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本物のアートで得る「自分だけの評価と感想」【アートナビゲーターに聞く】

ライフスタイル

2019.09.15

2019.12.01

子どもにはさまざまな経験を通して、感性豊かに育ってもらいたいもの。幼少期からアートに触れることも、良い刺激につながると思いつつ「美術館は静かに過ごすところ」という先入観が働き、子ども連れで行くことを躊躇してしまいます。

 

さらには「子どもに絵を見せて楽しんでくれるのか?」「飽きてしまって途中で騒いでしまったらどうしよう」と不安は尽きません。 

 

今回は、9歳のお子さんと一緒に美術館めぐりを楽しんでいる、アートナビゲーターの工藤美保さんに、子どもと一緒に美術鑑賞を楽しむためのポイントや、アートに触れることで子どもにどんな変化があるのか、美術館デビューにオススメのアートスポットについて伺いました。

 

PROFILE 工藤美保さん

海外の大型美術館を特集したNHKのTV番組をきっかけに、小学生の頃から美術に興味を持ち、美術館めぐりがライフワークに。2008年に「美術検定」1級を取得。翌年に長女を出産し、以降、お子さんと一緒に美術鑑賞を楽しんでいる。アートナビゲーターとして美術検定公式サイトにてコラム「子連れで楽しむ美術館」の連載を持つ。

美術検定公式HP:http://www.bijutsukentei.jp/

 

 

「アートナビゲーター」の活動内容とは?


ー美術と鑑賞者をつなぐ担い手としてー


アートナビゲーターの工藤さんが美術に興味を持ったのは、小学生高学年の頃。テレビで放送されていたルーブル美術館の特集がきっかけだったそう。その後、シーズンによっては毎週のように各地の美術館に足を運び、これまで訪れた美術展の数は約300と、美術館めぐりがライフワークになっています。

 

2008年、美術に関しての高い知識と教養を必要とする『美術検定1級』を受検し、合格。同時に「アートナビゲーター」の肩書きを取得しました。

 

 「アートナビゲーターとしての活動は人それぞれ。美術館のガイドスタッフとして働く人もいれば、他に本業を持っていて、ボランティアでアートイベントを企画したり、ワークショップの手伝いをしたり…さまざまな角度から“美術と鑑賞者をつなぐ活動”をしています」

 

そう話す工藤さんは、本業の傍ら、美術検定の公式ホームページで「子連れで楽しむ美術館」のコラムを連載中。

 

2009年に長女を出産した工藤さん。育児中は美術館から足が遠のくかと思いきや、0歳の娘さんを抱っこして三菱一号館美術館で初めての「子連れ美術館デビュー」を果たしました。以降、お子さんの成長とともに、「一緒にアートを楽しむ」ことを休日レジャーの一つにしているそう。

 

「私が子どもと一緒に美術館めぐりを始めたのは、単純に『育児中でも自分が美術館に行きたかった』という理由でした。最初の頃は、私が行きたい展覧会に連れて行きましたが、娘が成長するに連れて、時折『つまらない、退屈だ』という主張をするようになってきたため、以降は『子どもも楽しめるアートスポット』に行き先を変えました」 

 

工藤さんはお子さんが2歳になった頃から、「美術館選びの視点を変えた」と話します。では、子どもも楽しめる美術展の選び方、過ごし方で意識すべきところはどんな点でしょうか?

 

子連れでの美術鑑賞のポイント

―無理強いしないこと、「楽しい」思い出につなげること―

「美術館での子どもの集中力は30分程度。子どもが興味を持った作品を自由に観させて、飽きてきたらミュージアムショップや、近くの公園などで息抜きをするようにしています」 

 

大切なのは「無理強いをしないこと、子どもに任せること」だと工藤さんは言います。「今週末、美術館に行こうか」と、子どもにチラシやネットで美術展の広告を見せた時、子どもが興味を示すかどうかで行き先が決まるそう。

 

サントリー美術館のカラフルで大きなパネルに釘付け!

