2019.04.16
リラックマの魅力について語ってくれた小林雅仁監督
4月19日よりNetflixにて全世界で独占配信がスタートする『リラックマとカオルさん』。動くカオルさんが登場することでも話題を呼んでいます。アラサー女性・カオルさんとリラックマたちの12カ月を描き出す物語。忙しい毎日を送る女性たちに癒しの時間を与えてくれることはもちろんのこと、ちょっぴり毒っ気もあり! で「そうそう」と共感できること間違いなし!
ふわふわな体、優しい目、そして安定のマイペースぶり。いつのまにか住みついたリラックマのおかげで、いつもほんわり温かいカオルさんの毎日が描かれる『リラックマとカオルさん』の小林雅仁監督に作品の魅力、リラックマとの出会い、制作裏話について語っていただきました。
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—— 作品を手掛ける前に、監督ご自身が抱いていたリラックマのイメージについて教えてください。
小林監督 中学生と小学生の娘がいるのですが、原作も知っていたし、グッズも持っていたので「子どもに人気のキャラクター」という認識はありました。「リラックマ」の人気は知っていて癒しキャラというイメージを持っていましたが、実は意外と毒もあって、大人の女性に支持されているキャラクターだということは今回初めて知りました。
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—— リラックマの登場から15年以上が経ち、今回、ついにカオルさんが登場するということで、ファンがとても注目しています。カオルさんを描くうえで意識したことはありますか?
小林監督 原作のコンドウアキさんや、サンエックスさんにその都度いろいろと提案し、アドバイスをいただいて一緒に作り上げていきました。初登場のカオルさんは注目されるだろうと、本当に難しかったしこだわった部分も多かったです。カオルさんに共感してもらえないと、世界観も共感されないと思ったからです。容姿、性格、勤務先、住んでいる場所、好きなものなど、すべてに悩み抜いて決めていきました。今回初めて動くカオルさんが登場することで、正解というか指針がないわけですよね。リラックマファンの方たちに「私が思い描いていたカオルさんじゃない!」と言われることもあるかもしれない。だけど、「思っていたのと違うけど、共感できる。いいな。」そんな風に思ってもらえたらいいなと。
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—— 容姿など、具体的にどのようなところに悩みましたか?
小林監督 リラックマも含めて、カオルさんが東京のどこかにある街に実際に住んでいるような気がすると感じてもらえることが大前提でした。「荻ケ谷」という架空の街に住む30歳の女性。会社に勤めて10年少々。ある程度の年収もあって洋服もそれなりのものを身につけている。毎日会社に通うし、お出かけのときにはおしゃれだってします。キャラクターアニメでは洋服は1種類がベーシックなスタイルですが、カオルさんにはスタイリストさんをつけて、アドバイスをもらいながら衣装を考えていきました。
—— 実写に近い作り方ですね。
小林監督 そうですね。カオルさんという人をキャスティングしてお芝居をしてもらった、そういう意識でしたね。
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—— 表情にもとても変化があってリアルでした。
小林監督 今回カオルさんの人形には、「メカニカルヘッド」を採用しています。これは、顔の中にメカ(ギア)が入っていて、しゃべるときに顔の筋肉が動く、例えばほっぺたが上がったり下がったりするのを表現できるものです。イギリスの著名な工房Mackinnon&Saundersで製作したもので、海外のストップモーション作品などでたまに使われていますが、日本ではめずらしいかもしれません。
人としてリアルに感情を出すときには、悲しいとうれしいの間の感情も表現したい。何も言わなくても、カオルさんの表情から「何を思っているのか」が伝わることが大切だと考えました。日本語でお芝居する作品なので、すべての感情を言葉にする必要はないし、リラックマもしゃべらないキャラクターです。しかし、目線で会話することだってある。今回はカオルさんとトキオくんにこのメカニカルヘッドを採用しています。
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—— カオルさんの表情が豊かなのはそういった演出があったからなのですね。リラックマにも表情があるように感じました。
小林監督 そういっていただけるととてもうれしいです。撮影前は悩みどころでもありました。人間のキャラクターは白目があるので目玉を動かすことで表情がわかります。しかし、リラックマは黒目で人間ほど首も動かない。なので、どこにカメラが入れば落ち込んでいるように見えるのか、だらけているように見えるのかとか。光の入れ方、目線の角度、などにはとても気をつかいました。もしかしたら、観た人、つまり受け取る側がリラックマの感情を読み取って「表情がある」と感じているのかもしれませんが、作るときには光、角度、動きにこだわりました。
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—— 今回世界190カ国独占配信となりますが、海外に向けて意識したことはありますか?
