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「買ったものを粗末にするな」と責める夫の気持ちがわかった瞬間

コミュニケーション

2021.06.27

夫婦がお互い、感謝の気持ちをもつように

夫から「誰のおかげで生活できるんだよ」と言われれば、妻はムッとするものです。お金を稼ぐ一方で、家庭を維持する家事・育児などをある程度、分担しなければいけません。「誰のおかげで心おきなく仕事ができるの!」と返したくもなりますよね。ただ、お互いに立場が変われば、相手への思いやりも生まれる可能性があります。 

ペットボトルの「飲み残し」を怒る夫に舌打ち

結婚前、夫はデートのたびにごちそうしたりプレゼントをくれたりしたのに、結婚後は記念日以外、何もなし。子どもが生まれてからは2人で出かけることもほとんどない。そんな不満を持っている女性は多いかもしれません。結婚して15年たつマユミさん(44歳・仮名=以下同)もそのひとり。

 

2歳年上の夫とは社内恋愛。サービス業で私は事務方、彼は現場なので忙しいのはよくわかっていました。私自身、ずっと働いていたかったけれど、さすがに年子を共働きしながらのワンオペ状態で育てていくのは大変で。とはいえ、夫はシフト制の上、責任ある立場で安定的に家事育児への協力は頼めない。そこで私が退職したんです」

 

専業主婦になってみて、家計のやりくりは大変だと痛感したそうですが、子どもがいるのでついつい、いろいろなことがアバウトになってしまうこともありました。

 

「たとえば料理をしようと材料を切ったものの、2人の子がワンワン泣き出して、結局、作れなかったことも。夫には冷凍食品でしのいでもらいましたが、切った材料は翌日も使えず、捨ててしまったり。食べ残しをうっかり冷蔵庫に入れ忘れて、翌日、異臭がしてムダにしたり。ある日、夫にそういう状況を見られて、『お金を出して買ったものを粗末にするなよ』と。ペットボトルの飲み物を買いすぎだと叱られたこともあります。ケチくさいなと内心、舌打ちしていました」

 

夫からは子どもたちに「ものの大切さを教える立場である母親が、ムダなことばかりしていてはいけない」と、たびたび言われていました。それでも、マユミさんの大雑把な性格もあって、やはりついペットボトルの飲料を飲み残すこともありました。 

野菜を残そうとする息子を見て、夫の気持ちがわかった

この春、下の子が中学生になったのをきっかけに、マユミさんは15年ぶりに働き始めました。パートとはいえ、ほぼフルタイムです。

 

「仕事に就くのが難しい今の時代、独身時代の知人が話をもってきてくれたんです。家から自転車で通える距離だったし、すぐに面接に行き、雇ってもらうことができました。子どもたちにはこれから学費もかかるのでありがたかったです」

 

夫や子どもたちにも頼んで、自分の立場でできることをやってくれることになりました。

 

15年ぶりに給料をもらったとき、感慨深いものがありました。同時に、このお金を大事にしなくては、と。私の血と汗と涙の結晶ですから!(笑)。その日はふだんよりちょっといいお肉を買って、家族に感謝しました。夫からは『お疲れさま』と声をかけられて。そのとき、下の子が野菜を残そうとしたんですよ。全部食べなさいと言ってから、前も同じように言っていたけど、気持ちが違うと気づきました。自分で働いて得たお金も家計に入っている意識が生まれたんですね」

 

夫の気持ちがわかった瞬間でした。「稼いでいるのだから」という上から目線の気持ちではなく、一生懸命働いて得たお金で買ったものを家族がムダにしていたら悲しく思うのは当然だ、とマユミさんは実感します。

共働きになって夫も変わった。私も変わった

「私が仕事に出るようになってから、夫は細かいことを言わなくなりました。率先してお風呂掃除をするようになったんですが、腰が痛い…”とつぶやいていましたから、家事の大変さもわかったみたい。私は私で、今まで私だけがワンオペだと思っていたけど、お金を稼ぐ意味では夫もワンオペだったとわかって、2度目の給料日には、夫の好きな日本酒をプレゼントしました」

 

ふたりとも改めて話し合ってはいないものの、互いの大変さをわかりあえるようになった実感がある、とマユミさんは言います。ほんの少し寄り添って、ほんの少し歩幅を合わせた、そんなじんわりとした喜びがあるそうです。

ものを粗末にすることをとがめる夫

 

夫婦がお互い、感謝の気持ちをもつように

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里
※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。

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