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子供の探究心を育む「オンライン習い事」の底力

子育て

2021.04.03

オンライン習い事の様子

オンラインのピアノ教室の様子(写真:オンラインピアノ教室カンパネラ)

4月が近づき、進級、進学を機に新しい習いごとを考える家庭も多いだろう。

ちょうど1年前の今ごろ、子どもたちは学校が休校のまま春休みに突入し、そのまま緊急事態宣言が発令された。

 

塾をはじめ、さまざまな習いごとがオンライン化されたが、各家庭からは「密を避ける以外のメリットを感じられなかった」「やはりリアルがいい」という声が聞こえてきた。その一方で、テレワークにより新たな道を切り拓いた企業があるように、withコロナを経て、オンラインを使った”次世代の習いごと”へと進化を遂げたものもある。

 

毎日14時過ぎ、レッスンルームのZoomのIDが送られてきて、15時から21時まで、オンライン上で好きな講座を好きなだけ受講する――。

 

月額固定で受け放題の「Study Collect(スタコレ)」では、受講生の過半数がリアルな習いごとのない日に週2〜3回、2割以上が毎日オンライン講座を受講している。

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当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

ダンスやバレエなど科目は幅広い

講座は勉強科目からダンス、バレエ、英会話、そろばん、書道、アートなど幅広く、特に人気はアート(絵画)と社会(地理)だという。

翌週も必ず同じ子が参加するかどうかわからないため、1時間で完結、成果物ができる点も人気の秘訣だ。

 

もともとスタコレでは、「子どもの未来に選択肢を。親に自由な時間を」をスローガンに、1つの施設内で複数の習いごとを自由に組合わせて月謝制で受講できる「Peby College(ぺビーカレッジ)」(東京・福岡)を運営し、新しい習いごとの提案と、子どもたちの放課後の居場所づくりを行ってきた。

 

「今は公園に行ってもゲームをしていたり上手に遊べない子が増えた。『学童がつまらない』と行き場がない子も少なくない。親の収入格差によって教育格差が生まれるというが、経験したもの、体験したものでしか、子どもたちは将来の選択肢を広げられない」と、スタコレを運営する合同会社Education Hack CEOの米倉久曜氏。

スタコレの授業の様子(写真:Education Hack提供)

 

米倉氏は「教育業界はオンライン化が遅れていることが従来からの課題だった。当社もいつかやらなければと思いながらも、市場がついてこないのではと言い訳して、先延ばしにしてきた」と続ける。

 

そんな中で、休校になった昨年3月、保護者たちから「子どもの生活習慣が乱れた」「1日中ゲームばかりやっている」との声が同社に多数寄せられた。

 

そこで、休校中の子どもたちの生活リズムを整えるべく、朝8時のホームルームを皮切りに毎日無料でオンラインレッスンを提供。録画ではなく、すべてライブ配信で2カ月間で900レッスン行った。

 

当初は東京、福岡のスタコレに通塾している子どもたち向けに、緊急事態宣言中だけのつもりだったが、口コミで日本全国に広がり、「集団だとなかなか手をあげられないが、家だと伸び伸びしている」「うちの子が真剣に取り組んでいる姿を、間近で初めて見た」という保護者たちの声が殺到。そこでオンラインを続けていく決断をし、2020年7月から有料サービスとして開始。その後8カ月で行ったライブ配信は1万レッスンを超えた。

 

スタコレでは習いごと以外にも、オンライン上に「自習室」を用意している。「宿題をちゃんとやっているか見ているのが役目」というが、その存在はあなどれない。子どもたちはWeb上で講師にさまざまな質問をすることが可能だ。

 

YouTubeでも、黙々と学習している動画の再生回数が高かったりするように、誰かと一緒に勉強していたい需要はある。「宿題を見るだけではなく、質問にも答えるし、中には難関校を目指している子も利用しているので、どんな質問がきても答えられるようにチームを組んでいる」(米倉氏)。

 

今後は要望の多いプログラミングや英語以外の語学なども増やしていく予定だ。

ピアノ教室は日本独自スタイル

習いごとの定番のピアノは、幼少期から始める子が多いこともあり、オンライン化が難しいものの1つだろう。

 

