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無痛分娩・自然分娩・和痛分娩の違い、10の比較

出産

2019.11.25

2020.07.12

私事ですが、筆者の友人が来年初めての出産を迎えます。

 

先日、お産について話していると、

「私は無痛分娩にする予定なのだけど、自然分娩とどう違うのか…ネットの情報はどっちかの意見に偏っていることも多くて、分かりやすく比較した記事が少ないと思う」

とのこと。

 

そこで今回は、厚生労働省のデータや医療機関・出産経験者へのアンケートに基づき、無痛分娩と自然分娩はどこがどう違うのかを客観的に比較してみました。

無痛分娩・自然分娩・和痛分娩の違いとは


実は、自然分娩と無痛分娩、そして痛みを和らげるという意味合いの「和痛分娩」には、医学的に厳密な定義や線引きがあるわけではないそうです。

 

しかし一般的には次のような違いがあるとされています。

 

無痛分娩

麻酔を使って、陣痛や分娩時の痛みを和らげる出産方法です。

 

心臓や肺の病気や高血圧の妊婦さん、痛みへの恐怖が強い妊婦さん、前回のお産で苦しんだ妊婦さんなどに、痛みで呼吸ができなくなる・血圧上昇・失神などのリスクを取り除いて母子の安全をはかる目的で行われます。

 

日本では、下半身のみの局所麻酔「硬膜外鎮痛法(こうまくがいちんつうほう)」が主流。

 

医療機関や産院ごとに痛みのコントロール度合いは異なり、麻酔の量によって「痛みをほぼゼロに」「生理痛程度の痛みに」というレベルから「そこそこは痛みを感じる状態」まで色々です。

 

和痛分娩

何をもって「和痛分娩」と言うのかは、医療機関や産院ごとに違いがあり、無痛分娩と同じ処置で麻酔の量が少ないだけという場合もあれば、お産の途中であまりにも痛みが強ければ鎮痛薬を注射するという産院もあります。

 

また、呼吸法によって痛みを和らげる方法や、「笑気(しょうき)ガス」と呼ばれる麻酔用ガスを吸い込む方法などもあるため、あらかじめその産院がどのような方法を「和痛分娩」として採用しているのか確認が必要です。

 

自然分娩

「自然分娩」は、計画的な帝王切開や硬膜外麻酔などの処置を行わない経腟分娩をさしますが、あくまでもお産に異常がなければの話で、状況に応じて陣痛促進剤の投与・吸引などの医療行為はもちろん実施されます。

 

無痛分娩と自然分娩、10のポイントを比較


それでは、お産に関するいろいろなポイントごとに、無痛分娩と自然分娩を比較していきましょう。

 

1.無痛分娩と自然分娩の【費用】を比較

無痛分娩では妊婦さんの腰のあたりに針を入れて出産まで麻酔をコントロールするため、麻酔の専門知識があるスタッフが長時間に渡って管理することになり、設備や人件費・麻酔薬などの費用がかかります。

 

持病等で医師から指示された場合をのぞいて、無痛分娩は健康保険が適用されません。

 

自然分娩と比べ、安くても3万円、平均で7万円~10万円程度の自己負担が上乗せされることが多いでしょう。

 

2.無痛分娩と自然分娩【できる場所】を比較

無痛分娩に対応している施設(病院・産院など)は、厚生労働省のHPにまとめられています。

 

ここに全対応施設が掲載されているわけではありませんが、都道府県ごとの件数を見ると、地方では都市部よりも掲載数が少なく、無痛分娩を希望していても自宅や里帰り出産先の実家付近に対応施設がない可能性もあります。

 

3.無痛分娩と自然分娩【出産日】について比較

無痛分娩の普及している欧米では、ほとんどの産院に麻酔管理のできるスタッフが常駐しており、陣痛が起こってから産院に行っても問題なく麻酔をスタートさせることができます。

 

しかし日本では、特に個人病院では医師やスタッフを確保した上であらかじめ日を決めて計画的に出産する産院も多くあります。

 

これについては、「早生まれを避けたい」「夫の休みが取れる週末に」など、希望がかなって良かったという人もいれば、「まだ赤ちゃんも母体も準備ができていないのに、医師が学会で出張だからという理由で薬を使って出産を早めるのはどうなのか」と疑問を持つ人もいます。

 

4.無痛分娩と自然分娩【痛み】について比較

自然分娩の陣痛が痛いことは間違いありませんが「ケガや病気の痛みとは種類が違い、乗り切れた」という人ももちろんたくさんいます。

 

しかし「1人目の出産が辛すぎて、2人目を躊躇してしまう」というほど苦しんだ人や、意識を失いかけて赤ちゃんの心拍数が下がったという人もいて、こればかりは本当に個人差としか言えません。

 

無痛分娩では、産院の方針により「痛みがゼロに近い」から「自然分娩の3分の1程度」と度合いは異なりますが、ほとんどの場合、落ち着いてお産に臨める程度まで痛みをコントロールできます。

