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親の財産相続「遺言書」があってもトラブルになる訳

マネー

2021.12.29

親の死後に訪れる相続問題。仲のいいきょうだい同士でも、話がこじれて縁を切るほどまでに関係が悪化する可能性も。そんな最悪の事態にならないよう、親が元気なうちに準備すべきことは?ベストファーム行政書士法人・水久保博正さんに伺いました。

相続すると同時に、いくら相続税を払うかも問題に

── 相続トラブル回避のために遺言が大切なのはよく知られています。遺言以外に「これだけは親が元気なうちにやっておくべき」ポイントはありますか?

 

水久保さん:

銀行や証券会社などの取引金融機関の整理と、生前贈与や生命保険といった相続対策の2つです。

 

とくに相続対策は事前準備をしないで相続に取り掛かる場合、準備をしていた場合と比べて大きな差額が発生します。そのため、相続対策としては年間基礎控除額内で生前贈与を行うことや、生命保険の非課税枠内で生命保険をかけておくなどがあります。

 

相続する財産が多ければ多いほど支払う額が大きくなるのが相続税。「遺産を誰がどのくらい相続するか」の問題だけでなく、「誰が相続税をどのくらい払うのか」の問題でも親族間トラブルは起きてしまいます。

 

相続財産が多い方だと、数千万単位の納税が課される場合もあるので、生前の準備はとても重要でしょう。

「親が遺言書を書いているから安心」の落とし穴

── 実際に生前の準備をしなかったことで、どういった相続トラブルが起きてしまうのでしょうか?

 

水久保さん:

遺留分の存在が考慮されていない遺言書はトラブルになりやすいです。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人のために法律で保障されている一定割合の相続分のこと。請求できるのは故人の配偶者、子ども、親などの法定相続人です。

 

実際に法定相続人への遺留分が考慮されていない遺言書によって、財産を相続することができない相続人から遺留分が侵害された金額を他の相続人に請求され、裁判にまで発展する事例がありました。

 

できれば遺言書作成前に推定相続人を調査して、遺留分の割合を確定させ、その遺留分割合を侵害しないように遺言書を作成することが大切ですが、遺留分の主張をするか、否かは相続人の判断になります。

 

推定相続人が兄弟姉妹、甥姪だけの場合は、遺留分を気にすることなく、自由な遺言が可能なので推定相続人の調査から行うことをお勧めしています。

    

これらの遺留分侵害額を請求する権限がある相続人に財産を遺したくない場合には、まずは専門家に相談のうえ、「誰誰には遺す」「誰誰には遺さない」といった遺留分相続人を考慮した内容と、その理由を明確に記載された遺言書をご自身が作成しておくことで、トラブル回避につながります。

 

遺言を公正証書で作成される場合には、付言事項として相続人へのお気持ちを記載することができ自分の考えや伝えたいことを遺された人へ理解していただくことで争族回避につながる有効な手段の一つになります

 

また、亡くなった親の財産相続の際にプラスの財産だけと判断したため、子どもの一人が相続放棄をしなかったところ、実は親に多額の借金があることが判明した事例もあります。

 

マイナスの財産のほうが多くなったため、後になって債務支払いを相続人であるきょうだい間で押し付けあうトラブルに発展しました。これは親が亡くなった際にすぐに専門家に相談して、財産調査を行えば回避できた事例です。

 

もし相続放棄をする場合には、亡くなった方の最後の住所地の管轄の家庭裁判所に相続を知った日から3か月以内に相続放棄の申述を行う必要があります。

 

亡くなった方の財産調査に時間が要する場合は、相続放棄の期間を延ばす手続きも亡くなった方の最後の住所地の管轄の家庭裁判所行うことになります

エンディングノートを親に書いてもらうコツとは?

── 親が元気なうちから、相続の話し合いを進めるにはどうしたらいいでしょうか?

 

水久保さん:

親御さんが認知症になる、入院する、施設入居するといった事態になると、相続問題に対応できなくなる場合があります。

 

「私たちのためにもやってよ!」と言うのではなく、「お父さん、お母さんのために対策をしてほしい」と、親御さんのための対策だとお伝えすることで、積極的に考えてくれるのではないでしょうか。

 

── 遺言書を作成してもらうことは親に死を意識させてしまうので、お願いしたくても難しいケースが多いと思います。将来的な家族間でのトラブルを防ぐために遺言書作成を促す方法はありますか?

 

水久保さん:

最近よく耳にする「エンディングノート」をプレゼントするのがおすすめです。エンディングノートは、生い立ち、住所録、知り合いの連絡先、財産状況など記載できる内容は多岐にわたります。

 

「遺言を書いてほしい」と言うと拒否反応を示されるかもしれませんが、「自分の人生を振り返ってみて」と言うと、受け入れてくれるかもしれません。

 

ただ、エンディングノートは法的効力がないため、遺言書代わりではなく遺言書の作成に取り掛かるきっかけにすればいいと思います。

 

エンディングノートをパソコンに遺すこともできますが、故人が亡くなった後にスマホやパソコンのロックが開けないトラブルも起きがちです。

 

事前にIDやパスワードのメモを残すようお願いしてください。エンディングノートは相続だけでなく、成年後見申立にも役立ちます。帰省で久しぶりに顔を合わせた際には、ぜひエンディングノートを書くよう働きかけてはいかがでしょうか。

 

PROFILE 水久保博正さん 

宮崎県都城市出身。ベストファーム行政書士法人(東京本店)、行政書士。大学在学中から、法律事務所に勤務し、事務員として多種多様な事件を担当。現在は、相続・遺言書作成の業務を担当。 

取材・文/秋山悠紀

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