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パークレンジャーに聞く!自然の中で子どもが得る「失敗を経て知る命の大切さ」

ライフスタイル

2019.08.04

2019.12.01

私が育った茨城県の筑西市という町は、水田が広がる静かな田舎町でした。子どもの頃は、春にレンゲソウで花かんむりを作ったり、ヨモギを摘んで草もちを作ったり、夏には父と虫捕りをして遊んだことを今でも覚えています。

 

草花や昆虫を観察し、泥に触れる。木の葉を揺らす心地よい風を肌で感じながら自然の中で過ごした時間は、大切な学びの時間でもあったと、大人になった今しみじみと感じています。

 

自分の子どもにも自然に触れてほしいと思う一方で、いざ野や山で遊ばせるとなると、途端に親目線になって「どんな遊び方をさせたら子どもは楽しめる?」「山や林の中で遊ばせて安全面は大丈夫?」と疑問や不安を抱いてしまいます。

 

今回は東京都武蔵村山市にある「都立野山北・六道山公園」で、身近な自然の素晴らしさを伝えるパークレンジャーとして働く丹星河さんに自然の中での楽しみ方や注意点についてお話を伺いました。

 

PROFILE 丹星河さん

特定非営利活動法人NPO birth レンジャー・環境育部統括主任/都立野山北・六道山公園副所長。パークレンジャーとして、身近な自然の素晴らしさを伝える環境教育プログラムを多数実施。紙芝居を使っての自然解説を得意技とする。パンフレットの挿絵や絵図など、イラストレーターとしても実績を積み、絵を通して人と自然と社会を伝える活動を行っている。

 

「パークレンジャー」の仕事とは?


―身近な自然の豊かさを伝え、未来に繋げるー

パークレンジャーの丹星河さん

 

東京都と埼玉県の境に広がる狭山丘陵の西端に位置する、都立野山北・六道山公園。ここには人の手が入ることによって守られてきた、美しい里山の景観が広がり、四季折々の自然の移ろいを見ることができます。

 

緑豊かなこの場所でパークレジャーとして13年間務める丹星河さん。仕事内容は、公園関係団体との調整や、ボランティア活動のサポート、来園者に園内を紹介するガイドウォーク、環境教育プログラムの実施など多岐にわたります。

 

芸術系の大学で日本画を専攻していた丹さん。卒業後も絵の道に進むことを考えていたそうですが、子どもの頃、遊び場だった田んぼや原っぱが住宅地などに姿を変えていくのを目の当たりにし、「絵を描きながら、自然を守る仕事ができないか」と思うようになったと話します。

 

里山の自然をテーマにした紙芝居

 

「この仕事に就いてから『里山』や『自然』をテーマにした紙芝居を作ったり、乳幼児向けのイラスト入りテキストなどを作成してきました。絵を通して自然環境の大切さを伝える活動も行っています」と、持ち前の画力を活かし、パークレンジャーとしての仕事の幅を広げています。

 

丹さんが描いた「里山絵図」

 

そんな丹さんが描いた「里山絵図」には、公園づくりに関わる人や地域の人たちの「こんな公園にしたい」という夢が描かれています。

 

高校生に雑木林について説明する公園ボランティア。人を繋ぐことも仕事

 

「私たちパークレンジャーの仕事は、単に生き物を紹介するのではなく、身近な自然の豊かさを知り、触れてもらうことで『自然を大切にしたい』と思ってもらうこと。人の価値観を変えることで、自然を守り、未来に残すことができると考えています」

初夏には茶摘みや田植え、夏の夜の昆虫探し、秋の落ち葉かき、冬の野鳥観察など、一年を通して、里山の自然に触れることのできるさまざまなイベントを行います。

 

自然の中で子どもが得る学び


―失敗を経て知る「命の大切さ」と「生き物への思いやり」―

「観察するときは優しく触ってね」

 

都立野山北・六道山公園では、自然散策や虫捕りなど、「5歳〜小学校低学年」、「小学校中学年以上」の年齢別の自然プログラムを定期的に開催しています。

 

「中には、『虫を捕まえたことがない』という子もいました。初めは力加減がわからず、虫を捕まえる際に潰してしまうこともありましたが、他の子の様子を見るうちに、上手に捕まえられるようになりましたよ」と丹さん。

 

虫を潰してしまって「なぜ?」と疑問に思うこと、摘んだ草花が手の中で次第にしおれていくのを見て「せっかくきれいに咲いていたのに」と悲しい気持ちを持つこと、そして「どうしたら元気になる?」と考えるなど、自然の中では「命」を認識する瞬間が多々あり、同時に生き物への思いやりを学ぶことにもつながると話します。

 

ガイドウォークの様子

 

