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「ベビーシッター1時間150円」の落とし穴!?SNSで問題視されたのは

出産

2020.02.14

東京都で2019年から始まった「ベビーシッター利用支援事業」制度。

 

職場復帰したいのに保育園に入れない…そんなとき、保育園が見つかるまでの期間は1時間150円の自己負担でベビーシッターさんに来てもらえるという、いっけんありがたい制度ですが、実は税金面で注意しなければいけない点があるのを知っていますか?

 

今回は、この制度を利用することで、次の年の税金をはじめ家計にどのような影響があるのかを解説します。

 

東京都在住で、育休中や出産を控えている人はぜひ参考にして下さい。

「ベビーシッター利用支援事業」とは

「ベビーシッター利用支援事業」は2019年から東京都が開始した事業です。

 

◇東京都「ベビーシッター利用支援事業 利用案内」パンフレット(2020年版)

 

誰でも自由に利用できるわけではなく、保育園への入園希望を出しているのに空きがない待機児童(0歳~2歳児クラス)世帯と、育休終了に合わせて復職を考えている世帯が対象。

 

さらに各市区町村ごとにも要件があり、最終的に対象になった家庭だけに通知が送られてきます。

 

制度の内容は「保育園が決まるまで、本来は1時間2400円かかるベビーシッター代を助成しますので、自己負担は1時間150円です」というもの。

 

これだけ聞くと、えっすごくいい!ぜひ利用したい!と思いますよね。

 

しかも初年度は1時間250円だった自己負担金が2020年3月以降は150円とさらに安くなり、ベビーシッター派遣事業者も大々的に宣伝をはじめたところ…

 

「ちょっと待って!」という声がSNSを中心に相次いでいます。

 

いったい何が問題なのでしょうか?次に説明していきます。

ベビーシッター助成金は「所得」として扱われる

この事業の約款(説明書)を読んでみると、次のように書いてあります。

第14条(確定申告)

本事業では、各認定事業者が1時間当たり2,400円(税込)を上限に定めた利用料

と、第7条第1項で定める利用者負担額(1時間当たり150円(税込))との差額を、東

京都及び区市町村が公費で負担し、認定事業者に支払います。

東京都及び区市町村が公費で負担した額(助成額)は、利用者にとって、所得税法上の

「雑所得」となり、その他の給与所得以外の所得金額との合計額によって、以下の申告が

必要です。(申告により、後日、所得税等が課税されます。)

もともと1時間2400円かかるベビーシッター代と、自己負担150円の差額が2250円。

 

1日8時間・週5日ペースで1年間利用すると、助成金は単純計算で年間432万円にもなります。

 

そして実はこの金額が、制度を利用した人の「雑所得」としてカウントされるのです。

 

…と言われてもピンとこない人もいるかもしれませんが、たとえばあなたの給与所得が300万円だとすれば、この制度を利用した年は上記をプラスして732万円もの所得があったと見なされます。

 

そうなると、翌年の2月~3月にかけて確定申告が必要になり、ほとんどの人は、所得税として毎月数万~十万円以上、いつもの年より多く天引きされる(または納付する)ことに。

(※助成額が年に20万円以下だった人は税務署への確定申告は不要。住民税のみ役場へ申告します)

 

東京都がモデルケースとしてあげている一覧表によれば、年収300万円の人が月に160時間(8時間×週5)利用した場合、翌年の所得税は月に59200円も高くなります。

 

◇東京都「モデルケース税額表」

 

所得税約6万円と、自己負担分の150円×160時間(24000円)に加え、ベビーシッターさんへの交通費なども別途かかるため、結局は保育費用として月に8万~9万円はかかる計算になってしまいます。

 

このことを知らずに利用すると、次の年になって

 

「せっかく保育費用が抑えられたのに、年70万円も多く税金としてお金が出ていくなんて知らなかった…」

 

とショックを受ける人も少なくないと予想されます。

 

ちなみに、もし確定申告を忘れたり、あえてしなかったりすると、滞納金としてさらに多くの額を請求されてしまいます。

税金以外にも、こんな思わぬ落とし穴に注意

助成金で「所得が増えた」と見なされる…この影響は、所得税のアップだけにとどまりません。

 

次のような家計への思わぬ影響も考えられます。

 

夫の収入も下がる!?

夫の会社から月々「配偶者手当」などが支給されている人は、規定によっては妻の所得が上限を超えたとして打ち切られる可能性があります。

 

ボーナスは月々の給与額をもとに計算しているので、その場合、夫のボーナス額まで下がることに。

 

公的補助が打ち切られる!?

