母親は“無意識”に娘を支配しようとしている

もちろん、母親たちも意図的に娘を傷つけようとはしているわけではありません。母親自身は、娘の幸せを願っている場合がほとんどです。

 

「ところが、母親には“娘にはずっと自分のそばにいてほしい”という気持ちがあります。そのため、娘が離れていかないよう、無意識のうちに支配しようとしてしまいます」

 

このような意識によって、大人になっても母と娘は「支配・従属」関係を断てないケースが多いのです。

 

「お互いに相手に対し自分のことをわかってほしいと望みながらも、理解し合えないことが、母と娘の関係を苦しいものにしているのです」

 

母親が娘を支配し続けようとする理由

しかし、娘をコントロールしようとする母親を責めることはできません。なぜなら母親もまた、自分の母親からガマンを強いられてきた過去があるからです。

 

母親も、自分の母親から受けた教育の影響を受けています。母親の親世代が家庭を持ったのはちょうど核家族化が進んだ時期です。当時、父親は仕事に忙しく家庭不在、子育ては母親ひとりで担っているケースがほとんどでした。周囲に頼れる人がいない母親は、さみしさや心細さから育児にエネルギーを注ぐことに。その結果、子どもに強く依存し、支配するようになりました。

 

「今の母親世代は、親に支配されても親には従うものだと教えられて育っています。今の娘が感じているのと同じようなガマンや、自分を抑えるしんどさを経験しているものの、それが普通だと思っています。しかも、核家族で育っているため、他の子育て方法を知りません。そのため、自分がされてきたことと同じように、娘にもガマンを強い、支配しようとしがちです。親子三代にわたるひずみが、今のママ世代に大きな影響を及ぼしているといえるでしょう

 

実母に苦しさを感じてしまうのは、とても根深い問題です。これはどのように解いていけばいいのでしょうか。次回は母親の中に根づく深い心理や価値観について解説します。

 

PROFILE 石原加受子さん

心理カウンセラー。「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。

 

文/齋田多恵