観客にも教えてくれない、強奪作戦の全貌
「ケイパームービー」という言葉をご存知ですか。直訳すると「犯罪行動映画」。主人公がチームを作って犯罪を犯す様子を描いた作品をそう呼びます。「グランド・イリュージョン」とか「ミニミニ大作戦」、邦画でいうと「黄金を抱いて飛べ」などが挙げられます。
一般的に、こういった映画はハラハラします。というのも、観客が
作戦の全貌を知った上で犯罪
が遂行されるも、様々なトラブルが起きて…「え?上手くいくの!?大丈夫!?」とドキドキするのです。「あ!あいつ裏切りやがった!でも誰も気がついてない!」とか「トラブル発生中!誰が解決するの!」とか「ダメダメ、それやっちゃダメー!」とか、とにかくハラハラします。
しかし、今作「オーシャンズ8」は一味違います。165億円のダイヤをどうやって盗むのか、その作戦を事前に教えてくれないのです。「確かに優秀なメンバーが揃ったのはいいんだけど、で、どうやるの?」と心配しているうちにダイヤ強奪決行日の当日を迎えます。
そして最後には…観客の度肝を抜く怒涛のラストがやってきます。とことん畳み掛けてくる展開の末に辿り着いたあのラストの爽快感ったら半端ないです!
日常には、ちょっとした非日常が必要なんじゃないかと
映画には色々な力があります。泣いたり笑ったりすることで気持ちが柔らかくなるし、自分の人生や考え方を見直すきっかけを与えてくれたり、歴史に隠された真実を暴いてくれたり。
では、この『オーシャンズ8』にはどんな力があるか?
女性と男性で違いはあるかも知れませんが、僕の見解はこうです。「2時間だけ日常を忘れる」力です。この映画を観る直前まで僕は…風呂上がりに全裸で走り回る息子を捕まえてパジャマに着替えさせ、晩ご飯の洗い物をし、可燃ゴミをまとめて捨てていました。お風呂場の前に置きっぱなしにした入浴剤の袋を捨てないと…ヤバい、怒られるかも!と、ゴリゴリの日常です。それから2時間、ゴージャスなハリウッド女優が織りなす大犯罪劇を観たわけです。