2019.08.27
充実した生活や贅沢な趣味などをSNSにあげる、いわゆる〝キラキラ投稿〟。しかしごく普通の生活を送りつつも、現実とはかけ離れた仮想現実をSNS上で演じ、歯を食いしばりながら投稿を続けているママたちも。いったいなにが、彼女たちを駆り立てるのでしょうか? SNSからは見えない「本音」をききました。
■一度ついた嘘はつき通す(陽子さん/ 33歳/ 受付)
iStock.com/FluxFactory
キラキラママに憧れ、一度だけ見栄張り投稿をしてしまったことがあります。それは沖縄旅行のとき。たまたま通りがかっただけの高級ホテルをバックに、旦那が奮発したレンタルのベントレーと一緒に家族で撮った写真でした。
しかしこれが思った以上に反響があり、フォロワーも一気に増えてしまいました。ついでに、子どもが入園したばかりの保育園のママたちにも〝そういう人〟認定されてしまい、もうあと戻りができない状況に追い込まれてしまったんです。
それからは毎日「キラキラママを演じ続けなければいけない」という使命感から、大変な日々を送っています。無駄なお金も時間も費やして「なんのためにこんなことをしているんだろう」と思うこともあります。
それでも、私に憧れているママ友たちを裏切ることはできません。偽りではありますが、築き上げた立ち位置があるんです。これも子どもが保育園を卒業するまで、あと1年半ほど…がんばれるのでしょうか? 一度ついた嘘は、最後までつき続けなければならないんです。
■ママ友への見栄だけが原動力(真優さん/ 35歳/ WEBデザイナー)
iStock.com/Deagreez
私の旦那は、ただの中小企業の平社員。残業の状況によっては、私の給料の方が高いことも普通にありますし、生活は決して裕福ではありません。でもママ友たちの間で、私の旦那は「実業家」で通っているんです…理由は私のSNS。
常にキラキラな格好で撮影し、職業上得た画像加工技術で華やかな写真に仕上げます。そこまでして完璧に「別の自分」を演出する理由は、「ママ友への見栄」それだけに尽きます。
本当の暮らしをアップして見下されたり、余計な噂をされるくらいなら、幸せそうな写真をアップして妬まれるくらいのほうがいいと思ってるんです。相手のことを下に見たときのママ友の目線は本当に恐ろしいですからね。
実際、ママ友とSNSで繋がっていなければ、きっと私はこんなことしていなかったと思います。
■SNSで演じることでバランスを取っている(裕子さん/ 31歳/ 事務員)
iStock.com/electravk
SNSは私の精神安定剤のようなものです。実際の私は、夫婦二馬力で必死に働いてやっと生活できるレベル。旦那ともうまくいっていないので、旦那のことを話せと言われれば、延々と愚痴しか出てこないでしょう。
それでもSNS上では、充実した毎日を送り、旦那や子どもを愛してやまない「キラキラママ」を演じています。実際に私のママ友たちは、私のことをリア充だと思っていることでしょう。
わざわざまわりを欺いてまで、なぜ演じるのか。第三者ならきっとそう思うに違いありません。たしかに私が歩いているのは、苦しいし面倒くさい〝いばらの道〟です。それでもこれは、私が生きていくのに必要なものなんです。
現実の生活が、私の「底辺」だとするなら、SNS上の暮らしは「最上級」。足して2で割ると「普通」になるんですよね。こうでもしないと、きっと自分はつぶれてしまう…それがわかっているから、私はこれからもSNS上で演じ続けます。
iStock.com/FluxFactory
SNSによって、他人の生活や思想をのぞき見ることができるようになりました。しかしそれと同時に、偽りを演じることも容易になっています。よく知っているはずのママ友でさえ、簡単にあざむけてしまうSNSの世界…だからこそ、信用や安心がより重視されるのでしょうね。
ライター:葛西 明
人材派遣及び、人材紹介を行う会社に勤めるサラリーマン。求人募集の文章を書くのが楽しいと感じて以来、ライターとしても活動中。家事が苦手な妻と結婚後、気付けば兼業主夫になっていることが悩み。