2019.08.28
「孤育て」と、育児中の母親の孤独感がメディアでも注目されるようになりました。特に、生まれたばかりの子どもに向き合う育児休業中は、社会と関わる機会が少なくなりがちです。
「悩みを分かち合える人がいない」「これでいいのかな…」「このままできちんと仕事に復帰できるのかな」など、漠然とした不安を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、少しでも明るく前向きに過ごすヒントはないか、お母さんたちに話し合ってもらいました。
お話をうかがうのは、「MIRAIS(ミライズ)」という育休中のお母さん・お父さんたちが交流するコミュニティに参加するみなさん。
MIRAISでは、主にオンラインでがつながり、育休中の過ごし方についてシェアしたり、悩みを相談したり、一緒にイベントを企画したりしているそうです。
そうした活動などから感じた「育休をよりハッピーに過ごすコツ」を聞いてみましょう。
オンラインも使って、まずは人とつながること!
皆さんはなぜ、育休コミュニティに参加しようと思ったんでしょうか?
神宮寺香織さん(第2子の育休中)
もともと同じ時期に育休を取得している友人がいなくて、同志がほしかった、というのがあります。
子育てで忙しい中、自分ひとりだとなかなかやりたいと思ったことができないままになってしまうこともあるので、仲間がいることで前に進めるかなと思いました。
李怡陳さん(第1子の育休中)
私は友だちが以前参加していたと聞いて入りました。
育休中って社会と関わりもないし、なんとなく自信を失いがちだったんです。でも、仲間と出会って話したりイベントを企画したりしたことでリハビリになり、自信が少し戻ってきました。
確かに、育休は出産と同じくらい未知の経験。初めてのことの連続ですから、共感しあえる誰かがいないと、自信を奪われてしまいかねませんよね。
育児や復帰後について悩んでいる方も結構いるのかなと思うんですが、育休中はどんなことを心掛けた方がいいと感じていますか?
山口真梨絵さん(第2子の育休中・ママコミュニティの代表も務める)
私はやっぱり、人とつながることがとても大切だなと思います。今は第2子の育休中ですが、1人目の育休中はすごく孤独でつらかったんです。支援センターなどで親同士が知り合うことはできるし子どもについては話せるけど、親自身のことは話しづらいし、聞きづらいんですよね。
だから今は、MIRAISとは別に、地元の千葉県流山市でもママコミュニティを立ち上げて運営しています。
李さん
分かります!家庭の外に話せる場があるっていうのはすごく大切ですよね。産後うつ防止にもなるんじゃないかな。
山口さん
そうなんです。しかも産後うつのリスクが高い低月齢のころほど、子どもを外に連れ出すのが難しい。なのでMIRAISもそうですけど、私が立ち上げたコミュニティも、オンラインで参加できるようにしているんです。生まれて間もない子どもがいる人もつながれるように。
旦那さんは帰りが遅くて悩みを話せない、孤立してしまってる、っていうお母さんがすごくたくさんいます。
孤独を感じている人には、オンラインでもオフラインでも、「勇気を持って一歩踏み出してほしい」って言いたいですね。踏み出すのって難しいけど、周りの人ももしかしたらもっと話したいと思っている人がいるかもしれないから。
古谷野こえりさん(第2子の育休中)
MIRAISでもオンラインのビデオ会議システムを使っているけど、交流しているうちにオフラインとオンラインの垣根って無いなって気付きました。オンラインでも話しているとモヤモヤが取り除けます!
マイクだけオンにして子供に授乳したり、オムツ替えをするために席を外してみんなの声だけ聞いててもいい。子育て中、外に出にくい時期はオンラインってすごく便利だから、うまく使うといいと思います。
なるほど。オンラインって何となく避けてしまう人もいると思うんですが、家から出づらい時期にはうまく使いたいですね。
大切なものを見直して、主体的な子育てを

ランチ会をする「MIRAIS」のメンバー。親自身の、仕事のことや興味のあることなどを話す
山口さん
あとは、育休中に何がしたいのか、何を大切にするのかを考えてみるのもいいと思います。例えば「子どもとしっかり向き合う」とか。当たり前のことかもしれないけど、自分がそれを一番大切だと思ってるんだって認識できると、「子どものことしかしてない…」とか「いつの間にか育休が終わっちゃう」とか感じずに済むんじゃないかな。
古谷野さん
自分でやりたいことが整理できると、それが子どものことであったとしても「自分」を生きられますよね。「子どもに振り回されて終わった」と思わずにいられる。それって子どもにとってもすごくいいことだと思います。
あとは、復帰してからどうなりたいのか、っていう長期的な目線を持つっていうのも大切かなと思います。短期的に見ると視野が狭くなって後ろ向きになりがちですが、長い目で見ると視野が広がります。
李さん
私は、会社に気遣いはしても、必要以上に気兼ねしない、というのが大事だと思います。
育休を取っていて周りに負担をかけてしまっていると感じる人も多いけど、罪悪感いっぱいで育休を過ごすことは、会社のためにも、自分のためにも、家族のためにもならない。
育休を取ることは個々人の権利だし、子どもが保育園に入るまでは、取らないのは難しいのが実情。せっかくの時間なんだから、有意義に過ごすと決めてほしいです。
例えば育休中、家事や育児が思うようにできなくて落ち込んだり、罪悪感を持ったりすることってないですか?前向きに過ごせる工夫は何かあるでしょうか。
神宮寺さん
私は、「できていない」ことだけに目を向けるのではなく、「ここは頑張っている」という部分にも目を向けるようにしています。
例えば、うちは夫が育休前からの流れで家事を結構してくれていて、「私は休みなのに悪いな」って思うことがあるんです。
でも、夫が遅い日は2人の子どものことをワンオペでこなしているんだから、そこは頑張っていると自分を認めてあげる。そして、夫が遅い日も嫌な顔をしない。そうやって自分でバランスをとっています。できたところを認めるというか。
李さん
自己受容は大切ですよね。育休中は、自信をなくしてしまいやすいから。
人とつながることが大事って話が出たけど、仲間がいると、離乳食を作った話をしただけでもほめてもらえたりする。そうするとすごく自分に対して寛容になれて、子育てにも前向きになれます。
古谷野さん
プチ成功体験を積み重ねることが重要ですよね。
うちは、やることリストを作って、一番上に書いたことができたらもう90点ってことにしてます。例えば今日なら「下の子を連れて出かける」というのがリストの一番目。もうこれで90点!だから夜はラーメンでも食べに行こう、とか。(笑)
前は色々やろうとしてたんですけど、ある時、「家事と育児に追われて、できないことばかり気にしている自分って、なりたい自分だったのかな?」って自問自答したんです。それは違うなと思った。それならできたことに目を向けて、例えば皿洗いに手が回らないなら食器洗浄機を買うとか対策すればいいという風に考えています。
そうやって少しずつ考え方を工夫すると、楽しく過ごせるんじゃないでしょうか。
育休の期間は初めてのことばかりでいっぱいいっぱいになりがち。
考え方を変えたり、少し勇気を持って人とつながったりすることで、育休をより明るい気持ちで過ごせるかもしれません。参考にしてみてはいかがでしょうか。
取材・文・写真/小西和香