注目のキーワード

注目のキーワード
コピーしました
お使いの端末は
この機能に対応していません

第1回|是枝監督「そして父になる」で描かれる母の強さ

ライフスタイル

2018.06.15

2019.12.01

akapen_600-420 

CHANTOのみなさん、はじめまして!

 

みなさん、はじめまして。映画コメンテーターの赤ペン瀧川と申します。突然ですが、“ママに捧ぐ映画”というテーマでさまざまな映画をご紹介することになりました。とてもワクワクしています。

第一回目なので、少しだけ自己紹介をさせてください。

僕は“映画コメンテーター”であり、3歳の息子を持つ父親であり、結婚5年目の夫でもあります。そして、最初に伝えておきますが、僕は夫としてはポンコツです。

妻は働いているうえに家事をひとりでこなします。息子と僕のご飯を用意し、掃除や洗濯なども一手に引き受け…、夕飯時にはハイボールを作ってくれます。それに引き換え、僕は朝から晩まで映画を見て過ごし、たまにお風呂の掃除を頼まれようものなら「排水溝の髪の毛が超怖いからできません!」と拒否します。ホラー映画を死ぬほど見ているくせに、排水溝の髪の毛が怖いんです。そう、僕は夫としてはポンコツなのです。

しかし、映画コメンテーターとして全国のママさんが元気になるような映画を紹介する事ならできます。嫁が聞いたら…、きっと、こう言うでしょう。「全国のママさんを応援する前に、風呂掃除ぐらいしろよ」と。ごもっともです。

でも嫁よ、聞いてくれ。僕は家族にまつわる映画をたくさん見てきた。しかし、夫歴はまだ5年。知識はあるが経験は浅いんだ。この連載を続けながら父として、夫として、僕自身も成長していくつもりだ。僕は読者に映画を教え、読者の皆さんから夫の心得を教われば、僕ら夫婦もウィンウィンじゃないか。 …と、いうわけでよろしくお願いします。

 

IMG_7537

▲2014年に誕生した息子・晴太朗と。初めてのユニバーサルスタジオジャパンに浮かれる僕たち。

ママに捧ぐ映画 第一回 是枝裕和監督作品
『そして父になる』

記念すべき連載第1回目でご紹介する映画は、是枝裕和監督の『そして父になる』です。是枝監督といえば、最新作『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞するという快挙を成し遂げました。彼が2013年に撮った作品である『そして父になる』は、赤ちゃんを取り違えられた2組の家族の物語です。

タイトルこそ「父」なのですが、「母」を描いた映画でもあります。

”そして父になる”道を歩む夫の横で、とっくの昔に”母”になっている妻たち。この映画で、何があっても”母でいる”ことの強さを目の当たりにしたら、これからの子育ての不安も吹き飛んでしまうのではないかと思うんです。”私たちママは、母親である時点でこんなにも強いんだ”って。

 

僕は息子が産まれてきてからの3年間、何度も驚かされたことがあります。それは、息子がまるで自分の分身に見えること。

ワガママを言ったり、怒ったり、調子にのったり…、まるで僕そのもの。性格だけじゃない。筋肉のつき方や、頭の大きさ、保育園での身長順まで、僕の小さい頃と同じじゃないか。これはもう、絶望的に似ていると言っていい。

お年頃になればきっと、“もっと身長高かったらなあ”なんて、同級生の高身長イケメン男子と比べて自分の体型を呪い、父である僕の体型をも呪うのだろう。しかし僕はといえば、自分に似ている君を見て、幸せな気持ちでいっぱいだ。どんなに君が嫌だと言おうとも。

 

もちろん、似ていなくたって、きっとわが子はかわいい。

でも、と思う。わが子が成長するにしたがって、“なんだか僕に似ていないんだよな”と思うようになっていったらどんな気分だろう。

そんな気持ちを抱え続けた父親が、ある日、自分と息子の間に隠された“秘密”を知ってしまうことから、この映画は始まります。

 

IMG_7538

▲息子のテンションが上がるのは、動物園。うん、やっぱり、僕に似ている。

もし息子が、“自分の息子”じゃなかったら

 

