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仕事で活躍したいなら「頑張るな」⁉︎ 哲学者の言葉で仕事観が180°変わる

仕事

2021.07.14

仕事に悩む女性

先が見えない複雑で不安定な現代。そんな時代だからこそ、働き方や生き方のヒントを哲学に求め、行き詰まるビジネス社会を乗り越えようとする人が増えています。

 

働く女性ならではの悩みに、古今東西の哲学者はどう答えるのか。哲学者である小川仁志先生が、悩み解決のヒントとなる哲学者たちの言葉をピックアップ。わかりやすくかみ砕いた“超訳”とともに解説してもらいました。

「仕事で活躍したいけど家事・育児も手を抜きたくない…」

仕事と家事・育児の両立が難しく、キャリアアップを望みながらも叶わない。現状を打破しようと努力してみても、なかなかうまくいかない。そんなジレンマを抱えている人は珍しくありません。そんな悩みを解決するには、荘子の言葉がヒントになりそう。

 

荘子(中国古代の思想家。生没年不詳)

「そもそも道路というものが、人間がそこを通ることによって道路となるように、個々の物という存在も、人間がそれであるということによって判断されたそれの事実となる」

(『荘子 上 全訳注』講談社学術文庫)

小川先生の超訳 

私流に超訳すると、「人生の道は、あなたが選んだものしかない」となります。

 

荘子が言っているのは、私たちがそこを通ったから道になるように、いまの状況は自分が選んだものであり、自分が選んだ道しか存在しないということです。言ってみれば、ジレンマなんてこの世には存在しない。いまの状況は必然なわけです。

 

例えば、育児と仕事が8対2の比率になっていて、理想とする5対5にしたいと思ったとします。でも大抵うまくいきません。それは、自分が何らかの理由で8対2という状況を選んでいるから。ベビーシッターさん雇ったり、転職したり、実家や義実家に助けてもらうなどの方法だってあるはずですが、お金がもったいないとか、他人を家に入れたくないとか、あるいは今の仕事は変えたくないといった理由で、育児の比率を下げない選択をしているのです。

 

理想を求めて不満を言う人がいますが、理想なんて存在しないと荘子は言っています。私たちは現状を受け入れて前に進むしかないのです。そうしたら、新たな道が見えてくるのかもしれません。 

「毎日忙しくて疲れがたまるばかり。いつまで頑張ればいいの?」

仕事のほか家事や育児に追われ、忙しい日々。疲れはどんどん蓄積していくのにゴールが見えず、いつまで頑張ればいいの…という絶望的な気持ちになることも。

 

そんな疲れる日々に悩んでいる人には、ラッセルの言葉が参考になります。

 

バートランド・ラッセル(イギリスの哲学者。1872~1970年)

「競争は絶えず加速されるに決まっているので、(中略)これに対する治療法は、バランスのとれた人生の理想の中に、健全で、静かな楽しみの中に果たす役割を認めることにある」

(『幸福論』岩波文庫)

小川先生の超訳 

冒頭の「競争」は、他人に負けぬよう多忙な日々を送ることと捉えましょう。超訳すると、「頑張るのではなく、バランスをとることが理想の人生を送るコツだ」となります。

 

私たちは、頑張ることで幸せになると思っていますが、そうとは限りません。とにかく仕事で成果を出したいと頑張って体を壊してしまったり、家事を完璧にこなそうと頑張っていたら夫婦関係がギクシャクしてしまったり。頑張ったのに、かえって苦しい状況に陥ることも少なくないのではないでしょうか。

 

ラッセルの言葉はそのことを暗示しています。弱肉強食の恐竜の世界を例に挙げ、「自分は勝つつもりで頑張っていたのだけれど、恐竜は絶命したよね」といった感じで、皮肉を交えて論じているんですね。

 

競争を意識するあまり、頑張り過ぎるのは禁物。ラッセルが言うように、仕事一辺倒ではなく余暇もとってリラックスするなど、バランスのとれた人生を理想とすべきです。

 「職場の人間関係がうまくいかない。悪いのは私のせいなの!?