 

なお、産後の子宮の収縮に伴う「後陣痛」は、自然分娩だけでなく無痛分娩でも帝王切開でも起こりますが、一般的に自然分娩ではもっと激しい陣痛を経験した後なので「耐えられる」と感じる人が多いようです。

 

後陣痛向けの麻酔や痛み止めについては、母乳への影響などを考えて、処方の有無は産院により異なります。

 

無痛分娩や帝王切開では後陣痛の時点で初めて麻酔なしの痛みを体感する人も多いため、より強く痛みを感じるのではないかと考えられます。

 

5.無痛分娩と自然分娩【かかる時間】について比較

お産にかかる時間は人それぞれですが、厚生労働省が公開している『無痛分娩を考える妊婦さんとご家族の皆様へ』というパンフレットには、デメリットとして「赤ちゃんが産まれるまでの時間が長くなる」と書かれています。

 

分娩が長引けばそれだけトラブルを警戒しなければならず、長時間の分娩で子宮の収縮が弱くなると帝王切開への切り替えや産後の出血のリスクが高まります。

 

なぜ分娩時間が長引くのかはまだ分かっていませんが、自然分娩の場合は赤ちゃんが「準備OK」というホルモンを分泌することで陣痛が始まりますが、無痛分娩では薬で陣痛を誘発・促進するため、自然分娩と比べてお産が進みにくいという理由も考えられます。

 

6.無痛分娩と自然分娩【吸引・鉗子分娩】について比較

同じく厚生労働省のパンフレットには「吸引や鉗子などの器械を使う頻度が高くなります」ともあります。

 

「吸引分娩」は、赤ちゃんの頭にゴムのカップ状の器具を当てて引き出す方法。

 

「鉗子分娩」は金属の器具で赤ちゃんの頭をはさんで引き出す方法です。

 

まれにこの処置が原因で赤ちゃんの頭や網膜に傷がついたり、頭部が変形(多くは元に戻ります)することがあります。

 

分娩が長引いて赤ちゃんやママの体力が落ちてきている時や、うまくいきむことができずに赤ちゃんが出てこられない時に「器具を使わなければ危険」と判断されれば、自然分娩でも同じように行われます。

 

無痛分娩でこの割合が高くなるのは、妊婦さんが麻酔の影響で陣痛の波やいきむ感覚をうまくつかめなかったり、足に力を込めることができなかったりして赤ちゃんを押し出せないことが理由の1つではないかと考えられています。

 

7.無痛分娩と自然分娩【リスク】について比較

厚生労働省が上記のような無痛分娩について周知するパンフレットを作成したり、各施設に実績や体制の情報公開を呼びかけたりしたのは、麻酔を用いた無痛分娩で妊婦さんが死亡する事故が続いたことがきっかけでした。

 

無痛分娩の麻酔で起こる事故は、おもに「麻酔の効き過ぎ(高位脊髄くも膜下麻酔)」と「麻酔薬の中毒(局所麻酔薬中毒)」の二種類で、頻度は非常に少ないものの、麻酔用のチューブが不適切な位置に入ってしまうことで起こり、完全に防ぐことは難しいと言われています。

 

ただ、2010年から2016年までの間に無痛分娩で亡くなった方は14人とされていますが、そのうち麻酔が直接関係するのは1例だけというデータもあります。

 

このデータに関しては「麻酔事故で植物状態になって一定期間が経過したのちに亡くなった方が含まれていない」などの問題もありますが、無痛分娩でのリスクだけが突出して高いとは言い切れないことを示しています。

 

医療が発達した現代では忘れてしまいがちですが、昔からお産は命がけで、出産で命を落とす妊婦さんも赤ちゃんも少なくはありませんでした。

 

どのようなお産を選ぶにせよ、事前に様々なリスクを知っておくことはすべての人にとって大切です。

 

8.無痛分娩と自然分娩【立ち合い出産】について比較

パパや上の子の立ち合い出産を希望する場合は、病院の方針を最初に確認しなければなりません。

 

  • 立ち合い出産そのものが禁止
  • 自然分娩のみOK
  • 無痛分娩でもOK
  • 配偶者のみOK
  • 子どももOK

 

など色々なパターンがあります。

 

無痛分娩では麻酔用の管やコード・モニターなどの装置が自然分娩よりも増えるので、事故防止のために立ち合い出産を禁止している産院も多いようです。

 

ただ、自然分娩で立ち合い出産を経験したあるママからは、「あまりの痛みにパニックになり、人生で初めて夫に対して暴言を吐いてしまいました…無痛ならもう少しゆとりがあったかも」(Mさん・29歳・1歳児のママ)という声も。

 

9.無痛分娩と自然分娩【産後の回復】について比較

自然分娩では「24時間以上陣痛が続いて痛みで眠ることもできなかった」「疲れと筋肉痛で産後ボロボロでした」という体験談も耳にします。

 

