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『ざんねんないきもの事典』監修者の「親子で動物園を100倍楽しむ方法」

ライフスタイル

2018.07.10

2019.11.29

夏休みが近づいてきましたが、お出かけなどの計画はもう立てましたか?「普段は忙しくしているから、夏休みくらいは子どもが喜ぶところに連れて行ってあげたいな」とお考え中のママも多いと思いますが、それならこの夏は動物園へ!これまで「なんとなく動物を見て回っただけで楽しめなかった」という人も、きっと楽しめる動物園の歩き方をご紹介します。

 

お話をうかがったのは、今、小学生を中心に話題になっている『ざんねんないきもの事典』の監修をした今泉忠明先生です。この本は動物のちょっとざんねんなところをイラスト付きで楽しくわかりやすく紹介したもので、現在第3弾まで出るほど人気なのです。

 

先生のお話の中には「動物ってこんな観点で見たら面白いんだ!」というポイントが盛りだくさん。さらに動物園で見ることができる肉食系、草食系、雑食系それぞれの動物の観察ポイントもイラスト付きでご紹介します。この記事を読みながら、「夏休みはこの動物のこんなところを見に行こうか」など、お子さんと一緒に話せば盛り上がれること確実です!

 

  

今泉先生が語る
親子で動物園を100倍楽しむ方法


夏休みは動物園に出かける家族が多いと思いますが、子どもだけでなく、大人も一緒に楽しむコツってあるんですか?

 

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今泉先生:

夏休みは混みますよ〜(笑)。暑い中で全部見ようとするとクタクタになっちゃうから、まずは入り口にある案内図を確認しましょう。早く回ろうとみなさん素通りしちゃうんですが、まずはここで観察する動物を絞りましょう。事前に勉強していけば、子どもにいろいろ話してあげられるでしょ?

 

それから、動物園に行くなら、早い時間がおすすめです。暑いからというのもあるけど、動物は朝起きて寝部屋から出てきたばかりのときにすごく動くから。まずはそれを見たらいいと思います。

 

動物は寝部屋から出ると自分のニオイがちゃんとそこにあるか、危険なものがいないか、必ずチェックします。それでひと通りチェックが終わると自分の好きな場所に行って座ったりして休んじゃう。みなさんはその時間に行くから「動物がずーっと動かなくてつまらない」ってなっちゃうんです。あとは夕方も動きますね。動物にはそういうリズムがあるので、それを頭に入れて回るといいですね。

 

スマトラトラ 歩き[2015-10-21 横浜ズーラシア] (4)

▲よこはま動物園ズーラシアのスマトラトラ(写真提供:今泉忠明先生)

 

マーキングなど、動物特有の行動を見よう

 

時間帯だったんですね!これまで動物園の動物は動かないものだと思ってました(笑)。まずは早起きを頑張らないとですね。ちなみに、動いている動物はどこに注目したらいいんでしょうか?

今泉先生:

動物特有の行動を見るといいですね。例えば尿などでしるしをつけるマーキング。食肉類は寝部屋から出てきたらすぐにマーキングします。ネコ科やジャイアントパンダもしますね。マーキングの仕方も動物によって異なりますから、「マーキングするかな」「どこでするかな」「何周してきてからするのかな」という具合に見るんです。

 

パンダは逆立ちして高いところにニオイをつけようとします。そうすると自分の情報がより遠くに飛ぶ。知恵だよね。それによってお嫁さんが来るんです。マーキングの目的はだいたいが異性探しです。オスもメスも両方マーキングしますが、頻度が高いのはオス。オスは他のオスのニオイを嗅いでこれ以上行ったらまずいかなというのも判断します。強い奴は行くけど弱い奴は引き返すんです。

 

アジアゾウ 側対歩[2015-10-21 横浜ズーラシア] (4)

▲よこはま動物園ズーラシアのアジアゾウ(写真提供:今泉忠明先生)

 

歩き方を見るのも面白いですよ。

例えばキリンは“側対歩(そくたいほ)”といって片側の足2本をほぼ同時に動かすんです。右側2本を前に出したら左側の2本を出すという具合。後ろ足がちょっとは遅れるけどね。そういう歩き方をする動物は他にもいるんですよ。それを探してみる。

ゾウやラクダも側対歩です。だから歩いているときキリンは首が揺れるし、ゾウやラクダに乗ると慣れている人でないと「揺れるから疲れる」って言いますよね。馬は訓練で側対歩っていうのはあるけど、もともとはそうではない。それを「なんでだろう」って考えると楽しいと思います。