「自分が虫や植物に詳しくないので、子どもに『これなに?』と聞かれても答えられない、と不安に思う保護者の方もいます。でも詳しくなる必要はなくて、むしろ一緒に昆虫や草花を探して、観察してみるという時間の共有が大切だと思っています。特徴をじっくり観察して、帰宅後に図鑑で調べてもいいですよね」

 

ススキの葉は固く鋭いから切れやすい、トゲのある木や植物もある、自然の中の道は凹凸があって歩きにくいなど、自然の中では時には怪我をすることもあります。しかし子どもたちは、その経験を経て「何に気をつけたら良いのか」を知ることができ、外の世界に必要以上に怖がらなくなっていくようだと、丹さんは感じているそうです。

 

「大人からの注意喚起も必要ですが、子どもの好奇心に任せて見守ってあげることも大切ですね」

 

秋の落ち葉かき。ふかふかの落ち葉を集めて腐葉土作り

 

5歳のお子さんの母でもある丹さん。子どもと外で遊ぶ時は着替えを持っていき「好きなだけ汚していいよ」と促すと、泥の中に体を滑り込ませて文字通り泥だらけになって遊ぶそうです。

 

触れて初めて知る、土の匂いや温度。家や学校では得難い学びの瞬間です。自然の中での遊びは子どもたちの感性を豊かにし、自発的に行動する力も培われていくのでしょう。

 

子どもの体調や天気の変化、熱中症や日射病に気をつけて、一緒に外遊びを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

都立野山北・六道山公園の歩き方


―自然散策には虫捕り網と虫めがね持参で!―

田植え直後の水田にはたくさんの生き物が!

 

260ヘクタール、東京ドームの約56倍の面積を有する都立野山北・六道山公園。今回は丹さん案内の下、里山民家のそばに広がる、水田と里山エリアを散策しました。

 

取材に訪れたのは、6月頭の梅雨入り前。田植えが終わったばかりの田んぼには小さなドジョウやアカガエルのオタマジャクシたち、ビオトープエリアで一休みしていた黒と青の色合いがおしゃれなハラビロトンボ、草むらからひょっこり顔を出した子どものカナヘビ、甘酸っぱくてみずみずしいウグイスカズラやモミジイチゴの実……たくさんの虫や珍しい草花と出会えました。

 

アカガエルのオタマジャクシ

 

青い尻尾が特徴的なハラビロトンボ

 

甘酸っぱいウグイスカズラの実

 

次から次へと爪先ほどの小さな虫や珍しい木の実を見つけていく丹さんに、自然観察のコツを教わりました。

 

「石や木片を持ち上げてみたり、田んぼや小川の泥の中で動くものがいないか目をこらしたり……木の葉の裏側もじっくり観察してみてください。樹液がしみ出ているところや花が咲いているあたりも虫や蝶が集まるポイントです」

 

子どもは大人よりも視点が低い分、足元の茂みで動く昆虫や、葉の裏にぶら下がっているさなぎなどを上手に見つけられるそうです。

 

 

樹液に集まる蝶や虫。時にはカブトムシも……!?

 

葉の上に若いヤブキリを発見!

 

エゴノツルクビオトシブミの揺らん。巻いた葉の中に卵が産みつけられている

 

最後に見つけたのは、大きな葉の上にポツリと一つ産み付けられたジャコウアゲハの卵。漆黒の大きな羽が美しいジャコウアゲハですが、卵はなんとオレンジ色のしま模様。

 

自然の美しさとは、山や田畑などの遠景だけでなく、間近で感じる生命の息づかいの中でも観ることができると気づかされました。

 

 

ジャコウアゲハの卵は美しいオレンジ色

 

「虫捕り網や虫めがねがあれば、見つけた生き物をじっくり観察することができます。生き物を捕まえる時は優しい力加減で。都立公園では動植物の採取はできないので、捕まえた虫は観察した後は逃がしてあげてくださいね」

 

 

 

虫めがねと虫捕り網はあると便利!

 

公園によって、草花の摘み取りや捕まえた虫を持ち帰るのを禁止しているなどルールがあるため、事前にホームページなどで確認してから出かけましょう。夏場であっても木の葉で腕や足を傷つけやすいので、長袖長ズボン着用での散策がオススメです。

 

散策の後は里山民家の縁側でひと休み……

 

コマやけん玉などの昔ながらのおもちゃも!

 

■公園情報

【都立野山北・六道山公園】

住所(インフォメーションセンター):東京都武蔵村山市三ツ木4-2

TEL:042-531-23258:3017:30

アクセス:

・インフォメーションセンター/JR「箱根ヶ崎駅」または「立川駅」よりバス乗車。バス停「峰」下車後、徒歩10

・里山民家(里山体験エリア)/JR「箱根ヶ崎駅」または「立川駅」よりバス乗車。バス停「岸」より徒歩10

駐車場:あり

HP:https://www.sayamaparks.com/noyama/

※キッズプログラムや自然観察会などのイベント情報はHPをご確認ください

 

取材・文/佐藤有香

 

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