東京・杉並区で40年続く老舗ピアノ教室は、日本で初めてオンライン専用のピアノ教材とプログラムを作り、「オンラインピアノ教室カンパネラ」を開校した。

 

「子どもたちが徒歩で習いごとに通える日本は、世界的に見てもまれな環境。アメリカは国土の広さや治安などから、ピアノレッスンもオンラインが主流。中国はそもそもピアノ講師が足りず、習うなら送迎の手配が必要で、むしろ日本の環境は特殊だ」。そう語るのは、カンパネラを立ち上げた中川徹哉氏だ。

 

もともと老舗ピアノ教室の門下生で、同教室の講師も勤めていた中川氏は日本と中国を行き来しながら、中国でのピアノ講師育成事業に携わっていた。日本でコロナの感染が拡大する前の2020年1月も中国にいた中川氏は、現地の感染状況を見て「これはタダごとではない」と異常さを察知し帰国。緊急事態宣言が出る2週間前に、全レッスンをオンラインに切り替えた。

 

それと同時に、ウェブサイトの構築と、オリジナルの教材やプログラム作りを開始した。

 

「レッスン内容は、1人ひとりに合わせたオーダーメイドだが、リズム、ピアノに関する知識など、基礎の部分は共通。もともと自社独自のテキストはなかったが、リアル音楽教室でベテランの先生が40年にわたり蓄積したノウハウを、これを機に系統立てて教材化した」(中川氏)。

 

プログラム作りの背景には、中川氏が大学院でピアノ教育を研究していたこと、ピアノ教室にある700冊近い教本を研究し「教本がきちんとできていないと、オンライン教室のクオリティーが担保できない」という結論にたどり着いたことがある。

 

教本に関しては、オンラインならダウンロードすればよさそうだが、あえて1冊ずつ製本し郵送している。

 

「小さい子、初めて習う子にとって、楽譜の線(五線)の幅や音符の玉の大きさは重要。1冊の本になっていると子どもも喜ぶし、やる気につながる」(中川氏)。

 

教本にはシールコレクションページもあり、1曲終わると、同梱して送ったシールを保護者に貼ってもらう仕様になっている。

 

入会は、体験レッスンののち、1カ月のお試し期間を経て、その後正式入会となる。最初の1カ月は簡単なキーボードやおもちゃのピアノでもOK。それで続けそうなら、楽器を用意するという流れだ。

 

レッスンはZoomで行うが、授業の記録動画はすべてマイページのアーカイブに残っていく。家での練習風景をアップし、次のレッスンまでに講師と共有することができるのも、オンラインならではだ。

リアルの教室がなくなることはない

「オンラインレッスンの難しいところは、合奏ができないことと、手を取ってあげられないこと。そのため、リアルほど進度は早くない。しかし、その子自身が理解するまで進めないので、定着率は高い」(中川氏)

 

自身や子どもが楽器を習ったことがある人なら経験があると思うが、リアル教室に通っているといつまで経っても「ド」の位置があやふやなのに、何となく弾けてしまうことが多々ある。しかし、オンラインの場合はわからないものはわからないので、確実に本人が理解するまで弾くことはできない。その分、講師の伝える力が問われるという。

 

一方で、中川氏は「グランドピアノが並ぶリアルの教室の雰囲気は特別なので、今後も(リアルの教室が)なくなることはない。そもそもターゲットが違う」とも語る。

 

実際、オンラインピアノ教室の生徒は、東京よりも海外在住の日本人や地方在住の生徒が大多数を占める。そのため、3、4カ月に一度、オンライン上でお楽しみ会を催し生徒同士の交流を図り、発表会もオンラインで開催する。 

 

今はまだ、日本に比べると海外のほうがオンラインレッスンに抵抗がない。同校では今年、台湾と中国で開校を予定しており、将来的はアメリカへの進出も視野に入れている。

 

「勉強も受験も教えない塾」として熱狂的なファンに支持され、東京・三鷹市の教室に全国各地、時には海外からも通塾してくる「探究学舎」の代表・宝槻泰伸氏は、「もうインプット型の授業はリアル教室では行わず、オンラインに特化する」という。

探究学舎が目指すのは、子どもたちの”興味開発”だ。

 