 

ちなみになぜキリンやゾウは側対歩するか。それは「足が長いから」なんですよ。前後の足を同時に出さないと後ろ足が前足を蹴っ飛ばしちゃって怪我しちゃうんです(笑)。

 

歩いている動物が多い時は歩き方を見る。じっとしているときは他を見に行く。臨機応変に見ないと何も見られなくなったりしますから。

 

ジーッとしている時間帯は草食動物の反芻が見所

 

そういう知識を知っていると、動物園で子どもにも語れますね。ちなみに、もしどの動物もジーッとしている時間帯には、どんなところを見たらいいですか?

 

今泉先生:

草食動物が反芻(はんすう)するところを見るといいですね。ウシ、シカ、キリン、ラクダなどの草食動物は胃袋が4つに分かれていて、朝急いで一番目の胃袋に餌を入れるんです。そのあとは日陰など涼しいところに行って2番目の胃袋から返すんですよ。2番目の胃袋にはバクテリアがいっぱいいて、そのバクテリアをくっつけるんですよね。それで口に戻して唾液と混ぜる。口の中は37度くらいあってあったかいでしょ?そうするとバクテリアが一気に増えるんです。それを飲むと今度は3番目の胃袋に入る。ちゃんと溝があって、そういう風にできているんです。

 

研究によると草食動物の方が肉食動物よりも味蕾(みらい:舌の粘膜の乳頭にある味覚器)の数が10倍くらい多いんです。「牛はどうしてこんなに味蕾がいっぱいあるんだろう」って不思議なんだけど、草を味わってるんじゃないかな。肉食動物は酸っぱさと甘さくらいしかわからないし、甘さもアミノ酸の甘さはわかるけど砂糖の甘さはわかんないだろうといわれています。犬にステーキをあげてもぺろっとひと口で食べちゃって、「もっと味わえよ」ってなるでしょ?要するに腐ってなければOKなんです。

 

食べる インドサイ

▲東山動物園のインドサイ(写真提供:今泉忠明先生)

 

あとはサイとか音に敏感な動物は、じっとしていてもしょっちゅうラッパみたいな耳を動かしてますね。そういう警戒心が強い動物と、全然気にしないのがいるから、そういうのを見くらべてもいいと思います。

 

神経質な動物というのは大きさじゃないんです。サイとかカバなんてデカイくせに敏感。神経質な動物には食われる可能性の高い弱い動物、草食動物が多いんです。ちなみにライオンもしょっちゅう耳を動かしてるけど、あれは「入ってきたら食ってやろう」ってうかがってるの(笑)。

 

サイやカバは強そうに見えるのに敏感って…(笑)。知れば知るほど早く動物園に行って実物を見たくなりますね。

 

餌の食べ方にも個性が出る

 

動物園では餌を食べているところも時間によっては見れますよね。

 

今泉先生:

餌をあげる時間がそれぞれ決まっているので、それをチェックしてから回るといいですね。そのときは何を食べているのかを見て欲しいです。例えばゴリラは野生だとセロリとかタケノコなどの繊維質が好きだけど、動物園ではいろいろな食べ物をあげてる。ヨーグルトにオレンジ、バナナ…すごい豪華なんですよ。「野生はこうだけど動物園ではこうだよ」って比較して見ると面白い。

 

食べ方にもそれぞれ個性があって、中には親父みたいに寝っ転がって食べるやつもいる。みかんやバナナの皮を片手でぷるっと剥いて食べる。それで皮はぽいっと捨てる。しばらくして食べるものがなくなると結局皮も拾って食べるんですよ。最初は中身がおいしいって知ってるんですよね。あれはおかしい(笑)。

 

ジャイアントパンダ竹を交互に咬み食べる[2012-02-19 上野動物園] (3)

▲上野動物園のジャイアントパンダ(写真提供:今泉忠明先生)

 

パンダが笹を食べていたら、「もともとは何を食べていたんだろう」って考えてみることも大事。というのも、実はパンダは大の肉好きなんです。でも自力では捕まえられないから、笹しか食べられない。動物園では馬肉入りのスープみたいなのものもあげていると思いますけど。パンダが竹に適応したという意味ではこれも進化。でも狩りができないから仕方なく笹を食べてるってことは、トータルで考えるとマイナスでしょうね(笑)。

 

