2018.12.20
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
「もし、自分が同じ立場に立ったら……」と考えさせられる作品はたくさんあります。
今回紹介する映画『人魚の眠る家』は、答えを出すのが難しいタイプの作品です。原作は、人気作家・東野圭吾さんの同名ベストセラー小説。どのキャラクターの目線で観ても、涙が溢れます。
映画『人魚の眠る家』
愛する娘に訪れた悲劇
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
播磨和子(篠原涼子)と和昌(西島秀俊)は、娘の瑞穂(稲垣来泉)の小学校受験が終わったら離婚する予定の、いわゆる“仮面夫婦”という関係。そんな夫婦に、ある日突然悲劇が訪れます。
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
プールで溺れた瑞穂が意識不明となり、昏睡状態に。脳外科医の進藤(田中哲司)から回復の見込みなしと告げられてしまうのです。脳死の可能性は高いものの、脳死判定をするかどうかは、夫婦の意思に委ねられます。一度は決心したものの、奇跡を信じたい薫子は、待つことを選びます。夫の和昌も奇跡にかけてみることにしたのですが……。
徐々に温度差が見えてくる夫婦の姿
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
「娘の死を簡単に受け入れることができない」母としての思いは、次第にエスカレートしていきます。そんな薫子の気持ちをますます暴走させるきっかけをうむのが、和昌が経営するIT機器メーカーで研究員・星野裕也(坂口健太郎)です。「奇跡が起きてほしい」と願う気持ちは、父である和昌にももちろんあるのですが、徐々に薫子との間に温度差が生まれてきます。
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
星野が作り出す機器は、その役割や効果を聞けば「なるほど」と一度は納得するものの、実際に使っているシーンを目の当たりにすると、正直怖くもなります。そこに母親の強く深すぎる愛が加わると、気味の悪さすら感じてしまうのです。「もっと、もっと」と母親の行動がエスカレートするにつれ、父親の感情がどんどん冷静になっていくのです。
さまざまな母親を演じる篠原涼子
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
今年公開された映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』や、来年初夏公開予定の『今日も嫌がらせ弁当』でも母親役を演じる篠原涼子。本作では、狂気にも見える強すぎる母性を持つ母親を演じています。
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
人間の死をどう定義するのか。脳死や臓器移植は考えさせられるテーマでありながら、なかなか答えが出ないテーマでもあります。自分が置かれた立場によってもその答えが違ってくることもあるかもしれません。本作には薫子の母親(松坂慶子)や和昌の父親(田中泯)も登場するので、祖父母の立場でも観ることができます。
一人で観ても、家族と一緒に観ても、観た後にいろいろなことを考え、話したくなる、そんな作品です。原作もぜひ!
[作品情報]
『人魚の眠る家』
◉大ヒット上映中!
◉監督:堤 幸彦
◉脚本:篠﨑絵里子
◉原作:東野圭吾「人魚の眠る家」(幻冬舎文庫)
◉出演:篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、田中泯、松坂慶子
◉配給:松竹
◉公式サイト:ningyo-movie.jp
◉©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
文/タナカシノブ