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空手でビシッと鍛えてくれ…そんな親の期待の斜め上を行くベルリンでの出来事

子育て

2021.09.17

中学生のトニーニョくん(15歳)と3人で暮らす、漫画家の小栗左多里さんとジャーナリストの夫・トニーさん。

 

夫婦で子育てをしていくなかで「異文化で育った者同士はどうやったら折り合えるのか?」と試行錯誤した経験から感じたことや自分の幼少期の体験を、それぞれに語ります。

 

今回は「海外の子どもの習い事」について。ドイツに住んでいた頃、トニーニョくんが熱中した習い事の一つ、空手についてのエピソードを語ってくれました。

空手でビシッと鍛えてくれ…そんな親の期待の斜め上を行くベルリンでの出来事

ピアノ以外に、トニーニョが習っていたのが空手。ベルリンでは小さい子の習い事としてけっこう人気があり、教室もいくつかある。

 

とはいえ日本人の先生はいなかったし、流派や場所・スケジュールにもよるので、トニーとトニーニョは行ける範囲全部の教室を見に行った。本当に全部だ。もしかしたら、空手の先生の間で「あの親子、来た?」と噂になっていたかもしれない。トニーの探究心はどの方面でも発揮されるのだ。

 

そして私に感想が報告され、良さそうなところは私も一緒に、もう一度行った。トニーより私の方が空手に求めるものが大きそうということで、最終判断は私にゆだねられていたのである。

 

実際、私には理想があった。「なんかビッとしてて、先生の言うことにパッと反応する」という、日本では普通のイメージ。しかしここはベルリン。なかなかの衝撃が私たちを待っていたのだった。

 

いろいろ回った結果、日本人の妻がいて、よく日本にも行っているドイツ人の先生に習うことにした。

空手に対する親の理想と現実とのギャップが大きすぎ…

まず最初の驚きは、月謝の安さ。個人でやる教室は体育館を借りていることが多い。この先生の場合はスイミングクラブの上にある畳の部屋。場所を借りていると、道場を構えているスポーツクラブの半額以下の月謝で、月1000~2000円というところが多かった。

 

次の驚きは、稽古の最初10〜15分は「鬼ごっこをする」ということ。稽古の時間は1時間もないのに…である。なんだったら20分経過することもある。いやいやいや、早く空手教えてちょうだい。

 

この「鬼ごっこタイム」、なぜかどこへ行っても絶対にあった。「子どもは集中力がないから」と先生は言うけど、もっと子どもたちを信じてみたらどうだろうか。きっと1時間でもちゃんと稽古できるはずだ。

そして、個人でやっている先生はたいてい他に本業がある。息子の先生もそうで、仕事が長引くと遅刻してきた。これも驚きだった。「ビシッとしてる精神」はどこへ…。

 

畳の部屋の鍵は先生しか持っていないうえ、電話番号も友達付き合いのある1〜2人の親にしか教えておらず、その人がいないと連絡も取れなかったのだ。ベルリンは「先生」を尊重する雰囲気があったせいか、割と長く通っている家庭もその状況のままにしていた。

先生の行動も、子どもたちの態度も…??

さらに夏休みがあけたら、友だちづき合いのある親の子どもだけ昇給試験に受かっていたことがあった。普通、試験はみんなで一緒に受けるのだけど、日本から日本人の先生が来て急に小規模な試験をやることになり、その家庭にだけ連絡したという。

 

それを聞いたほかの生徒は先生に直談判した。それで「今度からはみんなに連絡する」と約束していた。当たり前である。実はこういう「ひいき」のようなことって、学校関係でも割と聞いた話でもあるのだ。

 

子どもたちの様子はどうか。4歳くらいから小学生は同じ初心者クラスで教わるのだけど、 一般的に子どもに厳しい指導はしない。

なので先生が見本を見せて説明しているときも、あくびをするわ、隣では鼻に指入れてるわ、自分ちにいるようなリラックス度である。「ビッと」も「パッと」もほど遠い。もう私が飛び込んで「はい、先生をちゃんと見る!」と順々に両肩をポンポンしていきたかった。

国によって取り組み方が違ってもそれぞれに良さがある

最後の驚きは、昇級試験が緩いこと。でもこれは悪いこととは言いきれない。同じく空手を子どもに習わせていた友人いわく、「ドイツでは、茶帯までは割とトントン取らせる。あまり難しいとくじけるし。黒帯だけはなかなか難しいと思う」。確かに3段階目くらいまでの試験は「落とす」ためのものではなく「受からせる」ためのものに見えた。

 

夏休みは日本でも教室に通い、私にとって理想の「ビシッとした」稽古も息子は体験したのだが、日本のレベルの高さも実感した。日本で習っている子はベルリンの子(日本人含む)と比べると、同じ帯の色でもけっこう差がある。

 

上の方に行けば年齢も上がって真剣度も増して、同じになってくるのだろう。でも最初から取り組む姿勢が違うのは「日本っぽい」と同時に「さすが本場」とも感じた。

 

ただ、「受からせる」ための試験も悪くない気がする。楽器もそうだけど「適度に最初から楽しみながらやる」という雰囲気を感じる。以前書いた、野球クラブもそうだ。できなくてもその場所ごとに喜びや達成感があると良い経験になる。

 

なかには長く続ける子も出てくるだろうし、結果的に上手い子が増えて、そのジャンルが盛り上がることにもなる。「すごく真剣」と「適度に体験」がうまく両立できる方法を誰か考えてくれないかな。

文・イラスト/小栗左多里

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