感情に振り回されず、気持ちを整理できる 

メタ認知の考え方について説明する渡辺先生

 

メタ認知で感情をマネジメントできるんですか!

 

渡辺先生

例えば「キレやすい」という人がいますよね。一瞬で怒りが沸騰するような捉え方です。

 

でも実は、自分自身の感情をしっかり観察すると、「キレる」という行動に移るまでには、ちょっとイラっとしたり、モヤモヤしたりという、小さなきっかけがあるはずなのです。それが、次第にイライラ、むかっときて、どかーんと爆発するというような。

 

こうしたプロセスがあることをモニターし自覚すれば、少しイラっとしたあたりでちょっと気分を変える行動をとってみるなど、ポジティブな方向にマネジメントできるわけです。

 

確かに!感情に振り回されづらくなる、という感じでしょうか。

 

渡辺先生

そうですね。メタ認知を行うことで自分の立ち位置を俯瞰することができ、いわば主体としての自分を見失わないので、その時その時の感情に振り回されにくくなります。

 

ひどくショックなことがあった時も、「どうしてこんなにショックを受けているんだろう?」と考えることで、「自分は、本当はこうしたかったけど〇〇の理由でできなかったからだ」「自分があの態度をとったのは身勝手だったかもしれない」などと考えられれば気持ちが整理しやすくなります。

 

そうすると、人のせいや世の中のせいにすることは飛躍であり、実は自分の考え方次第で物事が解決できることを見通せるようになり、感情に翻弄されることは少なくなります。

 

 

凄くショックなことがあった時や腹が立った時って、自分自身を見失いがちですもんね。

メタ認知ができれば、少し生きやすくなりそうです。

 

渡辺先生

自分のことって実は自分が一番分からない部分がありますからね。メタ認知ができるようになると、心を整理しやすいと思います。

 

感情をマネジメントできない人は学力や社会生活に支障をきたすということを報告している海外の研究もありますよ。

 

 

感情のマネジメントは、学力向上や社会生活にも大きく関わっているんですね。

 

渡辺先生

考えてみると当たり前なのですが、感情をマネジメントできないと、対人関係がうまくいかないことが増えますよね。

 

今は小学校から授業でグループワークを取り入れる「アクティブラーニング」が積極的に取り入れられています。

 

しかし、感情がうまく伝えられない、またはマネジメントできないと、うまく仲間や先生と関わることができなくなります。すると、授業を十分に理解することができない状況も多くなり、結果的に学力が伸び悩んでしまうわけです。頭の問題ではなく、むしろ意欲や成果に結びつかないんです。

 

そういった意味で、感情マネジメントはとても大切だと思います。

  

 

お話を聞いて、メタ認知は学力・社会生活などに広くかかわることが分かってきました! 基礎としてメタ認知を身につけることの重要さを感じます。 「ママもメタ認知で自己肯定感を育てよう」では、具体的にメタ認知力を向上させるためにはどうすればいいのかを、引き続き渡辺先生に伺っています!

 

 

プロフィール 渡辺弥生先生

渡辺弥生教授

 法政大学文学部心理学科教授。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校客員研究員を経て現職。専門は発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学で、子どもとの関わり方や感情マネジメントに関する講演も積極的に行う。「感情の正体」(ちくま新書)「子どもの『10歳の壁』とは何か?-乗りこえるための発達心理学」(光文社新書)など著書多数、「まんがでわかる発達心理学」 (講談社)など監修。

 

取材・文・写真/小西和香