公立高校だけでなく私立高校にも手厚い支援が拡大

【写真3】shutterstock_1016638276 (1)

高校では私立が全体の約26%と増えて、これまでより身近な存在になります。それでも、1年あたりの学習費は公立より私立のほうが断然高いのは変わりません。 「ただ、公的な支援が公立高校だけでなく私立高校にまで拡大していたり、大学の進学状況も公立と私立では大きく違っています。そういった情報も加味して判断しないと、進路選択を誤りかねません」

 

まず、公的な支援について。2010年4月に始まった公立高校の授業料無償化が、2014年4月から私立高校にも適用。公立、私立とも、家庭の所得に応じて「高等学校等就学支援金」が国から支給されるシステムに変りました。 「私立高校の場合、公立より授業料が高い状況を踏まえ、国から支給される高等学校等種労支援金に、都道府県ごとに上乗せを行う制度が実施されています。例えば東京都のケースでは、2017年に私立高校の授業料無償化を導入。2018年度は、国の就学支援金にプラスして『授業料軽減助成金』が、合計で年額449000円(私立の平均授業料)まで出ることになりました」

 

給与所得者の夫婦、16歳以上の高校生1人、中学生1人の4人世帯のモデルケースでいうと、国の就学支援金を受けられるかどうかの基準は年収約910万円未満。都道府県の授業料軽減助成金の同基準は東京都の場合で年収約760万円未満。仮に年収590760万円未満であれば、国の就学支援金は118800円、東京都の授業料軽減助成金は33200円となります。

竹下先生作成の図_東京都の例

 

大学現役合格率は公立高3割、私立高7割

私立高校は国の就学支援金+都道府県の授業料軽減助成金を受けられます。なかでも東京都の授業料軽減助成金は手厚いため、近年、私立高校の人気が高まっているといいます。 「2018年の高校受験では、東京都立高校の全日制31校が3次募集まで行いながら30校が定員割れし、うち17校は応募なしという状況でした。私立高校の授業料無償化により、公立から私立に流れたと推測されます」

 

この流れには、大学の進学状況も関係していると竹下さんは指摘します。「東京都では、大学現役合格率が公立高校は約3割、私立高校は約7割という調査データがあります。希望の大学に現役合格できなかったら浪人を余儀なくされます。公立の場合はその可能性が高く、年間最低100万円以上かかる予備校などの浪人費用を想定しておかなければいけないのです。私立の場合は私立高校から私立大学への推薦枠が多数あるため、浪人の可能性は公立より低くなります。それもあって私立人気が高まっているのでしょう」

 

進路選択は難問ですが、お金の無理はもちろん、わが子への過度な期待も禁物。現実を頭に入れて、私立・公立の最良な選択したいものですね。

 

教えてくれたのは… ファイナンシャル・プランナー 竹下さくらさん 兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学商学部にて保険学を専攻。損害保険会社、生命保険会社勤務を経て、1998年にFPとして独立、現在に至る。「なごみFP事務所」を共同運営。主に個人向けのコンサルティングに従事し、講師・執筆活動なども行っている。二児の母。『「教育費をどうしようかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)『「奨学金」を借りる前にゼッタイ読んでおく本』(青春出版社)など著書多数。