 

「子どもは“大きいもの、動くもの、カラフルなもの”が大好き。チームラボのような現代アートは、子どもも楽しみながらアートに触れることができるのではないでしょうか。また、夏休みなどの長期休暇の時期になると、子ども向けの展覧会があちこちで企画されるので、要チェックです」

 

見るだけでなく、触って遊べるなどの体験型の展覧会はお子さんも大喜びだったと話します。徳島県の大塚美術館や金沢21世紀美術館では、子ども向けのアート企画も多く、親子ともに楽しめたそうです。

 

国立新美術館のワークショップでお面を作成

 

最近では子ども向けの美術ツールが充実しているところも多く、東京都美術館では『とびらボード』という磁気式のお絵かきボードの無料貸し出しや、森美術館では未就学児向けのガイドツアーを開催しているそう。 

 

「子どもが楽しめるツールや企画があるか、近くに公園などの息抜きができる場所があるかなどは、事前にリサーチしておくといいです。

 

小さなお子さんにとってどんなアートが『好き!楽しい!』と思えるかは個人差があります。実際に行ってみて、自分が好きだと思えない作品だったとき、『面白くないな』という気持ちになるのも当然。大切なのはその気持ちを引きずらず、その後公園で遊んでもいいし、美味しいケーキを食べてもいい。どんな形でも最後に楽しかった!という流れを作ってあげることだと思います」

 

子連れで行く展覧会について、親がそこまで作品や作家に対して予備知識を入れておく必要はない、と工藤さん。「知識よりも一緒に楽しむための興味や好奇心は親にも必要です」と話します。

 

「子どもは親のことを本当によく見ているので、親がつまらなさそうにしているものには子どもはまず興味を持ちません。もちろん赤ちゃんも同じです。作品や作家に対する知識は子どもが興味を持った時に、リードしてあげられる程度で十分です」

 

アートに触れることで育まれる感性と親子の対話

―自分だけの評価と感想を持つ―

 

東京都庭園美術館の「ウェルカムルーム」でお絵描き中

 

工藤さんは普段の美術館鑑賞では、受けた印象をよりクリアにイメージさせるため、「何が描いてあるかな?」「これは何色だろう?」「何をしているんだろう?」など、子どもに語りかけ、「すごいねー」と子どもが言ったときは、「何がすごいと思う?」と具体的に聞くようにしているそうです。一つの作品を親子の視点で見ることで、作品についての感想や印象などの対話も重ねられる、と工藤さん。

 

思い出深いエピソードとして話してくれたのが、お子さんが小学校入学前、東京国立近代美術館のワークショップに参加しているときのこと。高村光太郎の「手」の彫刻作品について学芸員が「何をしているところだと思う?」という質問に対して、お子さんが「おにぎりを握っているところ!」と答えたそう。

 

大人から見たらとても発想できないその豊かな想像力に、「驚かされ、違う世界に連れて行かれたかのような気分になりました」と工藤さん。

 

「子どもは大人が気づかないような細部までよく見ているし、素直に感じています。以前、ムンク展に行ったときにも、『ウェブで見たものより色が暗くないね』とモニター越しと本物の色味の違いに気づいたり、『広告よりも大きいね』とチラシで見たときの想像と、実物の大きさとのギャップや迫力に驚いたりしていました」

 

森アーツセンターギャラリー「THE ドラえもん展 TOKYO2017」

 

画集やネットで作品を見る場合、それを撮影した人によって色合いや質感が変わり、なんらかのバイアスやフィルターが入ってしまうことも。しかし「本物を見る」場合は、そうした一切の介入なしに作品と向き合うことができ、完全に自分だけの感覚で評価と感想を得ることができる、と本物のアートに触れることの意義について話してくれました。

 

「ある人のことを、人づてに評判を聞いて評価するのと、face-to-faceで会ってみて印象が違った、という経験に近いのかもしれませんね」

 

現在工藤さんのお子さんは9歳。工藤さん自身が美術に興味を持った年齢に近づきつつあります。

 

「美術鑑賞を通して、趣味としてアートを楽しむのもよし、仕事につなげるのもよし。選択するための一つの材料になってくれればと思っています」と笑顔で話してくれました。        

 

取材・文/佐藤有香

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