ウマが合わない職場の上司、同僚、部下。うまくやりたいと思って気を遣ってみても空回り…なんてことはありませんか?人間関係を円滑にしたいと思う人には、ホッファーの言葉がお守りになりそうです。

 

エリック・ホッファー(アメリカの哲学者。1902~1980年)

「ひとつ謎がある。つまり、自分自身に十分満足できる場合には、人々が私を温かく迎え、重んじているように感じるのだ。自分でも納得のいく満足が他人への態度に影響し、私を寛大にさせ、その結果、他人の反応をそうさせるのかもしれない」

(『エリック・ホッファー自分を愛する100の言葉』小川仁志著)

小川先生の超訳 

これは私が、エリック・ホッファーの『波止場日記』(みすず書房)を翻訳し、著書でその言葉を紹介したものです。超訳すると、「良い人間関係というのは、自分が寛大になることで初めて、相手も寛大になって、築いていくことができる」となります。

 

要は、人間関係に悩むのは、自分にも原因があるということです。私たちは往々にしてそのことに気づきません。「〇〇さんが悪い」「意地悪された」などと、相手をさげすむことばかりに熱心になります。

 

自分にも非があることを認識したら、相手に対して寛大な心を持てるのではないでしょうか。そうすることが、良好な人間関係を育む一歩になると思います。

 「こんなに頑張っているのに、給料が上がらなくて不満が爆発しそう…」

頑張っているのに給料は一向にあがらない。なぜ評価されないのか。このイライラや不満をどうにかして! と思ったときは、古代ローマの哲学者・セネカの言葉がおすすめ。

 

セネカ(ローマの哲学者。紀元前1年頃~65年)

「あなた自身と戦いたまえ。あなたが怒りに勝つことを欲するなら、怒りがあなたに勝つことはできない。怒りを隠せば、出口を与えなければ、あなたは勝ち始めている」

(『怒りについて』岩波文庫)

小川先生の超訳 

怒り=イライラや不満です。つまり、超訳すると「イライラや不満に対して、自分が勝ちたいなら、怒りを隠すことだ」となります。普通はそうは思わないでしょう。イライラや不満を我慢したら、自分が負けたことになると認識する人が多いはずです。

 

しかしセネカはこれに異を唱えます。むしろ、そういった気持ちを我慢したほうが勝利収められると言っているわけです。

 

会社でも、文句ばかり言う人は出世しないと思いませんか? 逆に、我慢している人のほうが早く出世するケースは多い。それは勝つための我慢です。もちろん、ただ我慢しているわけではありません。陰で改善の努力を怠らなかった人が勝利するのです。 

 「嫌なことばかりで仕事を辞めたい。もう働きたくない…」

仕事で嫌なことが重なり、働く気力ごとなくなってしまったという経験はありませんか?ミスをしてしまったり、人間関係に悩まされていると、つい後ろ向きになり、自暴自棄になってしまいます。そんな時は、デカルトの言葉を思い出してみてください。

 

ルネ・デカルト(フランスの哲学者。1596~1650年) 

「あらゆる情念の効用は、精神のなかに思考を強化し持続させることのみにある」

(『情念論』岩波文庫)

小川先生の超訳 

自暴自棄というのは、思考が停止している状態です。もっといえば、感情が理性を支配して、冷静に考えられない状態と捉えられるでしょう。

 

人間の思考は、感情と理性によって構成されています。理性が感情を飼い慣らしている間は平穏無事です。しかしこれが逆になると問題。というのも、理性を失って怒りの感情に任せた行動をとるからです。

 

そこで重要なのが、感情をコントロールすること。感情をうまく使って精神を強化することが望ましく、私はその方法として「感情を思考のBGMにしよう」とよく言っています。

 

これと同様のことをデカルトは論じているのです。超訳すると、「感情というのは本来、自分の思考をプラスに働かせるためのものである」となり、「マイナスに働かせたらダメ」というメッセージも込められています。感情がマイナスに働くと「仕事を辞めたい。働きたくない」という思いのまま、上司に辞表を突き付けるなんてことになりかねません。

 

感情をプラスに働かせ、理性を機能させて冷静になることがが大事ですね。

 

PROFILE 小川仁志先生

哲学者小川仁志先生近影

哲学者・山口大学教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)を経た異色の経歴。専門の公共哲学の観点から、「哲学カフェ」をはじめ哲学の普及活動を行っている。Eテレの哲学番組などメディア出演も多い。著書は『幸福論3.0』ほか100冊以上。

取材・文/百瀬康司

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