2018.12.01
朝は保育園への送迎や家族の送り出しで精いっぱい、帰宅したとたんに夕食作りに追われる毎日。部屋を片づける余裕なんてないし、どこから手をつければいいのかわからない…そんなモヤモヤを抱えながら、SNSで見かけるおしゃれな家と自宅との落差に自信をなくしていませんか? 「片づけなければ」というストレスから解放される〝片づけの極意〟をご紹介します。
お話をうかがったのは…井田典子さん
整理収納アドバイザー。横浜友の会(婦人之友読者の会)所属。NHK総合テレビの情報番組「あさイチ」などで〝片づけの達人〟、〝スーパー主婦〟として活躍。主婦ならではの実践的な整理・収納術が好評で全国各地で講演会を行う。初の著書『「引き出し1つ」から始まる! 人生を救う片づけ』(主婦と生活社)が大ヒットし、12月1日に待望の第2弾『たった1か所を「眺める」ことで始まる! 人生を変える片づけ』が発売。
「達人」「スーパー」という称号をつけて呼ばれるほど〝主婦の中の主婦〟である井田さんですが、ずっと自宅で学習教室を営んできたワーママでもあったそう。時間がないなかで生まれた工夫が話題となり、初の著書は大反響。このたびその第2弾発売に合わせ、お話をお聞きしました。
▲第1弾の著書の読者ハガキでは、全国からたくさんの質問や悩みが寄せられた。
インタビュアー(以下I):井田さんの本を拝見すると、同じ時間がないなかでどうしてここまで違うのか落ち込みます。どうやったらこんなふうにスッキリ暮らせるんでしょうか。
井田(敬称略):「片づけができないと思い込んでいる人は、テクニックにとらわれすぎていると思うんです。SNSで見たり聞いたりするたびに、みんながおしゃれですっきりした家に住んでいるんだ、それに比べてうちは、私は…と卑下しちゃう。
I:たしかに…。ヒントを探すつもりが落ち込んでしまいます。
井田:片づけに手順はありますが、正解はないんですから、他人を基準にする必要はない。片づけこそ自己基準でいいんです。片づけは気持ちよく何かを始めたり、気持ちよく明日を迎えるための手段。自分のOKラインを決めて、それができたらよし!となることが大事です。
I:なるほど。そう言われると気がラクになってきます。
井田:「片づけってね、自己肯定感に深く関係しています。だから、あれに比べるとできてない…と落ち込むのではなく、小さなことでも「できた、気持ちいい!」という方向に持っていくと、どんどん自己肯定感が上がって、いい循環が生まれてきます。
I:自己肯定感を上げるも下げるも、捉え方しだいということですか。
井田:その通り。しかも、私、よく言っているんですが、片づけはお金がちっともかからない「0円リフォーム」。こんなにいいことはありませんよ。
I:でも、長く放ったらかしなので、どこから手をつけていいのか…。
井田「みなさん、大変、めんどう、とおっしゃるのですが、何がどうなっているのか漠然と捉えているうちはなかなか手がつきません。やることがはっきりしませんから。家の中の風景には、すべて「量や数」があり、「名前」があり、「形」がありますよね。
I:言われてみれば…
井田:つまり、ただのイメージを、どんどん具体的な言葉に落としていくことです。「窓をふくのは大変、時間がない」というのはただのイメージです。これを、どんどん具体化していく。窓はリビングに何枚あるのか、1枚ふくのに何分かかるのか。
I:細かく言葉に置き換えていく?
井田:そう! そうすると、「リビングにある窓は4枚で、1枚で3分かかるとしたら、12分あったらふける」… そうなったらどうですか?準備と片づけを入れても15分なら今できるかも、と考えられるようになります。
I:たしかに! 勝手に「大変だ、めんどうだ」と思い込んでいるところあります。
井田:大きく重くのしかかっていた悩みが、核がはっきりして小さくなると、「な~んだ」となる。行動しやすくなるんです。この具体化は、片づけにとても重要。たとえば、この部屋、なんだかゴチャゴチャしているなと思ったら、写真に撮ってみてほしいんです。
I:汚いところをあえて撮るわけですね?
井田:そうです。これも、具体化のひとつ。私たちの目は、だんだん都合の悪いところは見なくなります(笑)。写真にとることで、埃だらけの造花がある、カウンターにモノがびっしり…と改めて気づくことができるんです。
I:モノの見方を変わる、ということなんですね。ところで、どこもかしこも片づけが必要だったら、どこから始めればいいでしょうか。
井田:「1か所でいいから、ここだけはできた! という感覚を持つことが次につながります。私がいつもおすすめしているのは、財布。財布ならいつでもできますよね。いらないレシートや使わないポイントカードを減らし、ブタ財布をスッキリさせる(笑)。
I:ああ、それならすぐできそう!
井田:「キッチンの引き出し一つもおすすめです。キッチンにあるものは、用途がはっきりしていて選別しやすいし、毎日使う場所なので効果も感じやすい。間違っても、思い入れや愛着があるものから始めないのがコツです。
I:そもそもモノが多いので、やはり「捨てる」という作業が必要になりますよね…?
井田「片づけの基本の考え方が、「だ・わ・へ・し」です。順に「出す、分ける、減らす、しまう」。この4つの中で、やはりみなさん苦労されるのが「減らす」。ここで大切になってくるのが、「枠」という考え方なんです。
I:「限られたスペース」という意味でしょうか。
井田:スペースに限らず、ひとつの「上限」と考えてください。なんとなく、「多い」「少ない」ではなく、「スプーンは10本」「この仕切りに入るだけ」などと、具体的に「枠」を決めてしまうんです。あとは、どの子をレギュラー入りさせるか、監督になった気分で選んでください。
I:「枠を作る」という意識は、井田さんは暮らしのあちこちで持っていらっしゃいますよね。
井田:はい、「枠」が決まるといろいろなことがスムーズに回り出します。窮屈だ、制限があるのはいやだ、と感じる人もいるかもしれませんが、「枠」が決まっているととにかくラクなんです。乱されることがなく、かえってその中で自由を楽しむことができます。
I:忙しい人には有効な考え方のように思えます。
井田:「仕事を持つ人には、ぜひ取り入れてみてほしいです。片づけだけではなく、たとえば「家事は9時までに終わらせる」「買い物は1回15分」というルーティーン化もひとつの「枠」。考えたり、迷ったりすることがないのでストレスがなく、効率的に時間を使えます。
→【後編】は「家族を巻き込むコツ」をご紹介します。お楽しみに!
待望の書籍・第2弾はこちら!
『たった1か所を「眺める」ことで始まる! 人生を変える片づけ』
ライター:のざわやすえ
出版社での編集を経てフリーに。ライター・エディター活動の一方で、主婦雑誌で培った知識をもとに「暮らし方アドバイザー」として、整理収納や家事タスクのアドバイスでも活動中。また、趣味のソーイングではオーダー業も。働きながら育てた一男一女は、この春から高2、高1に。