2019.08.15
学生を援助するために貸与される“奨学金”。何十年もかけて完済する人もいれば、途中で返済が困難になってしまう人も珍しくありませんよね。そんな若者たちに重くのしかかる奨学金ですが、最近では奨学金返済をサポートする企業が続出しているようです。
奨学金の返済を企業がバックアップ!?
奨学金の返済支援について取り上げたのは、7月16日放送の『おはよう日本』(NHK)。奨学金返済を支援する大手企業3社を紹介しました。
たとえば今年5月に「あおぞら銀行」は、若手行員を対象とした「奨学金返済支援手当」の導入を発表。入行後3年以内の若手行員が制度の対象となり、今年4月入行の新卒行員から適用可能に。奨学金制度による借入金を5%ずつ、入行後3年間に渡って支給していきます。
「大和証券グループ本社」も、昨年の夏から「奨学金返済サポート制度」を導入しました。奨学金返済義務のある社員に対し、返済資金を無利子で融資。同社への返済は入社6年目から始まるため、若手社員の返済負担が緩和されるように。
「トヨタ自動車」ではグループ企業とともに、「工学系進学」と「理系キャリア」を目指す女子学生に年間60万円を貸す奨学金制度を設けています。ちなみに年間60万円の借入は、実質無利息。学生がトヨタグループの企業に入社した場合、返済は全額免除になるそうです。
奨学金支援制度に対して否定的な人の見解は…
企業が奨学金返済をサポートする背景には、“優秀な人材獲得に繋げたい”という狙いが。こういった企業の動きを受けて、ネット上では「これは嬉しい!」「まだ給料が安定しない新卒にとっては有難い制度。私も何度奨学金の返済を重荷に感じていたことか…」「トヨタの全額免除いいね。先行きが明るい」「利子分が相当浮くよね」など絶賛の声が続出。
しかしその一方では、「就職先からお金を借りるってことは、一生会社に頭が上がらないってこと。会社の言いなりになり続ける道が見えるよ…」「大和証券とか入社6年目から返済開始って謳ってるけど、果たしてそれまで新卒が会社を続けられるのだろうか」「会社から借入するというのは、就業上の縛りになる。それもコミで学生は考えないとね」と不安視する人も。
中には「返済のために合わない仕事を無理して続けた結果、うつ病などの病気を発症。かといって融資を受けている以上辞職することもできず、治療費や失業など奨学金とは別の借金で身を滅ぼしそう」と警鐘を鳴らす人も少なくありません。
「奨学金の延滞が始まった理由」第1位は?
奨学金を抱える若者の救世主ともなり得る“企業の奨学金支援制度”。そもそも奨学金を利用している人は、本当に返済を負担だと感じているのでしょうか。
独立行政法人「日本学生支援機構」が発表した「平成29年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」では、延滞者3307名と無延滞者2294名に対してアンケートを実施。「奨学金の返済は負担になっているか?」と尋ねてみたところ、「とてもそう思う」「そう思う」と回答した延滞者は88.1%、無延滞者に関しては全体の48.3%を占めていました。
また同調査では、延滞者を対象に「延滞が始まった理由」を質問。すると「家計の収入が減った」が67.8%で最も高く、次いで第2位には「家計の支出が増えた(40.2%)」、第3位には「入院、事故、災害等にあったため(19.9%)」と続いています。
実際にネット上でも「大学に行ったのが間違いと思えるくらい、奨学金の返済がつらい」「奨学金は月1万円で返済してるけど、ひとり暮らしの身にはかなりこたえる」といった声が。
多くの人が負担に感じている奨学金の返済。企業間で広がる奨学金返済の支援が、少しでも奨学生にとって“吉”となるといいですね。
文/河井奈津