現代人が失いかけている「言葉に頼らないコミュニケーション」

父親にギターを教わる子ども

──ネットを遠ざけたくても、コロナ禍のせいで、授業などもオンライン、友だちづきあいもスマホを通じてせざるをえない状況になりました。外出自粛は解除されても、こういう場面はまたやって来そうです。そうなった場合はどうしたらいいのでしょうか。

 

山極さん:

動物である人間は、身振りを同調させることで信頼関係を深めています。音楽やダンスはその延長線上にあるものです。

 

こうした非言語的なコミュニケーションを、ネットのやりとりに取り入れる工夫をしてはどうでしょう。ビデオ通話やビデオ会議のアプリを使って、音楽を合奏したり、一緒に体操やダンスをしたりするのです。その他、工作を一緒にやったりするのもいいですね。

 

通学が再開しても、しばらくはおしゃべりもままならないという状況でしょう。その場合は、マスクをしてソーシャルディスタンスを取ったうえでできることを考えてみましょう。たとえば何かを作って、それを見せ合う時間を作るとかね。やはり、言葉を使わないコミュニケーションをする場を積極的に作っていくことが必要だと思います。

 

本格的に外に出られるようになったら、僕がお勧めしたいのは、自然と接する機会を作ることです。自然では、さまざまな動物や植物が、それぞれ与えられた時間をしっかり生きています。時には友だち関係から離れ、五感を研ぎ澄ませて言葉の通じない自然と向き合ってみましょう。

 

こうした言葉に頼らないやりとりが、現代の人間が失いかけている、本来の共感力や創造性を取り戻すきっかけとなります。