「生涯かけて、虐待について伝えたい」

「施設にも居場所がない」と感じた橋本さんは、働きながら通える全寮制の高校に入学。バンド活動にのめり込み、少しずつ「父親と継母を殺す」という気持ちが薄れていったそうです。20代は「仕事が続かない」などの悩みを抱えていたものの、28歳の時に出会った女性と30歳で結婚。現在は小学生と保育園児の2児を育てています。

 

橋本さんは現在、ブログや講演会で自らの経験を話したり、虐待サバイバーの3人で「internaReberty PROJECT」(インタナリバティプロジェクト)というグループを作って活動したりしています。

 

活動を始めたきっかけは、バンド活動と、とある講座で「自分史」を書いたことでした。

 

「虐待経験者は自己肯定感が低い、とよく言われます。僕もそうでしたが、バンド活動でお客さんから拍手を受けたこと、自分史を書いて自分でも『よく生きてこられたな』と思えたこと、周りの人にも『よくここまで来ましたね』と言われたことで、生きていてもいいんだ、と思えた。さらに、虐待について話すことで何かの役に立てるのかもしれない、と感じるようになりました」

 

Twitterでは自身のことを「日本一明るい虐待サバイバー」と自己紹介しています。

 

「『明るい』という言葉には、いろんなことを明るみに出していく、という気持ちを込めました。言いづらいことも声に出していくよ、と。生涯かけて、虐待について伝える活動はやっていこうと思っています」

 

子どもではなく『1人の人間』として接してー子育て中の虐待サバイバーの思い」では、虐待サバイバーの立場から、虐待を防ぐために今必要なこと、私たち大人や子どもたちに伝えたいことなどについて伺っています。

 

取材・文・写真/小西和香