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夫婦ケンカするほど“仲がいい”と妻が信じる理由

コミュニケーション

2021.04.14

喧嘩を避けたい夫、話し合いたい妻

 夫婦ケンカと聞くと「避けたい」と思うのが一般的でしょう。でも、結婚したとはいえ、お互いに違う過去をもち、違う環境で成長してきたのです。異なる意見や価値観をすり合わせずに暮らしてしまうと、夫婦間の齟齬は大きくなるのではないでしょうか。

話し合いをしようとすると夫は逃げ出し…

同い年の男性と結婚して7年たったユリさん(39歳・仮名=以下同)。つきあっているときから穏やかな彼の性格に惹かれていました。

 

「でも、いざ同居を始める時、ある程度のルールを決めておきたいと思ったんです。家事はどうするのか、お互いにどういう習慣をもっているのか。一緒に旅行したことはあるけど、日常生活の中でどんな習慣があるのかはわかりませんでしたから。そうしたら、彼は『ルールなんていらないでしょ。自然がいいよ』って。うーん、話し合ったほうがいいんじゃないかなと言うと、穏やかな口調でしたが『嫌だなあ』という返事で」

 

彼はユリさんの気持ちを考えたのか、次のように提案してきたともいいます。「具体的に言うから。たとえば“夕飯はどうするの、誰が作るの?”と言われたら、それもその日に連絡とりあって決めればいいよ」って。

 

そうして、なし崩し的に生活が始まりました。ユリさんはあまり外食の習慣がなく、料理も好きなので、結局は自分で作ってしまいます。疲れて作りたくない日もありましたが、彼は自分がやることは考えていない様子。

 

「それだけじゃありません。2年後、私が妊娠したときも彼の態度は変わらなかった。“あれをして”、“これをお願い”と頼んでも、期待の3割程度やるだけ。このままだと産後が大変だと思ったので、『言いたいことがあるんだけど』と切り出したことがあるんです。そうしたら彼、逃げちゃったんですよ。『聞きたくない、ケンカしたくない』って。私はケンカしたいわけじゃない。話し合いたいだけなのに…」

 

現在、6歳になる息子を夫はかわいがっていますが、子どもの将来などを話していても、ユリさんが夫の意見に対して「私はそうは思わない」とでも言おうものなら、夫は「わかった、もういいよ」と話を深めようとしません。

 

「夫が言い争いを怖がるのは、父親が横暴な人だったからみたいです。よく母や子どもたちは殴られたりしていたみたい。だから険悪な雰囲気になるのを異常に怖がっているんだと思う」

「何のために」ケンカをするかが大事

ただ、ユリさんも表面上は似たような環境で育っていたと言います。

 

「うちの両親のケンカはすごかったですよ。最初はおとなしく話し合っているんだけど、そのうち、だいたい母がキレる。父はそんな母にめげずに論破しようとする。太刀打ちできなくなった母が、父にプロレスみたいな技をしかける。母は昔、柔道をやっていたので強いんですよ。父も必死に対応するけど最後はギブアップ。幼少期は両親のケンカが怖くて、妹と震えていたんですが、物心ついた頃には、両親はそれが“楽しいんじゃないか”と思うようになりました」

 

いまもときどき実家に帰ると、両親は相変わらずケンカ口調で言い合いをしている。でもその後、ふと気づくとふたりで仲良く晩酌をしているのです。

 

「ふたりとももう70代ですから、さすがに取っ組み合いはしなくなったみたい。両親は今も働いていますが、コロナ以前はふたりで頻繁に旅行したり近所に飲みに行ったりして、周囲からは“仲がいいね”と言われている。まぁ言い争いが始まることもよくあるようですが…。ケンカするほど仲がいいんですよ。私はそれを見て育ってきたので、意見が異なるなら理解し合うまで話したいと思っている。でも、夫は逃げるんですよね…」

 

ケンカの中身にもよるのでしょう。夫の両親のように、夫だけが横暴であれば家族は萎縮してしまいます。でもユリさんの両親は、お互いが言いたいことをさらけだし、最終的には相互理解につながっていました。傷つけるためのケンカでは意味がありませんが、理解し合うためのケンカなら意味はあります。

 

「だから今も、ことあるごとに夫に『あなたはどう思う?』と問いかけるようにしています。少しずつでも彼の考えを理解していきたいから、なるべく穏やかに聞く。自分の両親を見ているので、厳しいツッコミで『だから何が言いたいの?』と、きつく言ってしまうことがありますが…。彼はそれが怖いんじゃないかな、とやっとわかってきたので」

 

何を言っても受け止めてもらえる。意見は違っても理解はし合える。お互いに、そういう信頼関係をもつにはもう少し時間がかかるのかもしれません。

喧嘩を避けたい夫、話し合いたい妻

喧嘩しても理解し信頼し合う夫婦

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里
※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。

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