昔から「産後3週間は床上げするな」と言われるように、本来はそこでしっかりと休養を取るべきなのですが、現代社会では、実家が離れている・夫が長期の休みを取れない・上の子もいる…といった場合は、産後の回復は少しでも順調な方が助かりますね。

 

欧米で産後の入院期間が1~2日と短いのは、文化や費用の面だけではなく、無痛分娩で体へのダメージが少ないことも理由の1つといわれています。

 

10.無痛分娩と自然分娩【周囲の反応】について比較

経過が順調な妊婦さんが自然分娩を選ぶのに対して異論を唱える人はいないと思いますが、「痛みが怖い、痛みに弱い」「リラックスして出産したい」「体力を温存して産後に備えたい」という理由で妊婦さんが無痛分娩を希望すると、周囲から反対されたり批判されたりすることがあります。

 

よく言われるのが、「お腹を痛めてこそ一人前の母親」「痛みから逃げるのは甘え」などの声。

 

しかし、例えばフランスでは無痛分娩を選ぶ人が80%を超えるというデータもあります。

 

だからといってフランスの女性たちが子どもを愛せず母親の自覚がないのかというと、全くそんなことはないですよね。

 

また、「無痛分娩は危険」「麻酔で後遺症が残るかもしれない」という心配から反対されるケースもあります。

 

この場合も、まずは夫婦で知識をしっかりと持ち、医療機関の実績や万が一の時のフォロー体制などをよく確認して周囲に説明することで安心してもらえる可能性は高まります。

 

いずれの場合も、お産をする本人である妊婦さんの希望や気持ちを尊重することが何より大事です。

 

特に夫は周囲の声を鵜呑みにして「お腹を痛めてこそ子どもに愛情を持てるんだ」などと妻を追い詰めるようなことはせず、しっかりと話を聞いて、周囲との架け橋になるようつとめてあげて下さい。

 

また、出産を経験した女性同士でも、お産の経過や陣痛の辛さは人それぞれ。自分が大変だったから、逆に乗り切れたからと言って、他の誰かの選択を否定するような発言は避けたいですね。

 

自然分娩・無痛分娩、実際に経験した人の声


上記のような様々な違いをふまえ、最後に、実際に出産を経験したママに「もう1度出産するとして、医療面や金額などに関わらず、自由に方法を選べるとしたらどのような出産がいいですか?」と質問してみました。

 

すると回答は次のように。

 

  • 無痛分娩がいい…50%
  • 自然分娩がいい…40%
  • その他…10%

 

ほとんどの人が無痛分娩を選ぶのかと思いきや、意外と自然分娩を希望する人が多い結果となりました。

 

無痛分娩を希望する人の理由としては、

 

「出産時、3700グラムのビッグベビーで頭も大きく、痛い痛いと叫びまくりながら出産し、後から産院内で噂になったと聞いて…。めちゃめちゃ恥ずかしかったし、もうあんな痛い思いはしたくないです」(Kさん・31歳・3歳時と1歳児のママ)

 

「微弱陣痛が続いて体力的にも精神的にも弱ってしまったところに陣痛促進剤を打たれ、想像を絶する辛さに帝王切開を懇願するほどでした。次産むなら無痛分娩じゃないと産まない!と夫に言い放ったほどです…」(Gさん・30歳・2歳児のママ)

 

など、前回のお産が大変だったことから「次は無痛で…!」と思う人が多いよう。

 

いっぽう、自然分娩を希望する人からは、

 

「妻に聞いてみましたが、次もあまり薬品などを使わず自然な形で産みたいと言っています」(Aさん・35歳・5歳児と2歳児のパパ)

 

「2回とも帝王切開だったので、もう他の手段は無理ですが、自然な出産を一度経験してみたい気持ちはあります」(Hさん・34歳・6歳児と4歳児のママ)

 

「今回は自然分娩でした。もちろん大変だったけど、よく言われる失神するような痛みではなく充実感があったので、次があればまた同じがいいです」(Sさん・29歳・0歳児のママ)

 

無痛分娩・自然分娩・和痛分娩の違いまとめ


自然分娩・無痛分娩(和痛分娩)・帝王切開…出産は、どの方法にもメリットとデメリットがあり、「百害あって一利なし」という出産方法はありません。

 

多胎(双子や三つ子)などでやむを得ず帝王切開になることもあります。

 

いずれにしても、お産でもっとも大切なのは母子ともに健康で無事に赤ちゃんが生まれてくれること。

 

しっかりと情報収集し、夫婦で意見を共有して、より安心できる方法だと思う方法を選べばそれがベストなのではないでしょうか。

 

文/高谷みえこ

参照/厚生労働省『無痛分娩を考える妊婦さんとご家族の皆様へ』

JALA無痛分娩関係学会・団体連絡協議会「無痛分娩とは」

一般社団法人 日本産科麻酔学会「無痛分娩 Q&A」

 

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