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“女性活躍社会”で進む 「女性」と「子ども」の貧困の現実

仕事

2018.05.15

2019.11.30

ここでは、女性および子どもの「貧困問題」について考えてみる。

母子家庭、非正規雇用の独身女性…なかでも「障害を抱えたシングルマザーの子育て」の例をとりあげる。制度の隙間に陥った女性たちは、どう子育てをするのか。

7人に1人」の子どもが貧困に直面している

かつての日本に「貧困」という言葉があっただろうか?

昭和40年以降、「一億総中流」時代と呼ばれたように、多くの日本人は、自分は中流階級に属すると考えていた。ただし1990年代に起きた「バブル経済」崩壊後は、日本は確実に「格差社会」へと進行していた。

2012年には、「子どもの貧困率」が16.3%とピークになり、「6人に1人」の子どもが貧困にさらされているというデータが出て(※1)、多くの人たちがショックを受けた。その後少しだけ回復し、2015年には13.9%になったが(※2)、これは「7人に1人」の子どもが貧困にさらされているということだ。

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視点を、子どもから女性に移してみると…単身女性の「3人に1人」が貧困であり、ひとり親家庭の50.8%が貧困だが、そのうち母子家庭は85%。母子世帯の就労収入の平均は181万円であり、生活が苦しいと言う母子家庭は82.7 %にものぼるという(※3)。

日本では「絶対的貧困」ではなく「相対的貧困」が問題に

いや…でも周囲を見回してみてください。貧困の子どもはいるでしょうか?

ごくたまに、給食が唯一の栄養源になっている子どもがいて、給食がなくなる夏休みや冬休みが心配だ、という話を聞いたことがあるかもしれない。でも、おそらくそれも少数。

本当に食べさせていない「ネグレクト」という名の児童虐待であれば、児童相談所に保護されてしまうケースである。貧困以外の理由がある。貧困ならば、生活保護を受給する道もある。

つまり、今日食べるものにも事欠く、身に着ける洋服や靴もない、帰る家もない…など、後進国に見られるような「絶対的貧困」のケースは、日本には少ないのだ。

むしろ、衣食住はなんとかなっているし、ある年齢になれば携帯電話も持っている。

けれど、子どもたちの多くが通う塾に自分だけ通えない、お金のかかる部活動ができない、修学旅行に行けない、希望の進学ができない…など、「相対的貧困」のケースが多いと言える。

活躍する女性が増える一方、二極化が進んでいる

なぜ、このようなことが起きているのか。理由は様々あるけれども、なかでも大きいのが、女性労働者の56.3%が「非正規雇用」であることだろう。

男性の正社員の給与を100と考えたときに、女性非正規社員の給与は64.2でしかないのだ(※4)。

「年齢別に働く女性の割合」は、女性は出産時にいったん仕事から離れるケースが多いことから、グラフにすると「M字カーブ」を描いていたが、現在、子どもができても働き続けるケースが増え、M字カーブもゆるやかになってきている。

19852009年に、約6割の女性が仕事を辞めていたことを考えると、20102014年は46.9%になり、減ってはいる(※5)。

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国が「女性活躍」と連呼しているなか、社会で活躍を続ける女性が増えていることも事実。しかし一方で、先ほどの「非正規」の割合がうなぎのぼりに増え、賃金格差が広がっているというデータもある。

結果、「非正規」「シングル(シングルマザーも独身も)」に加えて「中年」の貧困問題が深刻になった。

女性は結婚して夫に扶養されればいいという考え方があったために、顧みられていなかった女性の貧困が、未婚率の上昇とともに顕在化してきたと言える。

「障害を抱えるシングルマザー」が陥る制度の隙間

ここで、ひとり親家庭のなかでも、とりわけ深刻なケースをとりあげてみたい。それは「親に障害のある、ひとり親家庭」の問題だ。

ひとり親が障害を抱えて「障害年金」を受け取ると、ひとり親家庭なら受け取れるはずの「児童扶養手当」が受け取れなくなる。併給が認められていないのだ。ただし、配偶者がいる場合は併給が認められている。

そんなバカな話があるだろうか。

ふたり親よりひとり親の生活の方が大変なのは当たり前…。それに、障害年金は親の権利、児童扶養手当は子どもの権利である。

さらに、もしひとり親が障害年金を受け取ると、行政などが展開している「ひとり親家庭支援」(例:都営交通の無料乗車券、上下水道の減免など)の受給対象からも外されてしまうという。

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障害を抱えることで、子どもに与えることができない「経験の貧困」にも直面する。週末や夏休みに、親が映画やテーマパーク、旅行などに子どもを連れて行くことは、障害を抱えるひとり親にとっては難しいことなのが現実だ。

子どもの自由を束縛して、介護を強いることになる「ヤングケアラー」の問題もある。

子ども食堂が増え続けるなか、生活保護費は引き下げに…

2013年、子どもの貧困対策推進に関する法律が成立した。ちょうどその頃、テレビや新聞で「子ども食堂」が話題になっていたが、今や全国2286か所で子ども食堂がオープンしているという。

子どもの貧困を地域で支える仕組みも大事ではあるものの、それよりもまず、国が法の不備を見直し、セーフティネットをととのえることが先ではないのか。

国連が、持続可能な開発目標「SDGs」のひとつとして「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」と言っている昨今、日本も生活保護費を引き下げている場合ではないと思う。

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子どもの貧困を自己責任といって放置する国に未来はあるのでしょうか? 

ひとり親でも、障害を抱えていても、誰も排除されない世の中になるよう、みんなで考えていかなければならないと思う。

※1「平成24年 国民生活基礎調査」/厚生労働省 ※2・3「平成28年 国民生活基礎調査」/厚生労働省 ※4「平成27年度版 働く女性の実情」/厚生労働省 ※5「平成27年度版 男女共同参画白書」/内閣府男女共同参画局

ライター:工藤玲子
編集者、ライター。お茶の水女子大学文教育学部卒業後、出版社勤務。婦人雑誌の編集に携わったのち、フリーランスとして独立。料理本を数多く手がけ、他にもがん医療、健康、子育て、教育などをテーマにする本の編集や記事を執筆。出産後、「子どもを守る目コミュ@文京区」を立ち上げ、子育てする母親の立場から発信する虐待防止活動を行う。現在、子ども食堂や親子カフェの運営、児童養護施設への出張料理教室なども行っている。2児の母。編著に『柳原和子もうひとつの「遺言」』(中央公論新社)、『がんになるってどんなこと?』(ストーリー担当:セブン&アイ出版)ほか。

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