
共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
暖房機器や環境に優しい給湯機「エコキュート」などを製造・販売する株式会社コロナでは、子育て・介護世代を中心に9パターンの短時間勤務制度(時短制度)が整備されています。
さらに昨年からは女性活躍プロジェクトも発足し、女性がイキイキと活躍するための環境づくりを積極的に進めています。それらの取り組みについて、総務部人事課の渡辺洋平さんと伊丹貴子さんにお聞きしました。

就学前なら途中変更もOK!フレキシブルな時短制度
── 時短制度が9パターンから選べるそうですね。詳しく教えてください。
渡辺さん(株式会社コロナ):
まず勤務時間が5時間、6時間、7時間と3パターンあって、それぞれ始業時間を3パターンから選択できます。例えば6時間勤務の場合、始業時間は8時半、9時、9時半と3パターンから選べる制度になっています。
育児や介護の当事者が仕事と家庭を両立するための制度として2014年に始まりました。育児の場合は、未就学児の子育て中の社員を対象に、途中で勤務時間と始業時間を変更することも可能です。
── もともと、どんな理由で始まったのでしょうか。
渡辺さん(株式会社コロナ):
社会でワークライフバランスを重視する傾向が高くなるなか、企業として仕事と育児、また介護との両立が無理なくできるための取り組みが求められています。当社では従業員により健康的に働いてもらうための環境づくりとして、以前から社員が使いやすい制度設計を進めてきました。
時短制度は、待機児童の増加や高齢化が社会問題になっていた頃に制度充実の一環として始めました。もともとは「1時間短縮」や「2時間短縮」という形だったのですが、当事者である社員の声や職場の声を反映して今の時短制度になりました。

── 改良を重ねて今の時短制度が作られたのですね。制度を実際に始める際、何か課題はありましたか?
渡辺さん(株式会社コロナ):
勤務時間がバラバラだと職場が混乱するケースが出てきて「社員のニーズを満たしながらどう業務をスムーズに運営するか」という課題が最初に出てきました。製品の製造現場や各職場での打ち合わせの設定等、考えなければいけないことが多かったです。
それぞれの課題を分析して、就業パターンをある程度決めつつ、社員が働きやすいと思えるような制度に改良してきました。
スタート後は、できるだけ早く社内に浸透するように社内報に掲載するなどいろいろと工夫しましたね。該当する社員一人ひとりに制度の説明をしたりもしました。その甲斐あってかすぐに利用され始め、社内にもスムーズに浸透していったと思います。
── 導入後はどんな効果を感じていますか?
渡辺さん(株式会社コロナ):
育児による離職は防止できていると感じています。女性社員の育休取得率は100%で、復職後も働き続けてくれているのは、時短制度の効果もあるのではないかと思います。ただ、現在は男性社員の利用者が少ないので、今後の課題だと感じています。

