童を発見した場合、すべての国民に通告する義務が定められている。

通告は、結果的に間違っていてもかまわない。守秘義務は守られるうえ、専門家が対応し、必要があれば子どもの保護だけではなく、親の支援にもつながるからだ。他にも保育園や幼稚園、小学校の先生、スクールカウンセラー、民生児童委員などにも相談してもよい。子どものSOSを見逃さず、きちんと受け止め、適切なところにつなげることが大切だ。

いずれにしても、子どもがまわりの大人にSOSを出せるよう、ふだんから信頼関係を築いておくこと。
自分の子どもだけではなく、地域の子どもたちも含めて見守ること。
そして、何かあったときにどうすればいいのかを知っておくことが、親である私たちにできることである。

工藤玲子
編集者、ライター。お茶の水女子大学文教育学部卒業後、出版社勤務。婦人雑誌の編集に携わったのち、フリーランスとして独立。料理本を数多く手がけ、他にもがん医療、健康、子育て、教育などをテーマにする本の編集や記事を執筆。出産後、「子どもを守る目コミュ@文京区」を立ち上げ、子育てする母親の立場から発信する虐待防止活動を行う。現在、子ども食堂や親子カフェの運営、児童養護施設への出張料理教室なども行っている。2児の母。編著に『柳原和子もうひとつの「遺言」』(中央公論新社)、『がんになるってどんなこと?』(ストーリー担当:セブン&アイ出版)ほか。

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