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趣味のインスタが仕事になる!? “公認インスタグラマー”という働き方

仕事

2018.08.30

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東京都内で1歳の子どもを育てる専業主婦のナヲさん(35歳)が、日本の最北端にほど近い人口約3000人の小さな町、北海道天塩町の「公認インスタグラマー」に就任したのは、今年の4月。現地から定期的に届く新鮮な旬の食材で料理を作ってインスタグラムにアップし、食を通じて町の魅力を伝えるのがナヲさんの役割です。

時間や場所に制限されず、好きなことで報酬を得る――。そんな理想の働き方を実現しているナヲさんにインタビュー! 一風変わった経歴を持つ彼女のキャリアストーリーと、次に目指す働き方の“未来図”とは?

 

色鮮やかで温かみのある家庭料理が人気!  フォロワー数は約77千人


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ナヲさんがインスタグラムに手料理の写真を投稿すると、たちまち数千を超える「いいね!」が付いた。この日のメニューは、オリジナルの“アボトマバーグカレー”。トロトロに煮込まれたカレーライスをぐるりと囲むように、ふっくら肉厚のハンバーグとアボガド、その横には、丸ごとトマトがゴロリと添えられ、ボリュームたっぷりのひと皿。テーブルの向かい側には、クマのぬいぐるみをひざに乗せた家族の姿も。思わず一緒に食卓を囲んでいるかのようなほっこり優しい気持ちにさせられます。

「インスタに投稿されている料理写真は、おしゃれで素敵なものが多いけれど“家族の気配”を感じられるものはあまり見当たらなかったんです。そこで、料理だけでなく、家族団らんの雰囲気も伝わるような構図にしたいなと考えました」

 

 

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ナヲさんがインスタを始めたのは、2年前。“毎日の料理作りのモチベーションになれば”と考えたことがきっかけでした。彩り鮮やかで温かみのある手料理が話題となり、多くの女性たちの支持を獲得。現在のフォロワー数は、約7万7千人にも! 彼女の料理を心待ちにしている人が大勢います。“インスタ上での交流も楽しみのひとつ”と、ナヲさんは目を輝かせます。

「郷土料理を作って写真を投稿した時には、“私の故郷です”“懐かしい”とか“こんな料理があるなんて知らなかった”“新鮮だ”といった嬉しいコメントをたくさんもらい、温かい気持ちになりました。料理を通じて、日本の食文化の魅力も発信していければいいなと思っています」

 

 

研究者の卵として、単身ブラジルへ渡航 


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現在は、専業主婦として子育てに専念する日々をおくっているナヲさんですが、20代の頃は、大学院で人類学の研究に打ち込む“研究者の卵”でした。在学中に「ブラジル日本移民百年史編纂委員会専門調査員」に選ばれ、3年ほどブラジルで生活した経験も。

「ブラジルでは、庶民の主食はお米と豆なんです。私も、現地の人たちにいろんなレシピを教わりながらブラジルの家庭料理をよく作っていました。ブラジルには、かつて日本人移民の方が持込み開発された、日本の野菜や果物が広く流通しているんですよ。立派な富有柿が“CAQUI(カキ)”という名前で市場に売っていたりします。「地球の裏側」ではありますが、文化的な面でも日本人になじみ深いところがあると思います。

 

26歳で帰国した後は、研究に関わる仕事もしながら、旅行会社で働きました。

「研究の仕事は、毎日あるわけではなかったので、それだけでは生活が成り立たなくて。旅行会社を選んだのは、もともと“乗り鉄”で(笑)旅行が大好きだったから。シフト制で融通が利く職場だったので、両立するのに都合がよかったんです。時間をみつけては、頻繁に旅にも出かけ、幼少期の家族旅行も含めて47都道府県を制覇しました」

 

