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「男のくせに育休取るの?」はNG、パタハラの境目

仕事

2019.08.03

厚生労働省の調査によると、男性の育児休業取得率は過去最高と言われながら、わずか6.16%(「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」)。一方、男性新入社員を対象とした調査では、約7割が育児休業取得を希望しているというデータ(日本生産性本部「新入社員 春の意識調査」2018年度)があり、著しいギャップがあります。

こうした中で、最近聞くことが多くなったパタニティー・ハラスメント(パタハラ)という言葉があります。パタニティー(Paternity)は英語で「父性」を意味し、一般に男性が父性を発揮する権利や機会を、職場の上司や同僚などが侵害する言動をいいます。

日本は、従来から「男は外で働き、女は家庭を守る」といった性別役割意識が高く、いまだに男性が育児休業を取得することに否定的な見方をする職場も少なくありません。それが高じて、無意識のうちにパタハラを引き起こしてしまうリスクも内在しています。パタハラを防ぐカギは、どこにあるのでしょうか?

 

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当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 

雇用主に新たに義務付けられた防止対策


従来から、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法において、事業主による妊娠・出産、育児休業・介護休業などを理由とする不利益取り扱いを行うことを禁止しています。不利益取り扱いの例は、次のページで紹介しています。

2017年1月からは、さらに1歩踏み込み、上司・同僚からの妊娠・出産、育児休業、介護休業などを理由とするハラスメントを防止する措置を講じることを事業主に義務付けました。

職場における育児休業に関するハラスメントとは、職場において行われる上司・同僚からの言動により、育児休業を申出・取得に関して男女労働者の就業環境が害されることを言います。

育児休業に関する制度や措置を利用したいと上司に相談したことや、制度などを利用したことにより、上司がその社員に対し、解雇その他不利益な取り扱いを示唆することは、防止措置が必要となるハラスメントに当たります。

 

それでは、もう少し具体的にどのような行為や言動がハラスメントや不利益取り扱いになるのか、みていきましょう。前述したように、育児・介護休業法では、育児休業などの申出・取得などを理由とする解雇その他不利益な取り扱いを禁止しています。

例えば、男性社員が育児休業の取得を上司に相談したところ、「休みを取るなら、辞めてもらうしかない」「次の査定では昇進しないと思え」などの言動を受けることは典型例といえます。上司が「男のくせに、育休を取るなんてどういうつもりだ?」と、威圧的な言動で取得を諦めざるをえない状況となった場合は、1回でもハラスメントに該当します。

「子育ては奥さんの仕事」など、個人的な考えを漠然と述べるだけでは当てはまりませんが、育休を利用しようとする社員への直接的な言動で、普通の人であれば育休取得を諦めざるをえないような状況になる言動はハラスメントになりえます。それは、上司ばかりではありません。

職場の同僚が「自分だったら、周りに迷惑がかかるから、とても育休なんて請求できない。君も考え直したほうがいい」など、請求を取り下げるように繰り返し、継続的に働きかけることもハラスメントに該当します。また、会社として育休制度の利用を認めない場合については、そもそも制度などの利用ができることが規定されている法律に違反することになります。

 

不利益取り扱いの例


不利益取り扱いの具体的な例について解説していきます。

 

育児休業などの申出や取得を理由とする不利益取り扱いの例
① 解雇すること。
② 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
③ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。
④ 退職又は正規雇用労働者をパートタイム労働者等の非正規雇用労働者とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。
⑤ 自宅待機を命ずること。
⑥ 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること。
⑦ 降格させること。
⑧ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
⑨ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。
⑩ 不利益な配置の変更を行うこと。
⑪ 就業環境を害すること。
(出所)「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成21年厚生労働省告示509号)

IT業界ではさらにテキストコミュニケーションの処理スピードが進化し、Gmail、Facebookメッセンジャー、Slack、Chatwork、Skype、appear.in、LINE、Confluenceなど、さまざまなツールやサイトを多用しています。

これらのテキストコミュニケーションが普及したことによって、履歴が残り、電話時代の「言った/言わない」の齟齬(そご)はかなりなくなりました。同じ内容を複数人に同時に伝えられますし、受け手側もいつでもどこでも受信でき、自分のタイミングで受け取れるので、効率性は格段に上がりました。

かといって、スピードと効率ばかりを重視して、すべてをテキストコミュニケーションで済ますというのは、ちょっと違うと思っています。

 

近年、育休復帰後の配置転換がパタハラに当たるのではないかと、SNS上で取り上げられることがあります。これは、ケースバイケースで慎重に考える必要があるでしょう。

日本型雇用システムにおいては、主に人材育成を目的とした配置転換は、企業規模が大きいほど一般に行われており、使用者には人事権の行使として配転権限が認められています。

ただし、転居を伴う転勤は、社員の生活関係に少なからぬ影響を与えることから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されていません。業務上の必要性があるか、人選の合理性があるか、手続きの妥当性や労務管理上の配慮はあるか、命令権の濫用を判断する際の基準となります。

 

重要なのは日々のコミュニケーション


労働者の異動で就業場所が変わる場合には、子の養育や家族の介護が困難とならないよう、その状況について配慮することが義務付けられています(育児・介護休業法第26条)。配慮の内容としては、その労働者の育児・介護の状況を把握することや、本人の意向を斟酌(しんしゃく)すること、就業場所が変わる際の代替手段の有無を確認することなどが挙げられます。

育休復帰後の配置転換がすべて問題となるわけではありません。こうした配慮もなく、まして育休を取ったことによる報復措置のような形で不利益取り扱いをすることは当然禁じられています。

大切なのは、配慮足りうる状況を本人がうまく伝えられるようにするため、日頃から職場で円滑なコミュニケーションができる環境にしておくことです。上司・管理職の対応は、大きなカギを握ります。そのためには、企業がイクボス(部下や同僚等の育児や介護・ワークライフバランスなどに配慮・理解のある上司の意)を増やすべく、管理職の意識改革を図ることは重要といえるでしょう。

2018年に「イクメン企業アワード」両立支援部門でグランプリを受賞した日本ユニシスでは、性別にかかわらず利用できるワークライフバランス制度を整え、男性社員による活用も進んでいるといいます。

男性社員を対象とした社内SNS「育児を楽しむパパネット」の運用をはじめ、夫婦や男性社員を対象とする育休復職者向けのワークショップの開催、イクボスを育成するための管理職研修など、さまざまな取り組みを通じて、育児を積極的に行う男性社員を支援しています。

パタハラに限らず、あらゆるハラスメントを許さない職場とするために、経営トップが明確なメッセージを打ち出し、管理職の理解を促すことが今後よりいっそう求められます。

 

文/佐佐木 由美子(人事労務コンサルタント/社会保険労務士

 

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