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「オムツや布団の持ち帰り変えたい!」異例の選挙戦を勝ち抜いた2児のママ

仕事

2021.05.21

「街宣車も街頭演説もなしー」。20年10月のつくば市議選で斬新な選挙運動を展開し3位当選した女性がいます。川久保皆実さん(35)。彼女の異例の勝利は「選挙戦の常識を崩した!」とSNSでも大きな話題となりました。

 

川久保議員

2歳と4歳の子どもがいる子育て真っ最中のママでもあり、弁護士、IT企業の社長としても活躍する川久保議員に、保育所における保護者の負担が理由となった立候補の経緯、異例の選挙戦術をとった理由についてお話を伺いました。

政治に関心がなかった私が、立候補を決めた理由      

── 川久保さんの選挙戦は若者の間でも大きな話題になりました。もともと政治の道に関心はあったんですか?

 

川久保さん:

いいえ、実はまったく興味がなかったんです。東京大学の法学部出身なので、周囲には政治家になりたいという友人もいましたが、私自身が政治家になるとは「つゆほども思わず…」という感じで(笑)。

 

── 意外な回答です!立候補の経緯はコロナ禍の移住でしたよね?

 

川久保さん:

はい。20年7月まで東京の千代田区に住んでいました。弁護士として担当している顧問先が、ウェブ会議を導入したことで、私も完全に在宅で仕事ができるようになったんです。

 

東京は家賃も高いし『子育てするなら地元のつくば市がいいかな』と思い、20年7月につくば市に移住をしました。

 

ところが、子ども2人をつくば市の公立保育所に入れたら、親の負担があまりに大きいので驚いたんです。毎日使用済みのオムツを持ち帰らなければならず、週末にはお布団の持ち帰りも!3歳児以上のクラスは毎朝、白米の持参も義務付けられていて…。千代田区の公立保育所とのギャップがあまりに大きかったんです。

 

『公立保育所の制度を変えたい』というのが立候補のきっかけでした。

 

── 保育所や幼稚園、学校の制度に不満があっても、たいていはお母さん同士の井戸端会議で終わってしまうことも多い気がします。「選挙に出て変えよう!」とまで思えたのはどうしてですか?

 

川久保さん:

保育所の負担は毎日のことなので「制度がおかしい!」と思ったときに「変えずに我慢する」ということは、およそ私にはできませんでした。

 

千代田区の快適な公立保育所の制度を知っていたので「つくば市に住んでいるから6年間我慢しなきゃいけない」というのはどうしても納得できませんでした。

 

井戸端会議ではもちろん制度は変えられないですし、園長先生や市に要望を出すことも考えましたが、自分自身の経験から「一市民の声では、行政はなかなか動いてくれない」と感じていました。

 

10年前につくば市で痴漢の被害にあったとき、痴漢被害を防ぐためのシステムを作ってほしいと市役所や県警に掛け合ったのですが、私1人の声では動く気配がなかったんです。その経験から「前と同じやり方ではだめだ」と思いました。

 

そんなとき、3か月後につくば市議会選挙があることを知りました。一市民なら『24万分の1の声』だけど、定員28名の市議会議員になれば『28分の1の声』になる。「これならだいぶ大きな声になるぞ!」と思ったんです。

街を改善するという「求人」に応募するような気持ち

── 立候補を決めてから何か障壁はありませんでしたか?

 

川久保さん:

同じつくば市に住んでいる父は「反対」というわけではないけれど、かなり心配をして、政治家になるリスクを6個くらい箇条書きにして送ってきました。

 

── どんな内容のメールだったんでしょうか?

 

川久保さん:

夫の理解はあるか、周囲からの批判に耐えられるか、公職選挙法に違反した場合どうなるかわかっているか、身辺を綺麗にしておかないと、などが主な内容でした。

 

── 議員になった今、メールを見返してみてどう感じますか?

 

川久保さん:

そうですね、、夫はもともと私の仕事を誰よりも応援してくれる人だったので、選挙に関しても「挑戦してみたら」とすぐに同意してくれて、家事の多くを負担してくれたので本当に助かりました。パートナーの理解は絶対に必要です。

議場に座る川久保議員

私の政策を応援してくれる人もいれば、してくれない人もいますが、表に出てきてくださる方と議論することを私は厭わない。

 

公職選挙法に関しては細心の注意を払って選挙戦を戦いましたし、身辺に関しても、これまでの人生で人から後ろ指をさされるようなことはやったことがない。これからもその生き方を貫くだけです。

 

メールをくれた父にはすぐに「リスクはあっても挑戦する意義があると思うので気持ちは変わらない」と返信したのですが、今見返しても同じ答えかな。

 

父の心配は理解できるけれど、私としてはそんなに気負いがなかった。「街を改善する求人に応募していて、そのために選挙に出馬することが必要」というふうに捉えていました。

「街宣車も演説もゼロ」異例の選挙戦術とった理由

── 後援会なし、組織票なし、辻立ちなし、街宣車なしの斬新な選挙戦術はSNSでも大きな話題となりました。

 

川久保さん:

立候補を決めた時に『3ない原則』という活動方針を決めました。

 

(1)仕事と育児を犠牲にしない

(2)他人のお金に頼らない

(3)既存のやり方にとらわれない

 

の3つです。

 

周囲の女性議員から話を聞くと、選挙戦の間は「祖父母に子どもを預けっぱなし。朝から晩まで街頭演説やビラ配りをしていた」という声をよく聞くんです。

 

でも、そうした既存のやり方にとらわれていては、私のように子育て真っ最中の女性には立候補のハードルが高すぎますよね。わたしがこの3つの方針を貫いて当選すれば、多くの人の後押しになるのではないかと思いました。「自分にもチャレンジできる!」って。

 

子育てや、子育ての制度をめぐる課題を一番よく理解しているのは、当事者である私たち。女性でも、子育て中のママでも、「街を変えたい」と思った時に、選挙に出ることが「当然の選択肢」という社会になってほしいんです。

 

── まさに私がその1人で、川久保さんの選挙活動を知り、子どもを犠牲にしないこのやり方なら「私にも挑戦できるかも」と思わされました。

 

川久保さん:

それはすごく嬉しいです!そんな女性が増えて自治体を超えた横のつながりを持つことができたら、と思います。

 

選挙戦の間、「仕事と育児を犠牲にしない」は第一条件だと思っていたので、平日の夕方以降は子どもたちと一緒に過ごしましたし、土日も子どもたちと普通に遊んでいました。お散歩を兼ねてゴミ拾いをするくらい。

 

ゴミ拾いを子供とする川久保議員

その分、有権者の方々にわたしの政策がわかりやすく伝わるホームページを作成し、youtubeの動画を作り、政治活動用のフェイスブックページと、個人のツイッター・インスタグラムも始めて情報発信に努めました。

 

大切なのは候補者が「社会をどのように変えたいか」だと思うんです。有権者がその「政策」に注目して議員を選ぶのであれば、辻立ちや、街宣車や、夜の会合は重要ではないはずで…。候補者の意識も、有権者の意識も少しずつ変えていく必要があるのだと思います。

 

明瞭な語り口で、選挙戦までの道のりを語ってくれた川久保皆実さん。自らがロールモデルとなって女性の政治参画を促し、既存のシステムにも一石を投じましたが、「街を改善する求人に応募する気持ち」という気負いのなさこそが彼女のフットワークの軽さにつながっているのかもしれません。

 

次回は、議員活動がスタートして半年の川久保さんの1日の過ごし方、議員活動の成果、議員の仕事のやりがいなどについて伺います。

取材・文/谷岡碧

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