小林監督 日本発のお話なので、季節は意識しました。日本の梅雨はジメジメして湿気が多い。秋は夕方の景色がとても綺麗など。リラックマとカオルさんの12ヶ月を描く中で、美術を際立たせるためにここでも光の入れ方には工夫しました。
—— ストップモーションアニメを作るのはとても大変! というのをよく耳にします。具体的にはどんなところに難しさがあるのでしょうか?
小林監督 少し雑な言い方ですが、実写であればそこに人がいて、公園にでも行けば映画が撮れるものです。しかし、ストップモーションアニメは、モノをゼロから作り出さないと撮るものがないんです。今回のような設定、つまりリアルな設定にすればするほど、デザインして作り出さなければならないものが増えてしまいます。描きたい世界を立ち上げるためには、すべてをオーダーメイドしなくちゃいけない。そこが一番大変なところですね。
—— 監督から見たカオルさんの魅力を教えてください。
小林監督 とても正直な人ですね。表の顔も裏の顔も素直で正直。会社では言いたいことも言えずに鬱憤が溜まっていて、家に帰ると少し毒を吐いてしまう。「裏と表があるのが人間」というのを描きたかったので、カオルさん演じる多部さんにも「カオルさんはとても素直で正直な人です」と説明しました。
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—— お気に入りのキャラクターはいますか?
小林監督 コリラックマが好きです。汚れてしまった大人の心について「これではいけないな」って思わせてくれたキャラクターです。そんなところを感じるエピソードがあるので、ぜひチェックしてください。
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—— CHANTO読者へメッセージをお願いします!
小林監督 生きているとモヤモヤすることもたくさんあります。1人で抱え込まずにこの作品を観て「私以外にもこういう人がいるのね」と楽な気持ちになってもらいたいという思いを込めて作りました。ハラハラドキドキ、ドラマティックな展開もなければ大事件も起きません。のんびりとお茶を片手に10分ずつ観てちょっとリラックスしたり、全13話を続けて観て映画のように楽しむのもおすすめです。
小林雅仁 / 監督
1972年栃木県出身。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科舞台美術専攻卒。ロンドンカレッジオブプリンティングに留学。帰国後、CMN(CMα)にてCM 演出のキャリアをスタートさせ 、2013年に TYO クリエイティブ・センターに移籍。ネスレ、イトーヨーカドー、花王などのCM演出を多数手掛け、2017年に自身が演出したグローバル向け「どーもくん」の8K高精細フルこま撮りアニメ「DOMO!WORLD」がNYタイムズスクエアのデジタルサイネージに登場し話題に。2019年よりドワーフに正式加入して活動中。
予告はこちらから https://www.youtube.com/watch?v=iJLRAO6dRtE
[作品情報]
Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』
◉配信情報:4月19日(金)よりNetflixにて全世界独占配信
◉出演:多部未華子 ほか
◉脚本:荻上直子
◉クリエイティブアドバイザー:コンドウアキ
◉監督:小林雅仁
◉製作著作:サンエックス株式会社
◉監修:サンエックス“リラックマチーム”
◉アニメーション制作:ドワーフ
◉13話・各11分/4K対応
◉Netflix作品ページ netflix.com
◉リラックマごゆるりサイト san-x.co.jp
◉©2019 San-X Co.,Ltd.All Rights Reserved.
取材・文/タナカシノブ