「こども食堂」には、こんな課題が


驚くほどの広がりをみせている「こども食堂」ですが、運営している人によると、実は共通の悩みや課題があるといいます。

 

本当に支援が必要な子どもたちに伝わらない! 

「毎日の食事に困っている子どもや保護者を支えたい」と思っても、本当に来てほしい子ども・家庭に子ども食堂の存在が伝わっていない…と感じる運営者は非常に多いようです。

 

小学生向けの新聞紙上で、「こども食堂安心・安全向上委員会」が実施したアンケートでは、こども食堂について知っていた小学生は約半数。そして、実際に行ったことがあるという子は、323人中わずか7%だったといいます。 困っていても、毎日の生活だけで精いっぱいだったり、地方や外国から移住してきたばかりで打ち明ける相手がいない人もいます。

 

また、どこに助けを求めればいいか分からなかったり、一度は役所に相談したものの何も変わらず支援をあきらめてしまっている人もいるでしょう。

 

「保育園や児童館などと同じレベルでみんなが知っている存在になれれば」と関係者は話しています。

 

「貧困世帯向け」のイメージが固定するのもよくない

こども食堂の多くは、限られた予算や食材・スタッフで運営されています。 本当に困っている人にこそ食事を提供したいが、あまり「貧困支援」を前面に出したり、利用時に家庭の状況を確認しようとすると、それが障壁となって足が遠のいてしまうことがあり、ジレンマになっているそう。 そのため、冒頭の「ファミマこども食堂」はもちろん、多くのこども食堂では、「貧困家庭支援」とは打ち出さず、地域の誰でも来られる場というスタンスを取っています。

 

子ども食堂の存在を知っていてもなかなか来られない家庭のために、東京都江戸川区では、「おうち食堂」という事業も実施しているそうです。 これは、ボランティアが各家庭に行って、買い物や料理・片付けまで行うもの。自己負担なしで年に48回まで利用でき、「作りたてのおいしい料理が食べられた」と喜ぶ子どもたちの声が紹介されています。

 

万一のケガや食中毒などの対応

「こども食堂をやりたい」というと、身内から「食中毒でも起こしたらどうするんだ」と反対される人も多いそう。万が一のトラブル時における体制づくりも課題となっています。 これについては、クラウドファンディングで、治療費が支払われる保険代金に充てる寄付を募ったところ、目標額1000万円に対し3ヶ月足らずで約1250万円が集まり、社会的関心の高さがうかがわれました。

 

その他にも、十分な補助金があり60~70%の小学校で朝食が提供されるアメリカやイギリスと比べると財政的に苦しく閉鎖せざるを得ないこども食堂があることや、地域によってこども食堂の数に偏りがあること、特定団体への勧誘や営利だけを目的としたこども食堂が出現することなど、今後解決すべき課題はまだまだあるようです。

 

まとめ


今回、大手コンビニチェーンのファミリーマートが取り組んだことでずいぶん知名度が高くなった「こども食堂」ですが、その背景には数年前からの全国的なこども食堂の広がりがありました。 子どもの心と体の健康を支援したいと願う人がこんなにたくさんいることを頼もしく思うとともに、国や行政には、個人の好意や熱意に任せきりにするのではなく、困窮する世帯を「自己責任」にしない姿勢が求められます。

 

「うちの近所にも子ども食堂があるのかな?」と気になった人は、「こども食堂ネットワーク」公式サイト からお住まいの地域名で検索できますので、いちど探してみて下さいね。

文/高谷みえこ
参考:ファミリーマート ニュースリリース「ファミマこども食堂」を全国で展開(2019年2月1日) http://www.family.co.jp/company/news_releases/2019/20190201_99.html
江戸川区 食事支援ボランティア派遣事業「~できたて食べてね~おうち食堂」 https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e049/kosodate/kosodate/kosodateshienjigyo/syokunosie.html
Yahooニュース「こども食堂2,200か所超える 2年で7倍以上 利用する子どもは年間延べ100万人超」 https://news.yahoo.co.jp/byline/yuasamakoto/20180403-00082530/
農林水産省「子供食堂と連携した地域における食育の推進」 http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomosyokudo.html