しばらく“2足のわらじ”生活を続けていたナヲさんでしたが、30代を目前に、研究者の道を断念することに。

「研究の世界で食べていくのはなかなか困難。いろいろと考えた結果、これまで取り組んできたテーマには、違う形で関わっていこうと発想を切り替えることにしました。学芸員や教員の資格を生かしたボランティアでもいいし、SNS等で情報を発信していく手もある。視点を変えれば、いろんな可能性が見えてきます。今後はライフワークとして自分なりに関わっていこうと決めました」

 

自治体の「公認インスタグラマー」として、「町おこし」に取り組む


2016年には、6年付き合った5歳年下の彼とゴールイン。翌年出産し、育児をしながら趣味としてインスタグラムを楽しんでいたナヲさんでしたが、偶然目にしたポップ広告で、北海道天塩町が“公認インスタグラマー”を募集していることを知りました。

「普段、広告はほとんど見ないのですが、“北海道から旬の食材が届く”という文字に惹かれ、思わずクリックしました(笑)。すると、自治体の地方創生プロジェクトの一環だと知り、興味を持ったんです」

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もともと日本の文化や歴史を愛し、さらに47都道府県すべてを訪れた経験から、地方の豊かな風土や豊富な食材といった魅力やパワーを肌で感じてきたナヲさん。“やってみたい!”と感じるまでに、時間はかかりませんでした。

「大好きな料理を通じて、私も地方創生に一役買えるんだ、とワクワクしました。しかも、それがきちんと評価され、報酬も貰えるなんて、自分にとって理想的な働き方だと感じました」

「これだ!」と思ったことには、ためらわずに飛びこみ、全力で向き合う。そんな思いきりの良さが、ナヲさんの強みでもあります。結局、5万5千人(4月当時)というフォロワー数が決め手となり、見事約50名の応募者のなかから選ばれ、チャンスをその手でつかみました。

 

メニューのヒントは街中で探す! 独創的なアイデア料理で町の魅力をPR


 

公認インスタグラマーの任期は1年間、報酬は50万円。送られてきた食材で何を作るかは、ナヲさんの感性にゆだねられています。なかには、北海道ならではの使ったことがない食材に出会うことも。どうすれば美味しく調理し、どう見せればたくさんの人に興味をもってもらえるか。力の見せどころです。

「外食した時の料理やデパ地下の惣菜を見ながら、インスピレーションを得ることも。“こんな風にアレンジすると美味しそうだな”とか“この素材とこれを組み合わせたらどうなるのかな…”と考えている時間が楽しくて大好きなんです」

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 独創的なひらめきから生まれたユニークな料理も。例えば、「ふきと薫製ベーコンのキッシュ」もそのひとつ。和食で使われることが多い「ふき」を、天塩町の牛乳を使って、洋風のキッシュに変身させました。

「以前、旅先で食べた山菜のキッシュがヒントになっています。ちょうど冷蔵庫を見たら自家製の燻製ベーコンがあった。癖の強いこのベーコンと、ふきと組み合わせたら美味しそうだな、と思いつきました」

 

自治体初の試みである「公認インスタグラマー」として、メディアの関心は高く、多数のニュースで取り上げられました。ナヲさんの料理が持つ訴求力に惹かれ、別の自治体からの問い合わせも。「料理インスタグラマー」として、さらに注目度が高まっています。

 

そんなナヲさんが今、描き始めている新たな未来図――。それは、これまでの経験を生かし、料理の仕事をすること。現在、薬膳の学校にも通い、『国際中医薬膳師』の資格をとるべく勉強中だといいます。

「もうすぐ1年になりますね。薬膳のエッセンスを取り入れながら、美味しくて体に良いメニューを作ってみたいです。いずれはお料理教室もできればいいなと思っています。あと、ブラジル料理も広めたいですね。よくばりですが(笑)」

 

 たとえ遠回りをしても、興味のあることに飛び込む勇気さえ持ち続けていれば、道は開けていく。自分らしくいられる理想の働き方を、自分でデザインしていくナヲさんの生き方は、多くのママの力になるはずです。

 

 

取材・文/西尾英子 撮影/masaco

 

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