2018.10.10
© 2016 SC INTERNATIONAL PICTURES. LTD
「あなたの愛に、私は閉じ込められるーー」
夫婦、愛、嫉妬、謎…。キャッチコピーとともに、引き込まれるキーワードが散りばめられている本作ですが、実は、現在大ヒット上映中の実写版『プーと大人になった僕』の監督、マーク・フォースターがメガホンを取った作品なんです。続けて監督作が公開されたこのタイミングで、マーク・フォースターの多彩っぷりを見比べてみるのも面白いかもしれません。
映画『かごの中の瞳』
視力を取り戻した美しい妻
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ブレイク・ライヴリー演じるジーナは、子供の頃の交通事故が原因で、視力を失ってしまいます。ジェイソン・クラーク演じる心優しいジェームズは、愛する妻を献身的に支えています。ジーナの角膜移植手術をきっかけに、バンコクで幸せに暮らす夫婦に変化が訪れます。
久しぶりに視力を取り戻したジーナの心は好奇心に目覚め、欲望があふれ出します。一方、臆することなく欲望を解放していくジーナを見つめる夫・ジェームズからはどこか寂しさが感じられます。ジーナの視力の回復は、夫婦にとって願ってもないことだったはず。しかし、夫婦関係には不穏な空気が漂い始めます。
想像と違っていただけ…
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ジーナの視力がだんだん回復していく様子を感じられるのも、ストーリーに入り込めるひとつの要因です。光や色がぼんやりと滲むジーナの視界を体感しながら、“見える”ことへの期待、不安を読み取ることができます。
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2人の夫婦関係は、ジーナが“見えない”ことでバランスを保ち成り立っていたとも言えます。“見える”ことをきっかけに、「想像していたのと違った」と感じる部分が出てきてしまうのです。こういう発見は、ジーナのように目が不自由という状況でなくても、男女関係ではよくあることではないでしょうか。付き合ってみたら、一緒に暮らしてみたら、結婚してみたら…、「想像していたのと違った」と。2人の関係が切ないのは、“見える”という願った結果がきっかけで、想像と違った…と気づいてしまったことなのです。
内気で地味から大胆でエロティックな妻へ
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本作の見どころは、何と言ってもブレイク・ライヴリーの美しさです。内気で地味なジーナが、視力を取り戻すことで、美しく大胆に変化していく様子を、官能的に演じています。夫婦が暮らすタイ・バンコク、旅行へと出かけるスペイン・バルセロナなどエキゾチックな雰囲気漂う街並みと相まって、その魅力が一層引き立っています。
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いろいろな色が見たいというジーナの言葉通り、カラフルな花々、澄み切った青い空や海など、“色”が印象的な映像にも引き込まれます。妻が美しくなることは、夫にとってうれしいことであるとともに、疑いや嫉妬という気持ちも芽生えてしまう。心優しい夫に満足していたものの「想像と違う」ことに落胆を隠せない妻。互いに犯してしまった裏切りが夫婦関係にもたらした結末とは…。
ジーナの視覚がフックとなっていますが、軸となるのは、性の目覚め、自我の芽生え、そして夫婦関係です。視力を取り戻すことで、見えなかった頃からこれまでを再体験するジーナという女性の成長物語が体感できます。
[作品情報]
『かごの中の瞳』
◉監督・脚本:マーク・フォースター
◉出演:ブレイク・ライヴリー、ジェイソン・クラーク、ダニー・ヒューストン
◉配給:キノフィルムズ/木下グループ
◉2016年/アメリカ/英語/109分/レイティング:R-15
◉大ヒット上映中
◉© 2016 SC INTERNATIONAL PICTURES. LTD
◉公式サイト:kagonaka.jp
文/タナカシノブ