『アンジュール』 ガブリエル バンサン


作者のガブリエル・バンサンは、ベルギー生まれの絵本作家。この絵本は小泉今日子さんが新聞で愛読書として紹介したことでも話題になりました。

 

『アンジュール』には文字がなく、カラフルな色も塗られていません。 飼い主に捨てられてしまった犬が、必死で遠ざかっていく車を追いかけ、車が見えなくなった時の絶望感、孤独、寂しさが、白い背景に鉛筆のデッサン画だけで描かれています。

 

それなのに、捨てられてしまった犬の表情からはさまざまな感情を感じることができ、読んだ人からは 「犬の感情や情景がひしひしと伝わり、何度読んでも心が苦しくなる」 との声も多数寄せられています。

 

最後には希望も見えるストーリーに、犬好きな人はもちろん、そうでない人もきっと胸を打たれる作品のはず。 あとがきにストーリーの解説がついていますが、まずは親子で「どう思っているのかな?」と話しながら読んでみるのもいいかもしれませんね。

 

出典:『アンジュール―ある犬の物語』 ガブリエル バンサン(著) ブックローン出版 1986年初版

まとめ


今回紹介した絵本はどれも、絵本でよく見かける鮮やかではっきりとした色遣いではなく、落ちついてとても深い絵柄のものばかりなので、小さいお子さんは「こわい」と感じたり、興味を持たないかもしれません。 しかし、小さい時にはピンと来なくても、絵本の世界観が心のどこかに残っていて子どもの世界を広げてくれたり、感性を豊かにしてくれたりすることもあります。 秋の夜長、たまにはゆっくりと、ママ自身のために絵本の世界を味わってみて下さいね。

 

文/高谷みえこ