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「キラキラママになれない…」ママのひきこもり 誰も気づかない現実

仕事

2021.06.04

ひきこもりなどの当事者・経験者たちで作る一般社団法人「ひきこもりUX会議」。自分たちの「固有の体験(UX)」を共有し、これまで全国で約120回、4000人を超えるひきこもりや生きづらさを抱える女性向けの「ひきこもりUX女子会」を開いてきました。

 

なかでも近年、注目を集めたのは東京都清瀬市で実施した「ひきこもりUXママ会」。主婦であるために、生きづらさを抱えてひきこもっていても、誰にも気づかれないといいます。

 

「ひきこもりUX会議」共同代表理事の林恭子さんに聞きました。

「自分はちゃんとできない」と自分を責めてしまう

── 女子会という名称ですが、具体的には何をされているのですか?

林さん: 

ひきこもりや生きづらさを感じている女性自認の方々を対象に、2部制で交流する場を提供しています。

 

前半の第1部では、ひきこもり経験のあるUX会議メンバーの自分のひきこもっていたころの苦しかった体験などを聴いてもらい、後半の第2部では当事者・経験者だけで「家族」「仕事」などテーマ別にグループに分かれて、それぞれの抱えている話をしながら交流します。

 

 

── これまでの活動のなかで、ママを対象にした女子会はまだ6回ということですが、ひきこもるママたちの存在に気づかれたのはいつでしょうか。

 

林さん:

もともと「ひきこもりUX女子会」は年齢を問わず様々な生きづらさを感じている人を対象に行っていました。ただ、訪れる方の2、3割が主婦の方だったんです。

 

ニーズがあると知り、2019年から、「ひきこもりUXママ会」として、子育て中のひきこもり当事者、経験者方を対象にした女子会を東京都清瀬市で開いています。これまで6回実施し、今年も2回実施予定でいます。

 

 

── ひきこもるママはどんなことに生きづらさを感じているのでしょうか。

 

林さん:

そうですね。参加者の方々は一見すると“普通”のママと何ら変わりありません。ただ、普段話し相手は夫しかいないとか、周囲のママ友の輪に入れないという方が多い。子育て支援の窓口にも行きづらいようです。

 

ひきこもっているママから見ると、“普通”にやれている人はとてもちゃんとしているように見えて、「キラキラママ」という言葉も出てきます。

 

そして、そんな「キラキラママ」と比較し、「自分はちゃんとできていない」と、自分を責める傾向にあります。そんな自責の念もママたちの輪に入りづらい要因ではないでしょうか。

ママの肩書きが、生きづらさを隠してしまう

── それは辛い状況ですね。

 

林さん:

問題は、主婦、ママという肩書きがあると、たとえひきこもっていても、本人の抱えている生きづらさに周囲が気付きにくいということです。

 

夫の転勤で地方に移住したものの、その土地に馴染めず、外出すらままならない方もいらっしゃいます。人とうまくしゃべれない。生きづらいのにわかってもらえないため、適切な支援も届いていません。

 

最近はネットで買い物ができるようになったのでなんとかやれることもあり、生きづらいと感じる主婦の存在がより気づかれにくくなっているのではないでしょうか。

 

──── 林さんご自身もひきこもり当事者だったんですよね。

 

林さん:

はい。私自身、16歳で不登校になってから、社会の中でもう一度生きていこうと思えるようになるまで20年かかっています。なんとか動けるようになったのは40代に入ってからですね。

親との同居から抜け出せない…それぞれの事情

── UX女子会参加者はママ以外では、どのような立場の方がいらっしゃるのでしょうか。

 

林さん:

独身の30〜40代女性が多いですが、50〜60代の方も増えています。女性自認であれば参加できるので時々トランスジェンダーの方もいらっしゃいます。

 

親元で同居していて、仕事をしておらず、親が亡くなったらどうしたらいいのかという不安を抱えている方が多いです。

 

履歴書の空白も長く、思いきって就職活動をしようとしてもなかなか就労に繋がらない。女性は体調に不安がある方も多く、摂食障害や更年期障害、パニック障害などの心身の不調がある場合は、フルタイムで働くこと自体が難しい場合もあります。

 

また、いわゆる毒母のしがらみから抜け出せずに悩んでいる方もいます。

親の介護が始まり、ほかの兄弟から、「自宅にいるのだから介護は任せる」と押し付けられてしまい、困っているケースも聞きます。

コロナ禍で精神状態がさらに悪化した

── 現在はコロナ禍でなかなか「女子会」が開催しにくい状況ですよね。影響はありますか?