「計算も英語も、読解力も、ピアノも、サッカーもすべて能力開発。読解力やコミュニケーション能力は生きるうえで必須だし、英語ができたり、身体能力が高かったりすると可能性はより広がる。しかし、大事なのはそのスキルを何に活かすか、何に使うかということ。人生のビジョンは能力開発だけでは見つからない」(宝槻氏)。

Youtubeで無料配信も

探究学舎では、子どもたちに驚きと感動を与え、興味の種をまく。テーマは、宇宙、生命、歴史、芸術、ITなど幅広く、子どもたちが自分でどんどん掘り下げていくように探究心に火をつける。

 

例えば、現在行われている「科学実験編」の授業では、動画とライブ授業を駆使し、最終的にはペットボトルや一円玉を使って、家でも試せる実験に落とし込み、小学生でも身をもって「気流が起こると気圧変動が起きる」ことを体感。大人でもよく理解できていない事象も、遊びのように組み立て子どもたちの興味を掻き立てていく。

 

探究学舎でも、コロナ休校に合わせてすぐさま対策を講じ、3月2日からYouTubeで無料配信を3週間行った。ライブで観たのは4000人。再生回数は50万回を超えた。

 

3月は並行してリアル教室も開校していたが、休校要請と同時に全授業をすべてオンラインに切り替えた。

 

「うちのリアル授業はめちゃめちゃおもしろいんです。いくらオンラインに磨きをかけてもそれを上回るのは難しい。でも、緊急事態宣言下では、物理的にできないからしょうがない」(宝槻氏)。

 

3月にYouTubeで無料配信を見た1200人が新規で入会。リアルな教室は距離的に限られた人しか通えないが、オンライン化により「探究的な学びに今まで触れたことがない子どもたちがハマった」(宝槻氏)ことで、この1年でのべ2万2000人が受講するまでに拡大した

 

Zoomで行われる75分の講義は、双方向のライブ配信で行われる。子どもたちはホワイトボードやチャットを駆使して自分の意見を発信し、講師はリアルタイムでそれらを捌き、スマホでクイズに参加しながら盛り上がる。子どもの隣で一緒に見ている保護者も一緒にワクワクしながら、気づけば夢中になっている。

 

「オンライン最大のメリットは親子で学ぶ環境が作れること。探究学舎の授業は95%は家族など複数人で参加しており、これが成功の秘訣。一緒に受講することで、家族の時間の使い方が変わる。授業のあとに、家の中に図鑑が増えたり、家族で美術館や博物館に行ったり、静かだけれど確実に、家庭の中に”探究”が増えていく」(宝槻氏)。

 

しかし、オンライン上では、子ども同士の関わりはどうしても希薄になる。それを補完しているのが、講義後20〜30人のグループに分かれて行われるホームルーム(HR)と、HRごとに用意されているSNSグループだ。HRにはメンターが2名つき、講義のフォローや子どもたちのアウトプットの場となっている。

 

SNSでは授業に関することはもちろん、自分の興味あることなど個人的な内容も発信でき、週1回の授業の間を補完する役目も担う。

 

「オンラインはリアルの廉価版ではないので、両方とも満足いく内容にするためにはかなりのパワーが必要。そのため、従来の授業はオンラインに一本化し、自由研究や短期講座をリアルの教室で行っていくことに決めた」(宝槻氏)。

オンライン×リアルを模索

一方で、リアルとオンラインの「ハイブリッド型」も同校では今後はより強化していきたいという。拠点から全国の小さな教室にテレビ授業を配信。現地でファシリテーターがサポートしていく。

 

「高校生や大学生になると、Zoomでもコミュニケーションが取れるが、小学生は身体的な関わりがないとコミュニケーションがうまく取れない。家だと保護者のサポートがどうしても必要になるため、教室に預けたいという需要もある」(宝槻氏)

 

まずはこの春から、東京・三鷹と長野県・軽井沢でハイブリッド授業を始める。オンライン授業の次のステージの幕開けだ。

 

新しい生活様式が否応なしに始まってから1年。子どもたちにとっては、ガマンを強いられることばかりだった。しかし、そんな中でも未来の希望につながる何かに出合い、楽しみながら成長する姿を応援していきたい。

 

吉田 理栄子 : ライター/エディター

 

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