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パンダのまさに“ざんねんな進化”ですね。親父みたいなゴリラも面白いですね。そんな面白いところが子どもに人気の理由なんでしょうね。

 

今泉先生:

人間の祖先というかルーツを見ているような感じがして面白いんでしょうね。ゴリラって鼻くそほじって食べたりするから、大人のくせに赤ん坊みたいなことやってるよねって。そういうの見ると子どもは喜ぶんですよ(笑)。子どもなりに自分の方が優れていると優越感を感じるんでしょうね。

 

2018-03-17 富士山・狐塚調査[自然史研究会]

▲富士山の狐塚を調査する今泉先生(写真提供:今泉忠明先生)

 

話題の「環境エンリッチメント」にも注目!

 

最近は「環境エンリッチメント」といって、動物も暇だろうから何か暇つぶしになることをさせようと各動物園でいろいろな工夫をしているので、そういうのを見るのもいいと思います。

 

例えばチンパンジーの場合、コインを入れないとジュースが出てこないようにしておくとかね。頭がいいからコインを入れてちゃんと飲んでる。多摩動物公園では“空中モグラ”が見れます。普通は土の中に住んでトンネルを掘ってるけど、そのトンネルを網やアクリルで作って空中を這わせるんです。するとそこをモグラが歩くんですよ。面白いですよ。

 

イリオモテヤマネコ 樹枝上[1978 ]

▲イリオモテヤマネコ(写真提供:今泉忠明先生)

 

これから自由研究などするとき、自分が動物園の飼育員だったらこういう動物はこうやった方が面白いかもしれないって考えてみるのもいいです。

 

僕は大学卒業の年にイリオモテヤマネコを飼ったんですけど、運動不足になるからハムスターと同じように輪っかを入れてあげようと、木のタライの中心に穴を開けて大きい回し車を作って入れたんです。そしたら中心がちょっとずれててゴットンゴットンってなってたけど、回してましたよ(笑)。いつかゾウでもやってみたいなって。動物園のゾウは毎日暇で困ってる(笑)。かわいそうだよね。せっかく飼ってるんだから僕らは勉強しないといけないんですよ。

 

ゾウの回し車なんて想像しただけでも面白そうですね!

 

今泉先生:

1個の知識を関連づけて発展させることができるっていうことですよね。動物のことも、まずは知ってる動物、メジャーな動物から見て、だんだんと知らない動物まで広げていけば自然と覚えられます。

 

それと、本で読んだ知識と本物を見て合わせるっていうことが大事なんです。実際は書いてあることと随分違うなっていうこともいろいろあるわけで、それを知ることが大事。そうすると、物事を考えるときに幅ができますよね。1つのことだけ正しいと思っちゃうと世の中に出たときに痛い目に合うんですよね。

 

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なるほど〜。動物園で実際に動物を見ることは子どもの教育にも役立つんですね!

 

今泉先生:

そうそう。あと親は動物の子育てを見るとすごい理屈に合っているから勉強になりますよ。チンパンジーとかゴリラの赤ちゃんはお尻に白い毛がチャッと生えているんだけど、それは赤ちゃん印で、その白い毛がある間はどんなことをしても親は叱らない。赤ちゃんのときは愛情だけで育てるんです。でもそれが消えるとものすごいんですよ(笑)。いたずらなんかするとバシンって叩くし、噛んだりもする。子どものときからきちんと躾けるんです。人間も同じですよね。

 

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動物園は子どもも大人も勉強になるし、親子で楽しめるからいいと思います。親も事前に勉強していけば、子どもにいろいろ話してあげられるでしょ?この本を見ておくだけでもだいたいのポイントはわかりますよ。

 

今泉先生、ありがとうございました!次回からは「草食」「肉食」「雑食」といったカテゴリーごとに、動物のざんねんな見所を詳しくご紹介していきます!

 

 

PROFILE 今泉 忠明(いまいずみ ただあき)


1944年東京都生まれ。日本動物科学研究所・所長。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。文部省(現・文部科学省)の国際生物学事業計画(IBP)調査、環境庁(現・環境省)のイリオモテヤマネコの生態調査などに参加する。上野動物園の動物解説員、「ねこの博物館」館長などを経て現職。書籍『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(高橋書店)シリーズ監修。

取材・文/田川志乃 撮影(人物)/粕谷麻衣子 トップ画イラスト/クリハラタカシ トップ画デザイン/山本めぐみ

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