復職後、迷わずに6時間勤務を選択
── 時短制度を活用されている女性社員のお二人にお聞きします。まず、浮田さん(仮名)は、どんなふうに活用されていますか?
浮田さん(株式会社コロナ):
私は5年前に出産し4年前に復職したのですが、迷わず制度を活用しました。今は午前9時~午後4時10分までの6時間勤務です。
通勤時間が往復で約2時間かかることもあり、復帰前は育児と仕事の両立に難しさを感じていたんです。今はこの制度を利用することで、育児と仕事の両立ができる部分が大きいと思っています。心の余裕に繋がるというのでしょうか。
帰宅後、子どもと触れ合う時間や家事の時間も持てるので、自分も家族もギスギスしないでいられます。来春からは子どもが小学生になりフルタイムに戻るので、勤務時間が増えるぶん、今関わっている仕事の内容をしっかり深めていきたいと思っています。
上司が「最短の5時間勤務でもいいよ」と言ってくれた
── 田所さん(仮名)のお話もぜひ聞かせてください。
田所さん(株式会社コロナ):
私は3年前に出産し、復職して1年半になります。当初から午前9時~午後3時までの5時間勤務で働いています。
私が時短制度を利用し始めたとき、制度を利用中の社員自体はたくさんいたのですが、復帰した職場にはたまたま利用者がいなかったんです。なので、「時短制度を利用したいけれど、チームに迷惑をかけないためにはどのパターンにすればいいのかな」と迷い、負い目のようなものを感じていました。
そんなとき、上司が「最短の5時間勤務からでもいいよ」と声をかけてくれたので、とても気持ちがラクになりました。
── 選択できる時短制度を使ってよかったと思うことはありますか?
田所さん(株式会社コロナ):
子どもの目線を大切にした生活が送れていることです。子どもの成長に合わせて勤務時間や始業・終業時間を調整できることで、時間的にも精神的にも余裕が生まれていると思います。仕事では、正直「もう少し仕事がしたい」ともどかしく思うこともありますが、フルタイムに戻ったときにより仕事に貢献できればうれしいです。
「時短制度=出張できない」という思い込みをなくしたい
渡辺さん(株式会社コロナ):
時短制度は、勤務時間や始業・終業時間が選択できることもあって積極的に活用されているのですが、一方で、組織の文化について長年変化を起こせなかったという課題も感じています。
上司も女性社員も、無意識のうちに「時短制度を使っているから出張はできない」「育児中は大変だろうから忙しい仕事は無理」という思い込みを知らず知らずのうちにもってしまっているんです。
伊丹さん(株式会社コロナ):
以前から女性が活躍するための取り組みは推進してきたのですが、どうしても根付いているとはいえない状態が続いていました。
その課題を解決していくために、昨年、部署を超えた「女性活躍プロジェクト」を立ち上げました。各部署の女性社員が参画して、各職場の現状や働き方を可視化しながら、会社の課題解決につなげるように動いています。

── 現場の声をもとに会社全体の根本的な課題を浮き彫りにして、解決していくんですね。
伊丹さん(株式会社コロナ):
昨年の立ち上げから1年間は、女性活躍推進がなかなか進まない原因についてメンバーで議論し合い、新しい取り組みについても検討を進めました。メンバーが中心になって、各職場の女性社員にも聞き取りをし、上司の意識や女性自身の意識など課題を絞り込みました。
今後は、意識面への働きかけをキーワードに取り組みを進めていく予定です。ちょうど数週間前になるのですが(取材は2021年10月上旬)、すべての管理職を対象に「アンコンシャス・バイアス」をメインテーマにした講演会を開催しました。
「育児中の社員にも挑戦的な仕事を」
── どういった変化が見られましたか?
伊丹さん(株式会社コロナ):
講演会を開催した後のアンケートでは、「意識が大きく変わった」と書いてくれた人がいました。また、「時短制度を利用している社員は出張に行けないという思い込みがあったけれど、これからは本人に聞いてから決めたい」「育児中の社員にも挑戦的な仕事を任せたい」など、少しずつ変化が出てきているように思います。
今後は、女性社員にも意識調査のようなアンケートを行い、女性社員がどのように感じているかをリサーチ・分析し、取り組みを進めていきたいと思っています。
── すべての女性社員の声を汲み取ることで、より組織にあった改善策が生まれそうですね。この取り組みの先にはどんな職場環境を目指しているのでしょうか。
渡辺さん(株式会社コロナ):
女性が活躍できる職場環境が整うのをきっかけに、性別など関係なく社員一人ひとりが活躍できるようになるといいなと思っています。会社の課題一つひとつに取り組みながら、社員がみんなイキイキと自分の能力を生かして活躍できる『躍動的能力発揮風土』に育てていきたいです。
…
長年、女性が活躍するための職場環境づくりにじっくり取り組み、社員の声に耳を傾けながら制度を充実化させてきた株式会社コロナ。「育児中の女性は大変だから」といった無意識の思い込みをなくすのは容易ではないものですが、全社を挙げてプロジェクト化し、向き合う株式会社コロナが今後、どんなふうに理想の環境を形にするのか楽しみです。
【会社概要】
社名: 株式会社コロナ
創業年月:1937年4月
設立年月:1950年7月
業種: 総合電機(電気・電子機器)/金属製品/機械等
事業内容: 暖房機器、空調・家電機器、住宅設備機器の製造・販売
取材・文/高梨真紀 画像提供/株式会社コロナ