息子が間も無く小学生になろうという頃のこと。突然知らされたのは、息子が自分たちと血が繋がっていないという残酷な事実です。しかも、子どもはすでに6歳。実の息子に会いたい、育てたい。でも、目の前にいる子どもは、自分の息子だと思って愛情たっぷりに6年も育ててきた“息子”に変わりありません。今さら、手放せない。一方で、実の息子の成長は、すでに6年も見逃している。なんとかして、今から一緒に過ごしていけないのだろうか。2組の夫婦が悩み、葛藤します。

まずは、週末の“交換”からはじめることになります。すると、2組の夫婦間で、教育環境や生活そのものの違いが障壁に。さらには妻と夫の価値観のズレまで浮き彫りになっていきます。同時に、“産みの親”と“育ての親”の間で苦悩する、幼い子どもたち。このままでは、家族がバラバラになってしまう…

 

もう、観ていられない。苦しすぎる。

 

路上の石を片っ端からから持ち帰り、仮面ライダービルドのおもちゃを買えと騒ぎまくる“男の子ど真ん中”の息子よ、いいんだ。そのままでいい。手についたジャムを床で拭いても、朝ごはんを残しても、そんなの大したことじゃない!そう思えてきます。い、いや…ママが大変か。

 

IMG_7539
▲朝からプールへ行きたいという、無言のアピール。ちゃんと朝ごはん、食べてくれよ。
 

「そして父になる」で描かれる
「それでも母でいる」母親たち

 

妊娠中、不安や体調の変化と向き合って10ヶ月間を過ごし、出産と同時に母親になった実感を抱く女性たち。その横で多くの父親は、「妊娠って大変そうだなぁ」とやや他人事のように眺めながら会社の飲み会にも出かけ、お酒の臭いをさせながら帰宅したりします。

すいません、多くの父親とか言いましたが僕の事でした。

お酒を飲まない父親たちよ、巻き込んでごめん。何が言いたいかというと「え? 僕たち夫はいつ“父親”になるの?」って話です。

 

実はこの映画の主人公、福山雅治演じる良多(りょうた)は取り違えが発覚した途端に「自分に似てないと思っていたら、やっぱり息子じゃなかったのか」とドン引きします。6年間も家族として過ごしてきたのに、です。

その気持ちもわかる。って言ったら、怒られそうだけど…、気持ちはわかる気がします。だって、似ていないし、血も繋がっていない…他人だよ!?

でも、妻は言います。注いだ愛情と過ごした時間が大切じゃないの、と。こんな状況でも、母親でいようとするんです。しかし、すかさず良多は反論します。残りの人生の方が長いのだから、早く決断するべきだと。夫婦の終わりなき意見の食い違い。

こうなると、もうどっちに転んでも…間違いなくバッドエンドだ…。「そして父はいなくなった」というタイトルなんじゃないのかコレ?

ママたちには、そう諦めずに観て欲しい。良多が“父になる”瞬間が訪れます。ずっと“母でいる”女性たちから見たら、「遅えよ!」の総ツッコミかも知れませんが、僕は大号泣でした。

 

世界中の新米パパたちよ、早く父になってくれ

 

この映画を見ると、そう全力で思います。

そして世界中の新米ママたちよ。母でいることが面倒くさい瞬間もきっとあると思うんですが、どうか母でいてください! 何卒お願いします、と土下座で祈りを捧げたくなります。

“それでも母でいる”ことを諦めない女性の強さと、そこに追いつけないけど父になろうとする男の頑張りがこの映画には描かれています。

 

ママに捧ぐ映画ではありますが、どうか、夫婦揃ってでも観て欲しい。どうか全国のパパのみなさん、ママと一緒にこの映画を観て欲しい!

少なくとも、明日の朝起きたら、いつもより夫が、妻が、子どもたちが愛おしくなると思います。欲を言えば、普段はポンコツな夫とも、子育てや教育方針についてじっくり話すチャンスにできるもしれません。ぜひ、ご覧いただきたいと思います。

 

[DVD Info]
「そして父になる」DVDスタンダード・エディション

通常-レンタル_0311

監督・脚本・編集:是枝裕和/キャスト:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー/発売元:フジテレビジョン/販売元:アミューズソフト/価格:3800円(税抜) ©️2013「そして父になる」製作委員会

 

<次の作品紹介を読む> 弁当作りのプレッシャー、マジ半端ねぇママに捧ぐ映画『マイ•インターン』

あなたにオススメの記事

ライフスタイルテーマ : 【映画】その他の記事

映画
もっと見る