少し年上のきょうだいがいる場合、小中学校の給食費や学用品費・高校の学費などの助成・奨学金などを収入超過で断られるケースも出てきます。

 

公営住宅の多くは世帯年収が一定を超えると家賃が上がったり、立ち退きを命じられたりします。

 

児童扶養手当も、親の年収に上限があるため、利用した翌年は受給できなくなる家庭も。

 

夫の扶養から外れてしまう!?

夫の扶養内でパートや時短勤務をしている人が、数十万円分の助成を受けたことで扶養枠を超えてしまい、所得税だけでなく健康保険や年金も自分で払うことになる可能性もあります

 

パートや時短勤務での収入と、新しく支払う税や社会保険の額によっては、トータルで手取りが減ってしまう家庭も出てきます。

 

保育料が上がる!?

公立保育園の保育料は、子どもの人数や保育時間のほか、おもに世帯所得(住民税額)で決まります。

 

助成金分で所得が増えたと見なされれば住民税も上がり、現在園に通っている上の子、次年度以降に入園する下の子ともに保育料が高くなってしまいます。

 

シングルマザーの養育費が減らされる!?

養育の減額の要件のひとつに、「受け取る側の収入が増えた」というものがあります。

 

助成金による雑所得では事実上「収入が増えた」とは言いがたいので、調停や裁判になれば通常認められないはずですが、リスクの1つだとはいえます。

 

そのほか、介護保険料がアップするなど人によってさまざまな影響があります。

 

上記については、約款をじっくり見れば(ここまでかみ砕いてはいませんが)書かれていますし、役所や税務署に問い合わせればもちろん答えてもらえるでしょう。

 

しかし、赤ちゃんを抱えたママやパパは非常に忙しい毎日。

 

各自で約款を読み込んだり、あちこちに問い合わせて今後の税金や家計の変化をしっかり理解・シミュレーションせよというのはかなり酷な話ではないでしょうか。

 

申請の際に、個々の状況を確認して「あなたのご家庭ではこう変わりますが、いいですね?」と納得した上での申し込みなら問題ないですが、そこはあまり触れず自己責任のままで「お得です、ぜひ利用しましょう!」というのでは、抗議の声が上がっても不思議はありません。

現役ママ&パパに聞いた!「こんな制度ならOK」

ベビーシッター利用支援事業について、現在0歳~14歳のお子さんがいるママ・パパたちに「どんな制度なら安心して利用できると思いますか?」と聞いてみました。

 

「保護者に助成するから、保護者に課税されちゃうんですよね?事業者に助成すればいいのでは?もしくは、不妊治療など、ほかの少子化対策にかかるお金と同様、非課税にしてくれれば…」(Fさん・32歳・3歳児と1歳児のパパ)

 

「フリーランスや自営業で保育園に入れないのも大問題。せめて出張の時だけでもシッターさんに来てもらえたら助かりますが、経費にならないのはなぜ?と思います」(Kさん・30歳・0歳児のママ)

 

「私自身が元保育士です。ベビーシッター制度そのものは、もっと日本に根付いてほしいと思います。私自身、保育園は退職してしまったのですが、シフト制で柔軟に働けるベビーシッターとしてならぜひ働きたいと思っているので…」(Wさん・35歳・2歳児のママ)

 

「職場のプロジェクトなどの関係で、なんとしても妻は子どもが1歳までには復帰したいので、この制度の利用を検討しています。民間のシッターさんをお願いすると、翌年の税金アップ分と比較してもまだ高額。もし保育園に落ちても確実に預かっていただけるので予定が立てやすく、納得はしています。ただ、所得と税金についてもっと最初に説明がないと。そんなの聞いてないよー!とあとで悲鳴を上げる人が多いんじゃないかと思いますね」(Kさん・31歳・妻が妊娠中)

おわりに

「ベビーシッター利用支援事業」は今のところ東京都のみで実施されていますが、今後他の都道府県でも同様の制度が導入されるかもしれません。

 

この制度自体は、保育園に入りたいのに空きがなくて困っている人がベビーシッターを利用することで希望通りに職場復帰でき、けして悪いとばかりは言えないもの。

 

また本人が納得して正しく税や保険料を納めることは、本人にも国全体にもプラスに働きます。

 

しかし、どのような影響があるのかちゃんと把握できないまま「えっ安い!」と思わせて利用を促すような周知広告のしかたは自治体・業者ともに慎むべきです。

 

さらに、当事者だけでなく職場など周囲の人も

「保育園入れないの?ならベビーシッター制度があるじゃない、使って早く復帰したら?」

と税金などの影響を知らずに安易に勧めてしまわないよう、正しい知識を持っておきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考/東京都福祉保健局「ベビーシッター利用支援事業(令和2年4月以降に利用される方へ)」

東京都 令和2年度ベビーシッター利用支援事業(ベビーシッター事業者連携型)利用約款

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