2018.11.02
“悪質クレーマー”といった言葉が広まり、ここ最近ではクレームを入れた人が逆に非難される事態も目にします。現在のネット社会はクレーム1つとってみてもデリケート。中には自分の入れたクレームに対して、本当に正しい行為だったのかと心配する人も…。
クレームの良し悪しに悩む女性
事の発端は、匿名掲示板に投稿されたクレームに対する相談から。ある女性がコンビニで買い物をした際、彼女が伝えた支払い方法とは違う決済方法で会計をされてしまったそう。その場でミスを指摘したものの、店員さんはやり方が分からなかったのか対応してくれません。
結局彼女は普通に会計を済ませ、後ほどお店の責任者に連絡。決して怒りに身を任せて怒鳴り散らしたりはせず、「こういうことがあって困ったので改善してもらえたら嬉しいです」と優しく要求しました。しかし初めてクレームを入れたこともあり、「やりすぎだったかも?」という反省とともにクレームの良し悪しに関して疑問を感じています。
ネット社会がクレーマーの声を大きくした?
女性の対応には共感する人が多く、「店側の落ち度を教えているだけだから、正しい行動だったと思うよ」「今回のケースは、むしろ店側にとってもありがたいクレームなのでは?」「その場で食い下がっても良かったかもね。明らかに店員の過失だし」といった声が相次いでいました。
するとネット上では、悪質なクレームとそうでないクレームに対して議論が白熱。「些細なことでグチグチと大袈裟に騒ぎ立てるとか、店の落ち度ではないことでイチャモンをつけるなら悪質」「利用者が問題点を指摘して改善されれば、多くの人がより気持ちよくその企業のサービスを利用出来るようになる。結果としてその企業も潤うことになるし、基本的にクレームを入れるのはいいことでしょ」「店側は『クレームを入れて頂きありがとうございます』って姿勢じゃないとダメだよな」など様々な意見が。
SNSの普及により、近頃は利用者がネット上にクレームを拡散するケースも少なくありません。中には「SNSでクレームを拡散すると、伝言ゲームみたいに真実とは違った事実が広まってしまうこともある」と指摘する人も。企業にとって世間のイメージは、業績にも大きく影響してくる要素の1つです。悪質なクレームとはどういうことなのか、一度考えてみるのも良さそうですね。
クレームは企業が成長するチャンス?
「クレームは宝の山」というスローガンを掲げ、利用者の声を何よりも大切にしている企業は数多くあります。企業の新人研修などを請け負うビジネススクールなどでは、「苦情の時こそファン獲得のチャンス」と教えることもあるそう。
ポテトチップスなどで有名な「カルビー」も、“お客様対応”に力を入れて会社を大きく変化させました。『カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み』(日本実業出版社)という書籍まで出版しているカルビーの「お客様相談室」は、クレーム客の95%をファンに変えてしまう特別な部署。“指摘への対応は可能な限りスピーディに”“本音を言わないお客様の真意をつかむ話法”などの技術を使い、会社の成長に大きく貢献しているそうですよ。
たとえサービスに納得がいかなくても、無関心でいる方が楽なもの。クレームによって状況が改善されるなら、お互いにとってメリットは大きいのではないでしょうか。
文/河井奈津