 

林さん:

影響はあります。2020年12月22日〜21年1月3日にかけて、ひきこもりUX会議のサイトからオンラインでひきこもりや生きづらさを感じる方にどのような影響があったのかたずねる緊急アンケートを実施しました。

 

回答数397件のうち、コロナ禍で精神状態が悪くなったと答えた方が実に59.1%もいました。理由としては、仕事を失ったり、家族といる時間が増えてストレスを感じたりという声がありました。

また、「女子会」などの当事者会が開催されなくなり、行く場所がなくなって辛いという声もあります。

 

家族関係が良くない人も多いので、外出自粛で在宅時間が増えている状況がしんどいという方もいるのだと思います。

 

また、親の年金で暮らしていて、親がコロナ禍で亡くなったらどうしようという声もありました。

9割が生きづらさを感じている時代

── 「ひきこもり」という言葉の背景には、これだけ多くの課題があるんですね。それぞれの方には、どういった支援が必要なのでしょうか。

 

林さん:

まずは「ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019」をもとに、改めて現状をご説明しますね。

 

この調査は、オンライン上と実際に開催した女子会等で質問用紙を配付し2019年、実施しました。全国の生きづらさを感じたり、ひきこもったりしている当事者や経験者(性別不問)を対象としています。1686名の回答がありました。その結果、65.4%の人が「現在ひきこもりである」と回答しています。

 

その理由として最も多かったのは「通学・就労していないから」(39.2%)。次に「部屋/家に閉じこもりがちだから」(29.4%)が続きました。

 

ひきこもり期間は10〜15年未満が最も多い16.2%で、平均8.8年です。

 

「対関係に漠然とした恐怖感を抱えている」86.5%いた⼀⽅で、64.6%のが「今よりと交流したい」と回答しており、「似た体験・経験をした」との交流は71.7%が望んでいました。

 

現在、生きづらさを感じている人は87.4%に上っています。

 

きづらさの理由として最も数値がかったのは⾃⼰否定感(74.2%)で、多くの当事者は「きていていいと思えない」「きている価値がない」などと分を責める傾向があります。

生きづらさの改善に必要なのは「安心できる居場所」

林さん:

きづらさの改善には「安心できる居場所」と答えた方が50.3%。これが最も多い回答でした。

 

一方で、「就職したとき」に生きづらさが改善されたと答えた人はわずか18.3%。これは2番目に低い数字です。

 

物理的な状況が変化したことよりも、内の変化によって改善されたと感じていることがわかる結果でした。

 

── 居場所が重要なんですね。

 

林さん:

はい。安心できる居場所と出会えることで、生きづらい状況が軽減できるとのアンケート結果でした。その一つが「女子会」ではないかと思います。

 

ひきこもりって誰でもなりうるんです。

 

今の時代、ほとんどすべての人が何らか生きづらさを抱えていると言っても過言でないのではないでしょうか。うまくやれているように見えても、誰もがいろいろなことを抱えている。

 

それが当たり前なのに、自分は「ちゃんとできてない」と思っている方が多いように思います。

 

「ちゃんと恋愛して、ちゃんと結婚して、ちゃんと正社員になって」と自分を追い込んでいて…それは本当に苦しいですよね。

 

── 特に女性は求められる役割が増えてますからね。

 

林さん:

そうですね。「女性活躍」と言われますが、「良き娘、良き妻、良き母、良き社会人」であることが暗に求められてしまっているのではないでしょうか。

 

それを「できない」と言える人はいいのですが、「できない」と言えない人が「自分はダメなんだ」と思わされてしまい、しんどくなっているように感じます。

 

しんどかったら休んでいいんです。助けを求めてもいいんです。

 

「ちゃんとしなくて良い」と本当に思います。

 

PROFILE 林恭子さん

一般社団法人ひきこもりUX会議共同代表理事。高校2年で不登校、20代半ばでひきこもりを経験する。信頼できる精神科医や同じような経験をした仲間達と出会い、少しずつ自分を取り戻す。2012年から「自分たちのことは自分たちで伝えよう」と“当事者発信”を開始し、イベント開催や講演、研修会の講師などの当事者活動をしている。

取材・文/天野佳代子 写真提供/林 恭子さん

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