2019.03.14
働くママたちにお話を聞いていると、「自分の年収が旦那さんより多い」なんて話も聞くようになりました。でも結婚前からそうなのではなく、途中から〝下克上〟した場合は、「お互い複雑な感情がある」そうで…夫のプライドと妻の気遣いが交錯する、共働き家庭の物語です。
飯食えるのは誰のおかげ…って?(加奈さん/35歳/社会福祉士)
「誰のおかげで飯が食えてると思っているんだ!」
喧嘩のたびにそう言う旦那に腹が立っていましたが、旦那の年収のほうが高いことは事実。仕方ないと諦めていた私に、転機が訪れたのは去年の春のことです。
勤めていた介護施設で人事異動と退職が重なり、上司の推薦で副施設長就任が決まりました。責任は大きくなるとはいえ、いまと同じ勤務時間で昇給+役職手当が加算されるんです。
私にとっては願ってもない話。そして提示された年収を見たとき、真っ先に頭に浮かんだのは「旦那の顔」でした。そう、その金額は、旦那の年収をゆうに超えていたんです。
旦那に目にもの見せてやるチャンスが、ついに到来しました! その日、スーパーで総菜を買って帰った私は、リビングでくつろぎながら旦那の帰りを待ちました。帰宅した旦那がテーブルの上にある総菜を見て「手抜きするなよ! 誰のおかげ…」といつものセリフを言いかけたそのとき…あの年収が書かれた紙を差し出したんです。
それを見てすべてを悟ったのか、旦那は急におとなしくなり(笑)。それから彼が私に偉そうなことを言うことはなくなりました。最初は気まずそうな雰囲気を出してはいましたが、いまではお互い協力して育児と家事に取り組んでいますよ!
自信をなくしていて心配です(美穂さん/32歳/営業事務)
私の場合は自分の年収が上がったのではなく、旦那の年収が下がってしまったんです。人材会社で営業をしている旦那の年収は、前年の実績ベースで変動する年俸型。ここ2年ほど成績が低迷し、ついに昨年、私の年収を下回ってしまったんです。
落ち込んで帰ってきた彼の年俸を聞いたとき、自分の年収より低いことに気づきました。家計は私が握っているため、旦那は私の正確な年収を知りませんが、どうも薄々感づいている様子。目が泳いで、気まずそうにしています。
そんな旦那を励まそうと「そんなときもある! 気にすんな!」と勇気づけましたが、効果はなかったようで…それからというもの、何をするにも下手に出るようになってしまいました。
なにか小さな買い物をするときも、つどつど私に伺いを立てるし、いままで一切やらなかった家事もやるように。私からしたらありがたいことなのですが、彼の自尊心が傷ついてしまったことと、ストレスを溜めているのではないかということが心配です。
「言わない」ことにしました(綾さん/36歳/編集者)
私は雑誌の編集者をしています。子育てと両立しながらコツコツ働いてきた功績が認められ、いまでは部下10人を束ねる立場になりました。責任は増えましたが、そのぶん収入も大幅アップ。働くうえで、大きなモチベーションになっています。
そんなある日、何気なく眺めた旦那の給与明細で私はある事実に気づきました。「あれ…? もしかして私、旦那の年収を超えた!?」。
実績主義の私の職場とは違い、旦那の会社は年功序列が色濃く残る老舗。社内ではまだまだ若手に属する旦那の給料は、ここ数年ほぼ横ばい状態。それを一気に超えてしまったことを、話すかどうかでひどく悩みました。
なぜなら彼は〝古風な日本男児〟を絵にかいたような人で、「一家の大黒柱は男だ」といまだに信じているんです。そんな旦那がこの事実を知ったら、落ち込むどころじゃすみません…それから数日は顔を見るのも怖い日々が続きました。
結局、私が出した結論は「言わない」。どうせ財布は私が握っているんです「黙っていれば、ばれないか!」と…時間の問題ですかね。
そもそも年収で夫婦の上下関係が決まるようなものではありませんが、〝男のプライド〟にこだわる夫だと厄介ですよね。共働きの場合は特に、何ごとにも「夫婦で共に家庭を営んでいる」という意識を共有するのが大事なように思います。
ライター:葛西 明
人材派遣及び、人材紹介を行う会社に勤めるサラリーマン。求人募集の文章を書くのが楽しいと感じて以来、ライターとしても活動中。家事が苦手な妻と結婚後、気付けば兼業主夫になっていることが悩み。