「のびのび育ちました!」と教えてくれた小澤さん

 

—— 子どもの頃のお話を伺います。ご両親の子育て方針で印象に残っているものはありますか?

 

小澤さん 

父の考え方だと思うのですが、子どもというより1人の人間として扱ってくれました。だから、僕自身も子どもだからというスタンスではなかったですね。目線を合わせて意見や主張を聞いてくれました。それが身についているので、僕も今回のように現場などで子どもと接するときには、目線を合わせて話をするようにします。

 

—— では、習い事をするときにも、小澤さんの自主性に任せる感じだったのでしょうか?

 

小澤さん 

音楽家(父は小澤征爾さん)の子どもなので、小さい頃からバイオリンとかピアノとか英才教育を受けているイメージを持たれがちなのですが、一切なかったです。僕は、バスケット一筋だったので。ピアノをやりたいという気持ちになったのは、20歳のときです。ウラディーミル・ホロヴィッツの弾くトロイメライ(作曲:ロベルト・シューマン)を聴いて「ピアノってカッコいい」って思って、1年間、その曲だけを練習ました。弾けるようになったら「やったー!」という達成感でやめちゃいました。

 

—— 小澤さんが興味を持つのを待っていたら、20歳になっていたのですね。

 

小澤さん 

ピアノとかって、3歳からやっても途中でやめちゃう人もいっぱいいますよね。父は音楽が大好きなので、嫌になってほしくないという気持ちがあったのだと思います。押し付けることで、嫌になるくらいなら、やりたいときにやればいい。そういう考えの人なんです。

 

—— お母様もお父様と同じようなスタンスでしたか?

 

小澤さん 

基本的にはそうですね。僕が中学1年生くらいのとき、テスト前になかなか勉強を始めないのを心配して、「もうすぐテストだよ」と毎日言い始めたんです。3、4日続けて言われたので「自分なりにやっているから心配はいらない。そうやって言われるのは嫌なので、もうこれ以上言わないで」と伝えたら、ピタッと何も言わなくなりました。 きちんと話せば、意見は尊重してくれるし、頭ごなしに押し付けてきませんでした。同じ目線で接してくれている感じがしましたね。まあ、「もうすぐテストだよ」が押しつけに感じたくらいですから、何も押しつけられてこなかったのが分かりますよね(笑)。

 

小澤征悦 / 俳優

1974年生まれ。アメリカ合衆国カリフォルニア州出身。近年の主なドラマ出演作は、『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(18/NTV)、「いだてん~東京オリムピック噺~」(19/NHK)、『頭取 野崎修平』(20/WOWOW)など。『パパがも一度恋をした』(20/東海テレビ・CX)では主演を務めた。映画出演作は、『64-ロクヨン-前編/後編』(16)、『海よりもまだ深く』(16)、『引っ越し大名!』(19)、2020年は『弥生、三月-君を愛した30年-』、『一度死んでみた』にも出演。主人公の日本語吹き替え版を務めた『キングスマン:ファースト・エージェント』が2021年2月11日(木・祝)公開予定。

 

取材・文/タナカシノブ