2019.03.09
©︎『洗骨』製作委員会
4月18日から開催される第11回沖縄国際映画祭では、恩納村を舞台に撮影した新作『NAGISA』の上映が決定しており、映画監督としての活躍がめざましい照屋年之。お笑い芸人・ガレッジセールのゴリとして活躍する照屋年之ですが、実は、これまでに9本の短編、1本の長編を製作しているんです。
今回ご紹介する映画『洗骨』は、沖縄を中心に全国で大ヒット中。自身が2016年に製作した短編を長編映画化した作品なのです。
映画『洗骨』
ニューヨークの映画祭で観客賞を受賞!
©︎『洗骨』製作委員会
お笑い芸人らしく、しっかりと笑いをとりながらも、祖先や家族についてじっくりと考えさせられ、最後は心がぽかぽかとあたたまる映画『洗骨』。照屋監督の長編2作目となる本作は、過去に製作した短編映画『born、bone、墓音。』を長編映画化した作品で、ニューヨークで開催された北米最大の映画祭「第12回JAPAN CUTS」では観客賞を受賞!海外でも高い評価を得ている映画なのです。他にも「モスクワ国際映画祭」「上海国際映画祭」「ハワイ国際映画祭」などの国際映画祭に選出されている作品です。
タイトルにもなっている洗骨とは、今では沖縄の一部の離島のみに残る風習で、亡き人を「あの世」に風葬した後、数年後肉がなくなり骨だけになった頃に対面し、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗うというもの。そこでようやく「この世」と別れを告げることになるのです。
妻の死を受け入れられない夫
©︎『洗骨』製作委員会
奥田瑛二演じる主人公・新城信綱は、妻・恵美子の死を受け入れらず酒浸りになってしまいます。そこに離婚したことを隠している筒井道隆演じる長男・剛、未婚の母になろうとしている水崎綾女演じる長女・優子といった面々が絡み、信綱が現実に向き合っていく様子が描かれていきます。
家族の絆が切れかけたと思ったら繋がる。家族が崩壊すると思ったら持ち直す。家族関係にめんどくささや、厄介さを感じながらも、やっぱりありがたいものかも……と思える、そんなところが本作の見どころとなっています。
シリアスと笑いの絶妙なバランス
©︎『洗骨』製作委員会
愛する人の死、そして残された家族の確執。これだけを見ると、ちょっと重めの作品なのかと思いますが、さすが笑いのプロ! 照屋監督が描くシリアスと笑いのバランスが絶妙なんです。沖縄という土地柄もあるのかもしれませんが、ゆるさと独特の空気が流れ、そして心がじんわりとあたたかくなるのを感じます。
©︎『洗骨』製作委員会
洗骨という風習の違いはあれど、「お葬式ってどこもこんな問題あるよね」という小ネタもしっかり入っていて、思わずクスッと笑ってしまいます。家族の絆、祖先からの命のリレーを軸に描かれているのですが、現在自分が生きている、生活している社会、つまりご近所や仲間たちとのつながりがプラスされることで、“今の自分”が成り立っていることを実感します。
長男・剛は、洗骨をきっかけに自分を見つめ直します。剛と同じように忙しい日々を過ごすママ・パパたちは、そんな剛の姿に何か考えさせられるかもしれません。クスッと笑える家族の絆の物語。ぜひ、家族で笑いながら楽しんでみて。
文/タナカシノブ